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見ているよ、の話。

1月に入ってから、あれよあれよという間に一気に「自粛」への波が来て、今日は久しぶりに空が暗く寒い一日になった。
15年前、どんなに吹雪だろうと、太ももの半分を丸出しミニスカで通学していたあの頃の自分に言ってやりたい。
15年後はセーターonセーター、なぜか色んな人に腹巻をもらう30代になっているよ、と。

さて、そんな寒い日
疲れ切って何も考えたくない、たまにはゴロゴロのんびりしたい、そんな日にぴったりの映画を一つ。

『柴公園』だ。

柴公園

https://shiba-park.com/


こちらは、朝夕の決まった時間に、ある公園に柴犬を連れてやってくる3人のおっちゃんたちの他愛もない無駄話をまとめた話。
お互い名前も知らない、仕事も知らない

「犬の名前+パパ/ママ」と呼び合い
ベンチに座って話すのは、決まって他愛もない世間話。
来る日も来る日も、展開される
所謂“おっさん版井戸端会議”を面白おかしくまとめたゆるい、ゆるいコメディだ。
誰も傷つかない、誰も泣かない、びっくりするようなことは起こらない。

柴犬の可愛い姿がとにかく多いので、柴犬好きには幸せすぎる映画。


推しポイントは、そのゆるさもさることながら
実は真面目に見ると、ちゃんと人の心の成長が描かれる。

映画の中に、長年引きこもりで対人関係を気付くのが苦手な女性、ポチママ(桜井ユキ)が、自分の殻を破るためにあえて『絶対出来ない』ことに挑戦するシーンがある。
人の顔をまともに見れないくらい人見知りだったはずのポチママが、思いをはせる相手にまっすぐ前をみて一生懸命に伝える。


「見ててください。見ててくれたら、大丈夫なので」

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私は、あまり親から心配されたことのない子供だった。
正確に言うと、心配される要素はたくさんもっているはずなのだが、2つ年上の兄のほうが小さいころから泣き虫で体も弱く、髪を染めたり学校の先生から呼び出しをくらったり・・・といろいろ問題を起こすタイプだったので、親の注目は常に兄だった。
(ちなみにそんなかんじでも成績は兄のほうがずっとよかった)

兄がそんな風だから、私はあまり心配させないようにしなければと思い、親にもそういう風に「しっかりした妹」で接してきた。
結果、我が家はいつも心配ばかりかける兄ばかりの話になり、親はいつも兄のことを見ていた。

大学生になり、自分が全然しっかりしていないことに気づき、失敗ばかりの毎日になった時
苦しいことがたくさん起こり、誰にも頼れないと思った時
私は親に頼ることができなかった。
頼り方も、相談の仕方も知らなかった。

しかし、有難いことに
その時の私には、親以外に、気づいて手を差し伸べてくれる人がいて
家族のように毎日連絡をくれた。
言わなくても、具合が悪いと気づいてくれた。
私がいくら失敗をしても、うまくできなくても、まったく見捨てたりしない
どんな自分でも、がっかりされたりしない
「しっかりしていない私」でも生きていていいのだ
むしろ、でこぼこしていて、いろんな癖があって、自分勝手でずるくていい子じゃないことなんて、当たり前なのだと
自分をより良く見せることよりも、等身大の自分自身のでこぼこを正確に見つめ、受け入れ
今日より、一ミリでも前に進みたいと思える明るい心があるだけで十分なのだと言ってもらえることに、心の底から安心したことを覚えている。
見てくれている人がいて
初めて自分の奥底にあった「見てほしかった」という思いに気づかされた
実は、ずっとずっと、ちゃんと心配してほしかったんだ。
親に、私のことを見てほしかったんだ。


その思いに気づいて初めてようやく「安心」できた。


自分の人生を見ている誰かがいる、ということは
大きな大きな安心感と、前に進む勇気をもらうことになる。
精神的な安定にもつながる。


ちゃんと見ていてほしい。
きっとたくさん転ぶし、かっこ悪いし、泥だらけになるだろうし
まわりの人より時間もかかるだろうけど
ちゃんと見ててくれたら、頑張れる。


弱っちい話かもしれないけど、私にとっては大切な、大切な話だ。

だから私は、ポチママの言葉に涙しながら親指を突き立てる
「見てる、ちゃんと見てるよ!!!!がんばれ!!!!」

そう、言いたいのは

柴公園は、とってもとっても、いい映画だ、ということだ。

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ちなみに、結婚する時、長年、長年、直接会っていなかった父に主人を会わせに行った時
帰りがけに父がぼそりと、「あかねは自分と似ているのかもしれないな」と言っていた。

え、この人何言っているの?全然似ていないじゃんと思ったが
残念ながら主人から「そっくりだと思うよ」と言われた。
物事の考え方、性格、気の弱さ、などなど・・・・

私のことを見てほしいと、長年思っていたが、
多分私も、ちゃんと父の心を見ていなかった。

そういうところも、結局は一緒。


とりあえず、今夜は父にも柴公園を進めてみようと思う。

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