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港町で出会ったイアリングの話。


大漁旗というものをご存知だろうか。


大漁旗は、新しく船を造った際、ご祝儀として知人友人、関係者から贈られる祝い旗のこと。


8月の終わり、友達に誘われて行った石巻に、大漁旗をリメイクした小物を売っている小さなお店がある。
私はそこで、一つのイヤリングに出会った。



目の覚めるような真っ赤な布地。
大漁旗の歯切れでできたという丸いソレに、私は釘付けになった。
可愛い、とかオシャレとかではない。
呼ばれたのでは?という感覚にすらなるほど、どうしてもそれが欲しくなった。
買わないといけない、くらいの気持ちだった。
しかし、私の耳たぶは薄くイヤリングが落ちてしまうので、絶対にすぐに無くしてしまう。
モジモジ悩んでいると、親切なお店のご主人が声をかけてくれた。
なんと、ちょっと待てばすぐにピアスに変えてくれると言う。

ありがとう!!!

お言葉に甘えて少し待つ間、ご主人がこのお店についてポツリ、ポツリと教えてくれた。





震災の後、被災し泥にまみれた旗が何個も出てきたこと。
これだ、と思い漁師さんに相談するとその日のうちに300枚近くの大漁旗が譲られたこと。
泥だらけの大漁旗を皆で綺麗に洗ったこと。
地元のお母さん、おばあちゃん。
地元のたくさんの人が関わり、アクセサリーやバックを作ったそうだ。



お店の名前はFunase-studio。
ブランド名のFUNADEは「船出=新しい生活の始り~」
今までとは違う状況の中でいつかはみんな一歩を踏み出す時が必ず来ること。
そして、カタチを変えて生まれ変わった大漁旗がそれぞれの元へと旅立つことを願い、つけられたものだった。

「昔はね、おばけとかそういうの怖かったんだけどね。今は全くそんなこと思わない」

そう言って、ご主人は真っ直ぐと先を見つめた。
とても優しく、澄んだ目をしていた。



帰ってきて1ヶ月経つ今も、あのご主人の瞳が忘れられないでいる。

君はどう生きるのか。
君は何を伝えるのか。

赤い小さな大漁旗を耳にぶら下げた己の姿を鏡で見るたびに、そう問いかけられている気がした。



楽しむための旅は好きじゃない私。
今回ばかりは、本当に、本当に行ってよかったとおもった。
何度も行こう。
町を歩こう。
そして、あの人に会いに行こう。

真っ直ぐと向き合う先にしか、真実はないことを教えてくれたあの人に。

https://funade.shop-pro.jp

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