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【詩と心と声】シリーズ集

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女優・望木心の心の中を現代詩で綴っております。Twitter、Instagramで公開した内容をアップしてゆきます。新しい詩も掲載予定。心が寄り掛かりたい時、癒されたい時、優しく…
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#気持ち

永久

わたしの中に 私じゃない わたしを見つけ出して オパール色をした 滑らかな感触の空みたいな 世界の心を 腕に包み込んで 夜明けを見つめよう いつしか 懐かしい匂いが わたしを満たして 私じゃない わたしを はっきりと感じられるだろう その時 初めて降り注ぐ やさしさが 喉の奥を通って 心臓に永久に広がるでしょう

空に浮かぶ

空に浮かぶモノレール 好きな場所へ 連れて行ってくれる 思い出との待ち合わせ 切符を買い 大昔 父に手をひかれ 大都会の荒々しさに 酔ったのを思い出す 夕闇が恐ろしかった 段々と赤黒いそらの下に 蛍光灯の星がたくさん 落ちていた 守られた手の強い柔らかさが よみがえる 今は ただ愛おしくて 夕闇のそら

宿命

月の欠けた部分は なぜ幾重にも 光を纏う 視力が悪いのか 魔法なのか 真実なのか 月が 涙を流すなら 信じたい 彼に 言葉を授けなかった シナリオ 神様は なぜ託したのですか

今日

今日素晴らしかった事 雨雲から光が射していた事 通りすがりの人が 少女みたいだった事 自分の影が遊んでいた事 濡れた草が芳しかった事 そのまま寝転がった事 あの人が生きていた事 あの人を思い出せる事 君の涙が美しいと思った事 愛しいと感じた事 道がまだ続いているという事

着地

気が狂う程好きで 気が狂う程考えて 気が狂う程のたうち回って 悲しんで憎んで怒ってもがき 狂い尽くして ようやく単純な場所に 落ち着く ただ好きなんだと 人も仕事も夢も ありとあらゆるもの全部 人間は愚かで美しい そういう生き物 君も私も

指環

失くした指環に 願いをこめる 誰かに拾って 貰えますように 石は幾つかか 取れているけれど お前の生きてきた証 私とお前の日々 しばらく何も つけずにいるよ 願いをこめて 祈りを捧げて 失くした君に向けて

金木犀

キンモクセイが 横切る 香水が底で 眠っている 何年前だったか この記憶を歩めば 辿り着くことは しっている 沢山の香水は 消え 思い出すのは あのひとの 目尻のしわ つつみこまれ 記憶に 愛していたと つぶやく

存在理由

同じ場所 同じ映画 同じ食事 至って穏やかな日常 いつもより 鮮明なのは 君がいるから 遠くにいても 仮にどっちが 死んでしまっても 今日という事実は 不滅だから 未來で 待ち合わせの 予定を

情熱

いつもの道で 急に出逢った 情熱の塊が そこに立っていた 季節は変わったのに まだそこに存在する 季節が変わって ようやく立ち止まり 今更の 愛おしさを