アユミ AOMの開始点・謎めいた幼馴染

❊注意❊本記事はニンジャスレイヤー本編4部のネタバレが含まれます❊注意❊







アユミ。
第4部において、主人公がニンジャスレイヤーとなった原因。1~3部のフユコ・トチノキのポジションにあたる。
が、AOM1章のクライマックスでニンジャであることが判明。4部のニンジャスレイヤー、マスラダ・カイはニンジャの仇としてニンジャを殺す、ニンジャスレイヤーとしては異例の存在ということになる。
4部の中核を担う一要素、アユミ。少ない描写から、いくつかの謎を紐解いていく。

ヘッズから見たアユミ (とその他の四部の動き)
2016/7/21 フラワーズ・フロム・フロスト投稿。初の四部エピソード
2016/8/14 スネイク・オナ・マナ・イタ投稿。マスラダが本編登場
2016/10/5 初登場。マスラダによる死亡シーンの回想
2016/10/11 ニンジャスレイヤーの名鑑に登場。「幼馴染」と明言される
2016/10/13 マスラダによる生前回想(個展準備?オリガミを燃やす話)
2016/11/8 マスラダとアユミの生い立ちが明らかになる
2016/11/8 マスラダによる生前回想(葬式。二人の再会)
2017/4/1 四部要素を含むラスト・ボーイ・スタンディングにて登場せず
2017/8/17 マスラダによる生前回想(展示。サツガイ登場)
2017/8/24 ニンジャであることが判明する

アユミにあった出来事(時系列準)
孤児院にいたが、引退する経営者にマスラダとともにひきとられる
成人し、自立する
育て親の葬式でマスラダと再会する
マスラダがオリガミを燃やすところを目撃、アートについての話を聞く
マスラダの展示に忘れ物を届けに行く
サツガイと遭遇
死亡


謎1.アユミは何歳なのか?
「成人してから二人はワモンに追い出されるように社会へ出た」とある。
そのためアユミ・マスラダ共に20歳以上は確定。
育て親の危篤が切欠で再会した際、アユミは「久しぶり」「背が伸びた」と発言。マスラダはそのあと頷いている。
20歳から、そう背が伸びるだろうか?
(他の登場人物を例に挙げると、プラス記事の身長一覧におけるスーサイドは4部までに5cm以上伸びているが、元の身長が男子高校生のころなのか20歳近い3部終盤のころなのかが不明な上、ニンジャのため年齢に必ずしも比例しない)
「同い年の二人が同時に成人し、同時に家を出た」とはないため、アユミの方が先に家を出、マスラダ20-a歳時に別れ20+b歳に再開という可能性が高いのではないだろうか。

謎2.アユミはいつニンジャになったのか?
かなり描写が少ないのだが、生前エピソードをもとに推測すると
① 葬式②ニンジャ化③個展準備④展示(死亡) の順番。
葬式の時点でアユミは「正座から立とうとし、よろめい」ている。本人も「痺れた……」と苦笑していた。
毒・ジツ・強力なカラテを受けた場合ニンジャでも四肢に痺れを感じるが、葬式の間の正座が原因でニンジャがよろめくとは考えにくい。
ここで演技する理由もとくにないため、本考察では「葬式時点ではモータル」とする。
個展準備の前にニンジャ化を持ってきたのは2点理由がある。

時間
単純に、葬式~個展準備の間は不明だが個展準備~展示の間はそう長い期間ではない。
仕事論の時点で「セバタキが個展にくる」ことが決まっており、その個展で「展示会で展示すること」が決まる。

アユミの発言
マスラダのアート論を聞いた「本当に立派だ、カイは。私なんか平凡で」と発言する。この時点では芸術家として身を立てる幼馴染への、一般人の自然な反応であるがアユミは死の間際(サツガイのスリケンを胸に受けた後)も「カイは偉い」「私には何もない」「カイにはある」と発言している。個展準備の時点すでにで、「自分は平凡で何もないが、それに対してマスラダ・カイは立派な人物」という思想を持っているのだ。


謎3.アユミがこだわる「何か」とは
「何か」に関連する会話は以下の通り。

個展準備「本当に立派だ、カイは。私なんか平凡で」「平凡かどうかは知らないけど、アユミは凄いだろ」「それに、おれは立派じゃない。少なくとも、まだ立派じゃない」
個展準備時点での評価
アユミ評:アユミは平凡である。それに対しマスラダは立派
マスラダ評:アユミは自分の主観では平凡かどうかはわからないが、凄い。マスラダはまだ若手で評価もそう高くなく、立派な芸術家ではない(今に限定すれば。将来的に大成する可能性を見ている?)。

