『激怒』

監督:フリッツ・ラング

まさかそういう映画だとは思わなかった。もしかしてこれって‥やりすぎでは‥という不安感を二回抱かせてくれる脚本。「法は私の苦しみを分かってくれない」のセリフが痛々しいが、それでも「真っ当な行い」を貫かなければならないアメリカ社会。徐々に暴徒化する群衆も恐ろしいし、街中での幻覚、ある種男が死神的存在である点なんかは表現主義的、なのに主題はアメリカ社会に一石投じるものになっている。法廷で女の人が罪悪感のあまり泣き崩れるところのパンが見たことないものだった。これ以上ないハリウッドデビュー作だと思う。物語の中で犬の死を全員無視しているのがちょっと気になったけど。床屋の主人がカミソリのくだりをやった後に客が逃げてたシーンはコメディなのかもしれないけど、結局解決されていない誘拐事件の象徴だったりするのかな。ドアが開閉するシーンがなんだか怖かった。「俺の気持ちは分からないだろうな」「分かるわ」のあとにハグで解決するのではなくて、一回一人にさせてから改心させるのスマートでいいな。

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