私だけズッコケ三人組だった

前回、オンライン飲み会で積ん読を堂々と紹介した話を書いた。「10年読んでない」と堂々と言うのは結構気持ちよく、他人が「これが買ったものの読んでない本です」と紹介する様子も楽しかったのだが、その後「この場にいるメンバーそれぞれに勧めたい本」というお題が出されると、参加者は無言で画面の前から消え、各自本棚へ向かった。

私が友人に紹介したのは下記の通り。

●ノンフィクション好き、英国好きのAさんに
 アガサ・クリスティー「春にして君を離れ」
 皆川博子「開かせていただき光栄です」

●海外文学・ミステリ好き、海外料理番組好きのBさんに
 ピョートル・ワイリ/アレクサンドル・ゲニス「亡命ロシア料理」
 ジーン・ウルフ「書架の探偵」

●海外志向のCさんに
 ラッタウット・ラープチャルーンサップ「観光」
 金子光晴「ねむれ巴里」

改めて見て、良い選書だと思う。お酒を飲んでいた割には、言われてパッと出してきた割には良い選書。
ノンフィクション好きにフィクションしか勧めていないのは、敢えてそうした訳ではなく、単純に私がフィクションばかり読んでいるから。ノンフィクションの引き出しがあまりない。

選書は悪くないと思うが、いかんせん私のプレゼン能力が低く、面白いとか情景描写がいいとかぼんやりしたことしか言えなかった。AさんBさんCさんがAmazonでレビュー読んだりしてくれていることを願う。

でもこうして誰かのことを考えながら本を選ぶのは楽しかったし、誰かが自分のことを考えて選んでくれた本の話を聞くのはとても幸せだった。絶対またやりたい。


Aさんが私に勧めてくれた本を今日読んだ。

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那須正幹「ズッコケ山賊修業中」

「土ぐも様」という神様を崇める集落に迷い込み(後に故意に誘導されたと知る)、逃げられなくなったズッコケ三人組と大学生のお兄さん。外界と完全に隔離された集落で信仰と労働を強いられる。

私は妖怪が好きなので、崇められる存在が「土蜘蛛」であること(実際に人々は横穴をいくつも掘って生活しているし、国を乗っ取ろうとしているのもまた私が知る土蜘蛛伝説と重なる)にもワクワクしたのだが、捕らわれた四人がそこに住む人々と交流するにつれ、生活に慣れていく様子や、土蜘蛛信仰を理解し始める心の変化にも引き込まれた。

誘拐されて捕らわれているはずなのに、人は慣れるし、情も湧く。理解が生まれる。ここでの生活も悪くないかも知れない、ていうか以前の生活だって大して良い人生を送っていた訳ではないし。そんな感情が生まれることがとても当たり前に感じられて、怖かった。

Aさんは他メンバーに大人で渋い本を勧めていたので、なぜ私だけズッコケ…?って正直一瞬思ったが、読んでみて、私の好みを知ってくれているのだと嬉しかったし、思いがけず楽しい読書だった。Aさんありがとうございます。

これは私だけかも知れないけど、勧めてもらった本を読んでいると時々その人を思い出して、あの人はここでどんな風に思ったかな、とか考えたりする。

「本を紹介し合う」という交流、とても良いなと思った話でした。

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