『幻の女』

監督:ロバート・シオドマク

顔が覚えられなくて、いくつか大前提を理解しそびれていた。まず「幻の女」と秘書が最初同一人物だと思っていた。二つめ、その秘書が小男についていくシーンは完全に別の女の人だと思っていた。三つめ、マーロウが真犯人なのか分からなかった。全部こっちの問題だけど、おかげでマーロウが本当に犯人なのかどうかというサスペンスを自ら生み出して勝手にハラハラしていた。
バーのおっさんを尾行するシーンの不穏感が本当にいい。まさにノワール、という感じのビジュアルの中で二人の足音が響く。駅のホームなんて緊張感マックス。近づいてくる列車の音、人気のない改札、後ろにくる男‥、ゾクゾクした。フレーム外の要素がこんなにもサスペンスを与えてくれるのか。他にも人が死ぬシーンは全然映らない。省略の仕方がとても好き。
ドラマー(こいつのドラムの叩き方はどうかと思う)がドアを開けた瞬間にジャズバンドの映像がフローしてくるショットの訳の分からなさにも笑った。あのシーンいるか?って感じだけれど、やりたかったんだろうな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?