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コロナ蔓延について年代別死亡者数から各国のリスクを比較してみる

コロナウイルスが世界中で蔓延してから二年目になりましたが、今まで各国の死者数、あるいは100万人あたりの死者数、または感染者数から割り出した致死率などといった指標は良く登場するのですが、老人の致死率が高いこのウイルスでは、高齢化した国と、平均寿命の短い国などが同じ土俵で語られてしまう点。そして感染者数も国によって検査の甘い国と検査が厳しい国があり、感染者を分母とした致死率の算出方法も一概に比較対象するべきか否か、現実的なリスクが見えてこないと常々感じておりました。ですので、今回は各国の人口動態、そしてコロナによる年代別死者数などから、現実的な各国のリスクを考えていきたいと思います。

まずWikipediaの「COVID-19 pandemic by country and territory」より各国を参考にし、年代別の死者が記載されている国をピックアップし、年齢別に並べたのが以下の図です。(2021年5月はじめくらいのデータをピックアップしています)

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この数字を見ると、例えば30代とか40代の働き盛りの人々に関しては、合計死者数に比して、チリ、フィリピンが非常に多いことがわかります。例えば7万人が死亡しているドイツでは30代の死者数は130名程度ですが、チリは600名、フィリピンに至っては900名と非常に多い状況です。人口比で考えた場合、ドイツの人口の4分の1のチリで5倍弱の30代の人々が亡くなっているというのは非常に深刻な状況に思えます。

次に各世代の死者数が全体の死者数の何%を占めているかを表すと以下のような表になります。

各国の年代別死者数の割合

このように見ると、所謂欧州、日本、韓国など高齢化社会の国では80代以上の死者数が抜きん出ており、平均寿命の短い国、若者の多い途上国で綺麗に差が出てくるのがわかります。この割合を考慮した上で、どのような計算をすることで、各国のリスク比較をするのが適切なのでしょうか。

この比較をするには各国の人口ピラミッドがどのような構成であるかが大きなファクターになるはずです。以下に各国の人口構成の表を示します。

各国の人口構成

この表を見る限り、もっとも高齢化が進んでいるのが日本、そしてイタリア、ドイツの順ということができるでしょう。上記のコロナ年代別死者の割合とは順序が若干変わりますが、ドイツ、日本、イタリア>韓国>チリ>フィリピンという大まかな順番は変わりません。フィリピンに至っては80代以上の年代の方々が全人口の0.83%と非常に少ない点は注目に値しますし、60代以上の人口に絞っても全人口の10%に満たない点、そしてこの世代のコロナの死者数では7割近くに及んでいる点を考えれば、このウイルスの死者が如何に高齢者偏重か良くわかります。

さて、それでは各国の年代構成を加味した上で、それぞれの100万人あたりのコロナ死者数(年代の死者数/年代の人口*100万)を算出してみましょう。

ドイツ、日本、イタリア、韓国、チリ… (1)

このように年代別の死亡率を計算すると、各国のリスクが非常に顕著に現れてきます。例えば単純に年齢調整なしの100万人あたりの死者数では、イタリア、チリ、ドイツ、フィリピン、日本、韓国という順番なのですが、各年代別に見た時に、全く違った状況が見えてきます。

まず、一番リスクの高い国はどう見てもチリでしょう。全年齢において死亡率が高く、60代ではイタリアの2倍、50代で3倍、40代では4倍の死亡率となっております。

次にイタリアとフィリピンですが、60代以上ではイタリアの方が高い結果ですが、50代ではほぼ差がなくなり、40代以下ではフィリピンのほうが死亡率が高い結果になっています。全年齢の死亡率ではフィリピンが10分の1以下にも関わらずです。

そしてドイツとフィリピンを比較すると、70代で同等、そして60代以下ではフィリピンの方が高い結果になりました。

日本と韓国に関しては、他国と比較して、非常に低い水準に留まっていますが、その中でも年齢調整をしない死亡率で見ると、韓国の成績は日本よりも3倍ほど良い印象を受けますが、年齢調整をすると、70代以上の高齢者は1.5倍程度の違いしかないことになります。ただこれは誤差の範囲かもしれませんが、若い死者は日本のほうが多い印象があります。

さて、今回の計算でわかったことについてですが、まず第一に南米におけるコロナの蔓延状況は欧州のそれに比して相当深刻なのではないかということです。ブラジルやアルゼンチン、メキシコなどの年齢別死者のデータがあればもっと詳しいこともわかりますが、入国制限などでは非常に憂慮すべきものを感じます。

またフィリピンの状況も思いの外悪いようです。インドネシアとフィリピンは東アジアの中でも感染が広まっているという認識で、それは日本と同様であるような印象が、死者数などから類推されており、ただそれでも欧州と比して人口あたりの死者数が少ないということで、ファクターXなどという論調があったのですが、このように年代別の死亡率を見る限り、欧州の感染蔓延国とさほどリスク的には変わらないように思えます。

そして何よりも、日本の現状は死者も1万人を超えて、フィリピン、インドネシア、そしてインドと同じ、蔓延国という印象を持たれているのですが、年代別のリスクを見る限り、どちらかというとフィリピンよりというよりもコロナ抑制成功国とされる韓国寄りであるように思えます。

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