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[001] みさきのはじまり

「みさき、海を見てごらん。すべての生命はここから始まるんだよ」と海斗はいつも言っていた。幼いみさきは祖父が言うすべての言葉に感動し、いつもワクワクしながら聞いていた。海岸での朝の散歩は最高の冒険で、海辺で拾った貝殻を集めるのが日課だった。みさきは、それぞれの貝殻に名前をつけ、祖父にその物語を聞かせるのが楽しみだった。

「ねぇおじいちゃん、この貝殻、どこから来たのかな?」
「それはね、遠い南の海からやってきたんだよ。波に乗って、ずっとずっと旅をしてね」

たまに連れて行ってもらう祖父の研究室は、まるで宝箱。壁一面に飾られた海の生き物の写真や標本は、みさきにとって無限の想像の源だった。海斗と一緒に過ごす時間はいつも魔法のように感じられ、海の秘密を少しずつ教えてもらうのが、みさきにとっての特別な時間だった。

そして、3歳の誕生日を少し過ぎたある日、祖父の口から思いがけない言葉が告げられる。
「みさき、おじいちゃんと一緒に、遠い島へ行こう。そこにはきっと、君が大好きな海があるよ」
それは海斗の仕事の都合で、バリ島への引っ越しを考えていたのだった。

「バリ島って、どんなところ?お魚さん、いっぱいいるの?」
みさきの目は好奇心で輝いていた。新しい冒険が待っている、と彼女は感じていた。

海斗のサンゴ礁保護プロジェクトに伴い、彼らはバリ島へと旅立った。新しい環境、新しい文化、そして新しい言葉。みさきは全てを新鮮に感じ、バリ島の生活にすぐに馴染んでいった。

「ねぇ、おじいちゃん!ここにも海があるよ!」
みさきは新しい家から見える海を指差し、わくわくした声で叫んだ。まだ知らない世界が、彼女を待っていた。

この物語の始まりは、北海道の静かな街から、色鮮やかなバリ島へと続いていく。幼いみさきの目を通して見た世界は、冒険と発見に満ちていた。
彼女のバリ島での物語は高校2年生の16歳まで続く。

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