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竹久夢二伊香保記念館に行ってきた

今から20年前。中学生の時、社会の教科書パラパラ〜っと眺めてた時に竹久夢二の黒船屋の絵が飛び込んできた。恐らく大正ロマンについてチラッと説明があったのかもしれない。教科書の内容は覚えてないが、ただその黒船屋の絵を見て衝撃を受けてずーっと教科書のそのページだけを見てた。あの時私は黒船屋の絵に一目惚れしたんだと思う。なんだろうこの美しいくにゃっとした姿の女性は。誰が描いた絵なんだろう。
「竹久夢二」
その頃から竹久夢二の絵に夢中になった。関西で行われる竹久夢二の展示会には必ず行った。夢二の美人画を沢山見てきた。
ただあの黒船屋の絵は見たことがなかった。
黒船屋は群馬の山奥、伊香保温泉にある竹久夢二伊香保記念館に保管されている。更に黒船屋は一年のうち約2週間しか展示されることがない。
大阪に住んでいた私はまず群馬に行くルートすらわからなかった。群馬に行くには東京に行かなければならない。更にその東京から2〜3時間かかるとのこと。私には黒船屋を見ることはなかなかハードで、他にもアイドルの追っかけをしてたこともあり、時間もお金も黒船屋にかけることが難しかった。

そして黒船屋に出会ってから20年経ち、私は結婚を境に東京に住んでいた。東京に住んでちょうど一年、今なら群馬に行くことも大阪に住んでる頃に比べたらハードさは半分に減った。

私は黒船屋を見に行こうと思った。1人で。
バスの予約をとり伊香保温泉に行く段取りをつけた。たまたまだが、私が行くと決めた9/16は竹久夢二の誕生日だった。

バスに2時間揺られ伊香保温泉 見晴下駅に着いた。ここで降りるのは私だけだった。バス停から歩いて3分程度で竹久夢二伊香保記念館に着いた。レトロな自然に囲まれた綺麗な美術館だ。

チケットを購入しとりあえず館内の他の竹久夢二の作品を見ているけどなんだか落ち着かない。ここに黒船屋があって、やっとこの目で本物を見れると思うと目の前の作品になかなか集中できなかった。一通り館内を見た後いよいよ黒船屋が限定公開されてる部屋へ。一年にたった2週間、黒船屋を展示する為だけに作られた部屋に入った。
黒船屋の為に作られた部屋は、部屋に入った瞬間絵が置いてるわけではなく部屋を少し曲がった奥に飾られていた。館内のスタッフさんが誘導してくれたが、緊張してなかなか絵を見ることができなかった。スタッフさんに「すみません、ずっと憧れてる絵なので心の準備がまだできなくて」と伝えたら快く「どうぞゆっくりしていって下さい。」と笑顔で言ってくれた。そのおかげである程度気持ちが落ち着いてきたので部屋を曲がってついに黒船屋を見た。思った以上に仕切りから離れて黒船屋は飾られていた。けど黒船屋はすごい存在感で一気に私の目に飛び込んできた。絵の中の女性から目が離せなくなった。少し微笑んでる口元と流し目でどこから見てもこちらを見つめているように見える。黒猫を抱く手はすごくしなやかだけど優しく大切にしっかりと猫を抱き抱えてる。遠くから見てるのに髪の柔らかさがわかるような質感。一つ一つのパーツはめちゃくちゃなのにバランスが整って見える夢二の美人絵画。ようやく会えたことと絵自体の素晴らしさに感動してもう端っこで1人しくしく泣いてしまった。端っこで泣いたかと思うと急に歩き出しずーーーっと絵の前にいたりと、正直めちゃくちゃ異様だったと思う。でも例えていうなら一目惚れしてた相手と初めて目が合ったような感じだと思う。ずっと好きでしたと伝えれた感じ。うーん、難しい。けど私が思ってた通り、それ以上に素敵な作品だった。記念館の見解では、この絵のモデルは夢二が人生で一番愛した女性、彦乃ではないかと。彦乃に抱かれてる猫は夢二ではないかと。なるほど。彦乃と死別した後に描かれた絵だからか、思い入れが強いのかもしれない。
再入場可能とスタッフの方に確認を取ったので、記念館を出て温泉街を観光した後にもう一度記念館に戻った。バスで東京に帰る前に最後に黒船屋を見て帰ろうと思った。再入場したら沢山のスタッフの方が「おかえりなさい」と言ってくれた。たぶんずっと黒船屋を見てしくしく泣いてから覚えられてしまったのかもしれない。次は直行で黒船屋を見に行った。これでこの絵を見れるのは早くて来年。来年、来れたらいいけど。来年のことはわからないなぁとぼんやり思った。1人のスタッフの方が話しかけてくれてそのまま学芸員の方とお話しすることができた。細かい話も沢山聞けて良かった。こんな貴重な作品を保管するのは大変だろうけど頑張ってほしい。
私にとってはモナリザよりも価値のある作品だった。モナリザ見たことないけど。けどモナリザ見たってこんなに心動かされることはないだろうし、私にとっては世界で一番好きな絵。私の人生の一部を作り上げてくれた絵。
スタッフの方も本当優しくて記念館を出る時も声を掛けてくれた。とても良かった感動しました、また来ますと伝えた。
また来れるように毎日頑張ろう。
人間は忘れっぽいから。こんなに感動してるのに、また目の前の欲に囚われて忘れてしまうから。
だからnoteに書いて、この貴重な経験を忘れないようにしておこうと思った。
あー見れて良かったな。生きてて良かったな。
群馬は遠いな。旅って感じだな。途中で寄った伊香保温泉の階段の上の神社の休憩所でぼーっとしてたら屋根から大量の毛虫が落ちてきたな。怖かったな。うどん屋で二時間も待ってあと一組で入れるってところで、よくわからん家族に順番抜かされたな。あの時の怒りは忘れない。日帰り温泉で私が入ってる温泉に誰も入ってこなくて不安になったな。そして今バスだけどすげぇ渋滞してるな。いつ帰れるんだこれ。
色々含めて貴重な旅立ったな。
私は竹久夢二の絵が大好きだ。いっぱい作品見てきた割に知識も何もないけど、黒船屋を見た中学生のあの頃からその気持ちは変わってない。こんな気持ちにさせてくれてありがとう中学生の私。

黒船屋、ずっと好きです。これからもずっと。
また会えるのを楽しみにしてます。それまで、私も黒船屋も色褪せずに日々を過ごしていきましょう。


#竹久夢二 #伊香保温泉 #美術館


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