【山エッセイ】モノクロの世界に生と死を想う
「ねぇ、山に行かない?」
患者の電子カルテの記載をしていた時だった。
隣に座った先輩がほっとしたようなため息をつき、わたしの横顔を見つめていたと思えば、唐突に言い出した。
出勤してからつい先ほどまで慌ただしく動き回り、ようやく座って電カルに記入できる。
思えば今日も今日とて大変だった。
朝イチで運ばれてきた急患の対応、家族との連絡、入院の準備、一息つけたと思うのも一瞬で、すぐに観察室に入っていた患者の状態が悪くなり、あっという間に亡くなってしまった。
「やまってなんで