展示(カイは偉いよ)(私には何もない)(何故)(カイにはある)(おれには何もない……今は何もない!)
展示時点での評価
アユミ評:アユミには何もない。マスラダは偉く、アユミにはないものがある。
マスラダ評:「アユミには何もない」とは思えない。が、マスラダには何もない(今に限定すれば。未来に希望を持つような状況ではないため、過去と比較してのこと?)。

その他四部描写「何故、俺が生きてる」「なぜ俺だ、なぜ俺が生きて」「なぜアユミが死んでいる」「何故生きている」「何故アユミが死んだ。何故おれが生きている」「おれが死ぬべきだったのに!」
四部本編時点での評価
マスラダ評:アユミが生き延び、マスラダが死ぬべきだった

「何か」とは「創造性」?
個展準備での発言は、アユミがマスラダの芸術論を聞いてのものである。「意味と価値を作り出す」、人間としての性質。それがニンジャとして創造性を失ったアユミには眩しく見えたのではないだろうか。
が、アユミは展示においても(ニンジャとなったマスラダに)同じ評価をしている。ニンジャ憑依による変化はひとそれぞれなので「マスラダはニンジャとなっても『何か(創造性?)』を失わないだろう」と考えたのか……少なくともアユミがマスラダを評価するのは「ニンジャではなくモータルだから」ではないようだ。

謎4.ナラク、マスラダ、アユミ。その複雑な関係
マスラダは基本的に「アユミの仇を討つ」ためだけにニンジャをスレイしている。ナラクもそのせいか、アユミの死の幻覚を見せて憎悪を煽ろうとするが、『アユミがニンジャ』であることがわかるシーンは避ける傾向にある。アユミがニンジャだと思い出しそうになったときには01介入し回想キャンセルしたことすらある。
ナラクはモータルの怨念ともいうべき存在。何故ニンジャであるアユミの仇を果たさんとするマスラダ・カイに協力するのか?

ナラク妥協説
1~3部のニンジャスレイヤー、フジキドは無慈悲に妻子を殺された死せるサラリマンである。フジキドマルノウチ抗争の原因となったソウカイヤやザイバツ、実際に妻子を殺したダークニンジャを強く憎んでいるが基本スタイルは「全てのニンジャを殺す」であり、ナラクも「全ニンジャを殺すべし」。モータルを巻き込むか否か、善良なニンジャをどうするか、どちらが手綱を持つかなどで揉めることはあるが「ニンジャ」を強く恨むという点では合致している。
一方4部のニンジャスレイヤー、マスラダは「アユミの仇を殺す」であり、その過程でニンジャを殺してはいるがあくまでも目的ではなく、手段としてのスレイである。4部2章でも「恩返しがしたいから殺す」といったスタイルであり、ニンジャ全体への恨みはない。ナラクもそんな彼には「全ニンジャを殺す!」といったスローガンは掲げず「アユミの仇を討て」と繰り返すだけだ。
マスラダが「アユミはニンジャである」ということを知っているのでニンジャ全体を恨ませることは難しい、そもそも今にも自壊しそうな有様である(ナラクがマスラダの記憶をぎこちなく核心から遠ざけて、自壊から防いでいる、とグレーハーミットは評している)。何とか関係するニンジャだけでも殺させよう、と妥協しているのだろうか。

ナラク執着説
ナラクは妥協でもマスラダの意思を尊重しているわけでもなく、「ナラク本人がサツガイを殺したがっている」のではないだろうか。

ナラクのサツガイに関する言及
① (((ムシアナ・ジツとな!これはマイニユ・ニンジャのユニーク・ジツだ。ツバメ・ニンジャ・クランのサンシタには到底縁なきジツぞ。サツガイの仕業であること間違いなし。まったくもって、何たる醜き歪みか!)))
② (((サツガイに二度)))ナラクの声が重なった。(((二度だ)))
③ (((マスラダ。サツガイのにおいだ)))
④ (((ニンジャに関係無し!いわんやサツガイをや!)))
⑤ (((サツガイの手管とは無関係也。だが、要は殺せば同じだ!仕留めよ!)))
⑥ (((これはサツガイの与えた力か?コシャクな……!)))
⑦ 「忘れるな、サツガイがこの運命を招いた!奴を滅ぼすまでオヌシのイクサは終わらぬぞ!」
⑧ マルノウチ……アユミ……あの時マスラダはアユミの……(((マスラダ!)))闇の中で彼の目はセンコ花火めいてすぼまり、燃える。頭を抱え、声なき叫びをあげる。あの時ああしていればアユミは……(((マスラダ!)))サツガイ!……サツガイ……!(((そうだ!執着せよ!)))

