橋かけごっこ

とある、あわいの曜日のこと。

橋をかけよう。週に1度、あなたと待ち合わせをするために橋をかけたいの。

そうお願いされては断る理由がない。
橋を作るため、私たちはとっておきの材料を持ち寄ることを約束に今日は解散した。

次のあわいの曜日のこと。

私たちは手を泥だらけにした。土手の粘り気の強い、手ですくう。泥をはね散らかして、爪の中までかなしい色を詰め込んで。こんもりと山を作る。 私たちは同時に、誰かのお墓に似てるねって言い合った。

そう、本物の橋なんて作れない。だから私たちよりずっとずっと小さな生き物のための橋を作る。
橋かけ屋さんになるという行為が、私たちの居場所の架け橋を作るから、それで満足。

山ができたね。トンネルを掘ろうか。
水気のあるうちに、墓のような泥山の中へ私たちの宝のような利き手を。指が触れ合って、なんとなくぎゅっと墓の中で手だけ繋いでみる。
私たちの手が繋がれば、橋は完成。けど、海辺の彼女はチッチッと人差し指を振る。

チモ、私は砂浜から白い砂を持ってきたの。
白い砂をかけると固くなるんだよ、知ってた?

幼い頃、知らない子供たちから嫌という程聞かされた言葉。あなたの言葉なら、嫌いじゃないよ。

贅沢な白い砂をサラサラふりかけて、墓のような橋を補強。

ヤマンバに食べられちゃった、私のママの引き出しから出てきた指輪を私は飾った。
彼女は昨日まで可愛がってたらしい、カニの赤ちゃんの死骸を飾る。
私は、ネッシー(カッパ)からもらったしりこだまを散りばめ、彼女はてふてふをあしらうようにアサリの貝殻を広げて散りばめる。

そう、お弁当のピックが最近可愛いと思ったから、それも台所から持ってきたんだ。
てっぺんに、小さなうさぎのピックを刺した途端、橋にヒビが入ってしまい

ほろり、ほろりと崩れてしまった。呆気ない。

私が壊してしまった、私が橋を壊してしまった。
ごめんなさい、ごめんなさいと泣きじゃくる私をよそ目に彼女は握りこぶしで橋をぐちゃぐちゃにしてしまった。

貝殻も、カニも、ママの指輪も、しりこだまも。みんなみんな握りこぶしでぐちゃぐちゃにしてしまおう。私たちは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、誰も通ることの無い橋を解体した。

そこに残ったのは、ちょっとだけ彩りのある欠片を集めたちっぽけな砂場だった。

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