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鉄道に関する技術上の基準を定める省令:10.建築限界・車両限界

「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」の勉強ノートです。
条文は下記リンクで公開されています。

またこの解釈基準が国土交通省から示されています。

略称については、
鉄道に関する技術上の基準を定める省令      → 技術基準
鉄道に関する技術上の基準を定める省令 解釈基準 → 解釈
鉄道に関する技術上の基準を定める省令 解説   → 解説
と記載します。

今回は第20条建築限界、第64条車両限界についてみていきます。


◆建築限界

▶2つの限界

鉄道は車両側に走行方向を制御する機構がなく、障害物を自力で回避できません。そのため2つの「限界」を設定しています。

・建築限界

車両走行時に車両と建築物が接触しないようにするため、軌道内の建築物が存在してはいけない範囲を定めたもの。
・車両限界
走行時の揺れやカーブでの傾きなどを考慮した上で、車両断面の限界範囲を定めたもの。

大雑把に下図のようになっています(実際はもっと細かく定められています)。一応直線における標準が「解説」で示されていますが、路線の特徴に応じて各社各路線で独自に定めていることがあります。
建築限界・車両限界の間には空間が確保されますが、これは車両の動揺や絶縁上必要な距離などを考慮して設定されます。
また車両上部には集電装置に対応する建築・車両限界(上部限界)が設定されます。その他にも、何らかの計測装置を車両に接近して設置する必要がある場合には、それに合わせて限界を設定することができます。

▶建築限界の測定方法

軌道内の工事を行った際には必ず建築限界測定を行います。メジャーで測定できるものでもないため、様々な器具が用いられます。

・軌道検測車
昔は建築限界を示す矢羽根がついた車両(おいらん車:国鉄オヤ31形客車)が用いられていました。
矢羽根が支障物に当たると車内に警報が出る仕組みです。
現在はレーザー測定できるものが使われています。

・レーザー、枠などの各種測定器
様々な路線状況に合わせた器具が発売されています。

▶建築限界支障事故

・2015年4月15日 JR東日本 山手線 神田~秋葉原駅間 電柱倒壊
国鉄時代からの基礎を使っていた電柱が営業時間中に倒れて線路を支障した事故です。
https://www.mlit.go.jp/jtsb/railway/p-pdf/RI2016-2-1-p.pdf

・2023年8月5日 JR東日本 東海道線 藤沢~大船駅間 電柱倒壊・衝突
何らかの原因で傾いていた電柱に東海道線が衝突した事故です。幸い死者は出ませんでしたが、車両前面は大破、一歩間違えれば大惨事でした。

・2023年1月11日 JR東海 東海道線 豊田町~天竜川駅間 電線垂下・接触
工事で撤去漏れとなった不要電線がパンタグラフと接触しパンタが破損した事故です。
https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000042472.pdf

・2014年4月19~21日 東京メトロ 銀座線 末広町~神田駅間 電線垂下・接触
列車無線更新工事のミスで建築限界内にケーブルが入り、車両と接触した事故です。初回の接触後の調査でさらに複数個所での建築限界支障が発見され、運転見合わせが長時間になりました。
https://www.tokyometro.jp/safety/prevention/safety_report/pdf/anzen2015_8.pdf

以上です。

参考

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