『灰とダイヤモンド』

監督:アンジェイ・ワイド

評判に違わぬ名作だった。昨日観た『シナのルーレット』のダラダラカメラ動かすのが嫌いだったんけど、この映画はとんでもない。書記長の死体から高速ティルトで花火上がるのは笑うしかないし、アンジェイとマチェクの訣別シーンでは、「アンジェイ!」の叫び声を号砲に高速パンで対角線状の構図を一発で映して見せる。的確でキレのあるカメラに感動した。物語もポーランドロマン主義のジレンマというか、個人と社会の断絶が果たされない。社会主義リアリズム映画と違って、主人公の敵の家族描写も描かれるし、決して一元的な人物描写にはなっていない。一人一人の人間が構成する体制という視点。マチェクは平穏を求めるが、逃げても逃げても愛国心とやらは付き纏う。窓から見える遺族の泣き姿、ベッドシーンでも隣室からの音が聞こえてくる。アンジェイが少佐に言われた、「国内軍である限り戦うしかない」が恐ろしい。灰とダイヤモンドのように、ロマン主義を体現するかのように散るマチェクの姿に呆然としてしまった。背景の動物も人間も全部生きているので一瞬たりとも飽きない。

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