4部敵ニンジャの特性(サツガイによってジツを得た)上、言及しなければ話が進まないという事情もあるのだが、③④⑦などは積極的にマスラダをサツガイにぶつけようとする狙いが感じられる。
「サツガイに関する過去の確信に触れるとマスラダは自壊する」「サツガイと関係の薄いニンジャとのイクサではナラクが主導権を握りやすい」などの点からすればサツガイ関係者ではないニンジャと戦う方がナラクにメリットがあるとも思えるのだが(マスラダのやる気が起きないというデメリットはある)。
ナラクがサツガイによる殺戮(結果的にアユミだけが死に、モータル死者はゼロ)で憑依したことは単なる偶然ではないのかもしれない。


謎5.アユミとサツガイのイクサ
サツガイはニンジャにジツを与える謎存在である。その場のモータルを一掃→対象のニンジャと少しの会話→ガチャ→去るというのが一連の流れ。だが展示、アユミとサツガイのイクサは大きく異なる。アユミとマスラダ・カイの関係を示す描写もあるのでひとつづつ見ていこう。

シーン解説
・マスラダはアユミの肩越しに荒野と黒いトリイを見る
・黒いトリイが現れたのはマスラダの作品があった辺り
・黒いトリイをくぐってサツガイ登場
・アユミは気づいていない?

シーン解説
・アユミをマスラダが突き飛ばし、かばう。絵では省略しているが「乱れ八刃スリケン」が「3回」放たれている
・後のシーンを参照するならば「一歩進むごとに1スリケン」なので3歩進んだ?
・後のシーンでは1スリケン1モータル殺していたが、3回放たれた時点での死者はゼロ。画面外でモブモータルが死んでいる?
・「アユミにスリケンを投げたので、マスラダがそれを庇う」シーン。サツガイはモータルを殺してニンジャと会話するのでは?放っておけばマスラダを殺すはずだったスリケンをモータルであるマスラダが勘違いした?
・スリケンを察知しニンジャを突き飛ばすマスラダのアーティストカラテ

シーン解説
・アユミはチョップでスリケンをはじく。カラテの程度を示すシーンでもある?
・マスラダがアユミの手元を見ているので斜めから割り込むような形?
・チョップを見て覚えるマスラダ。ナラクを介するものでなく、自身の記憶からの学習。

他のイクサ描写はなく、次に描写があるのはアユミにスリケンが刺さるシーンである。

・マスラダとアユミの目が合っている?(眼差し、というキーワードがこのタイミングで出てくる)
・スリケンはマスラダを貫通、アユミに突き刺さる。
・マスラダにナラク憑依(ニンジャスレイヤー化)
・アユミは爆発四散していない(マスラダを貫通して威力が落ちた?)が致命傷
・床は血の海。致命傷によるもの?少し前から出血していた?
・まわりにはマスラダ作のオリガミが散らばっている。サツガイ出現ポイントあたり?
・アユミはスリケンをはじいていない。イクサの疲弊や怪我か?スリケンの威力が違ったのか?射線上のマスラダがなんらかの障害になった?
・スリケン射出直後。この時点ではサツガイはまだ消えていない?描写がない

シーン解説
・マスラダは手を伸ばすがアユミは掴まない
・アユミはマスラダがニンジャスレイヤーとなったことに気付いている。ナラクの名乗りなどの描写はなく、何故知ったのかは不明
・アユミはマスラダにカイシャクを願う。マスラダは拒否する
・アユミはマスラダと目を合わせない。
・アユミは「冷たく」なっていく。マスラダは「見下ろす」など棒立ちのような描写をされているが、アユミに近づいて体に触った?


最後に
アユミの「サヨナラ」や爆発四散は描写されていない(名鑑ではサツガイが殺したとあるが)。アユミはスリケンを墓標に冷たくなっていったのか?不浄の炎で焼かれたのか?それとも……


いかがだったであろうか。溌剌とした描写とは対照的に謎の多い幼馴染ヒロイン、アユミ。
死せるニンジャである彼女は、ニンジャを殺す者にどのような影響を与えていくのだろうか。
備えよう。