見出し画像

自分の欲を肯定してハッピーになれる漫画【魔入りました!入間くん】

※この記事は86話(アニメ2-18)までの内容を含みます

『魔入りました!入間くん』 西修


あらすじ

頼み事を断れない、お人よしの少年・鈴木入間は、ひょんなことから魔界の大悪魔・サリバンの孫になってしまう!溺愛される入間は、彼が理事長を務める悪魔学校に通うことに…。人間の正体を隠しつつ、平和な学園生活を送りたいと願うも、なぜか入間はいつも注目の的。エリート悪魔にケンカを売られ、珍獣系(?)女子悪魔になつかれ、さらに厳格な生徒会長に目をつけられてしまう!

次々に起こるトラブルを入間は持ち前の優しさで乗り越えていく!

NHKアニメワールドより引用

物語の舞台は魔界です。
魔界には悪魔が住んでいて、人間は入間イルマしかいません。

悪魔が登場する漫画だけあって悪魔ならではの文化が色々ありました。たとえば位階ランク制度や悪周期あくしゅうき、魔王の存在、魔術などです。

そんな悪魔の習性は「欲望に忠実」で自分の欲が第一、快楽主義といった風に描かれています。


入間の欲

欲望は悪魔だけでなく人間にもあります。
欲は人間の本能であり、欲無くしては生きていけません。

しかし魔界に来たばかりの入間イルマにはこの「」がほとんどありませんでした。

生きるのに必死だった人間界と比べて、魔界の生活は意外にも快適なものでした。サリバンは優しくイルマを見守ってくれて、バビルスでは友人がいて、お腹いっぱいご飯も食べられる生活です。この食欲は魔界に来て初めて気づいた欲でした。食べ物の心配をせずたくさん食べられる幸せを魔界で知ったからです。本来の入間は大食いであり、食欲旺盛だったと判明します。

しかし食欲以外はほぼ無欲であり、頼み事が断れなかったりお人好しな性格が目立っていました。これは彼の生い立ちも関係しているのですが、とある出来事が入間イルマの欲を意識させるようになります。


理想と野望

きっかけは生徒会長・アメリとの会話です。

アメリと入間が放課後にお茶をしている時、将来の夢が話題になりました。アメリの野望は「生徒会長としてバビルスを憧れの学びにすること」と話す一方、入間は「みんなと楽しく過ごせればいい」と答えました。それに対してアメリはこう返しました。

理想と野望は違う
私が知りたいのは自らつかもうというお前の意志「欲」だ

2巻・12話「入間の夢」より

このとき初めて入間は「自分のしたいことが分からない」と気づきます。それは当然で今まで自分のことを考える余裕がなかったからです。クズな両親の元に生まれ、幼い頃から生き延びることだけを考えていました。学校にもあまり通えなかったので友人もいません。またお人好しな性格で「周りの人間が自分にどうして欲しいと思っているか」を重視していました。日頃から自分の気持ちより他人ばかり優先していると、いつの間にか自分自身でさえ分からなくなってしまうのです。

その後まずは位階ランクを上げることを目標にしました。入間は猛特訓の末、無事ベトに昇級し、その時の気持ちをこう語っています。

初めて知りました
自分のために頑張って成果がでるって…
こんな気持ちなんですね…!

2巻・16話「踏み出す一歩」より

強い意志で苦難や障壁を乗り越えることで得られる温かな気持ち、それが野心だとアメリは言います。入間は昇級試験のために体がボロボロになるまで練習し、強い意思が成果を結びました。


入間の変化

それ以降、入間は魔界で様々な欲が芽生えるようになりました。良い意味で欲深い人間になっていくのです。

これには悪魔が魔術を使うことも影響していると思います。
魔術の根源は””でありイメージを実現させる力が重要です。つまり成功するイメージができなければ魔術は上手く使えるようになりません。そのせいか悪魔は日頃から「自分の欲」を常に意識しています。バビルスで魔術を学ぶ入間もイメージを大切にしていました。

師団バトラ披露パーティーで学園が危機に陥った時も、入間は絶望しませんでした。「みんなを傷つけたくない」「自分たちの花火で傷つけるのも嫌」「せっかく準備した花火を見てもらえないのも嫌」と正直に自分の気持ちを吐露します。そんな入間が出した結論は「全部拾いたい」でした。宣言通り爆破からみんなを守り、花火を打ち上げることにも成功しました。

これが出来たのは昇級試験の経験から、自分の気持ちを貫く大事さを学んでいたからです。その後も自分の意志でくろむのピンチを救ったり、問題児アブノーマルクラスのために王の教室ロイヤルワンをゲットしたりと自ら行動を起こしています。

こういった入間の行動は誰かのためにすることが多いですが、ただの”お人好し”とは少し違います。以前は「頼み事が断れずに仕方なく」といったことも多かったですが、今は「自分から助けたい」意思(欲)が生まれました。

ウォルターパーク編の際には「理想を拾うことを諦めたくない。それが僕の『欲』なんです」と言い切るまでになっています(86話 僕の欲)。


人間の欲を肯定する

このように「魔入りました!入間くん」では自分の欲(意志)で成長していく過程を見ることができます。人間界では無欲だった入間イルマが、魔界で自分の欲を自覚し、行動するようになりました。

この変化は人間の欲を肯定しているように感じました。
欲そのものに悪いイメージを持つ人もいると思いますが、欲を持つのは悪いことではありません。自分の欲で成長していく入間イルマを見て、自分の意志を大切さにするとは何か分かるようでした。

入間イルマほどでなくても、日常生活で自分の欲を必要以上に抑えている人は案外多いのではないでしょうか。他人に気を遣って自分の言いたいことを押し殺したり、やりたいことを我慢したり…これを繰り返していると、次第に自分の気持ちに鈍感になってしまいます。自分を後回しにした結果、「何がしたいか分からない」に陥ってしまうのです。

入間イルマが人間界より魔界の方が生き生きとして見えるのは、入間イルマ自身の人生を生きられるようになったからです。欲が芽生え、感情も豊かになりました。初めてランクが上がったときの喜び、勉強して成績が上がった達成感、ウォルターパークを台無しにされた怒り…など多様な感情を持ち始めました。

魔界で生きていくのに欲や野望は不可欠です。
それは人間界でも同じではないでしょうか。

読んだらハッピーになれる漫画、
「魔入りました!入間くん」をぜひ読んでみてください!


この記事が参加している募集

アニメ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?