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【詩と心と声】シリーズ集

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女優・望木心の心の中を現代詩で綴っております。Twitter、Instagramで公開した内容をアップしてゆきます。新しい詩も掲載予定。心が寄り掛かりたい時、癒されたい時、優しく…
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#自由詩

白昼の月と太陽

頬に差さる 白昼の陽に焼かれて 負けてしまいそうな午後3時 誰もいない森へ 静かな場所へ 小さな緑の手のひらが無数に広がり 遠いまぶしい青空を隠す さっきまで光に憎さを感じていたのに 私は途端に寂しくなって そこに美しさを見つけた 昨日 散ってゆく葉桜の枝の隙間から 月が見えていたのを思い出す 白昼の月は 姿を変えて 私に語りかける 「そばにいるよ」

つめあと

手を繋いだ あたたかくて 柔らかくて 守られているような 強くなったような そんな気がした 私の長くて赤い爪が 彼の手を引っ掻いた 彼の手にキズがついた 紅い線が伸びている 「痛い方が忘れないから 大丈夫」 そう言われてから 私たちは分かれた 赤い爪をシンナーの香りの中で 肌色に戻した コーティングを剥がしたつめは 柔らかくて弱々しい 爪切りでつめをパチパチと切る まるで拍手のように聴こえる