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5分で読める登販対策その4〜1章サリドマイド訴訟編〜

こんにちは、春になってだいぶヤバ…いや、個性的なお客様が増えましたね(・∀・)
年間で1日でいい。お客様にある程度は言い返してもオッケーな日を法的に作ってほしい、もち犬です。

はい。前回に引き続き、覚えておきたい4つの薬害の歴史と訴訟。
今回はサリドマイド訴訟です。
5分で読みたい人は前半までで、後半はまぁだいぶ長めの補足でいこうと思います。

サリドマイド訴訟
催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤を妊娠している女性が使用したことにより、出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常(サリドマイド胎芽症)が発生したことに対する損害賠償訴訟。

サリドマイドは催眠鎮静成分として承認された(鎮静作用を目的として、胃腸薬にも配合された)が、副作用として血管新生を妨げる作用もあった。
妊娠している女性が摂取した場合、サリドマイドは血液-胎盤関門を通過して胎児に移行する。
血管新生が妨げられると細胞分裂が正常に行われず、器官が十分に成長しない。
ここため四肢欠損、視聴覚等の感覚器や心肺機能の障害等の先天異常が発生。

なお、血管新生を妨げる作用は、サリドマイドの光学異性体のうち、一方の異性体(S体)のみが有する作用である。
もう一方の異性体(R体)にはなく、鎮静作用はR体のみが有するとされている。
サリドマイドが摂取されると、R体とS体は体内で相互に転換する。
そのためR体のサリドマイドを分離して製剤化しても催奇形性は避けられない。

サリドマイド製剤は、1957年に西ドイツで販売が開始。
日本では1958年1月から販売。
1961年11月、西ドイツのレンツ博士がサリドマイド製剤の催奇形性について警告を発し、西ドイツでは製品が回収。

日本でも、同年12月に西ドイツ企業から勧告が届いていた。
翌年になってからも警告が発せられていたにもかかわらず、出荷停止は1962年5月まで行われなかった。
販売停止及び回収措置は同年9月であるなど、対応の遅さが問題視されていた。

1963年6月に製薬企業を被告として提訴。
さらに翌年12月には国及び製薬企業を被告として提訴。
1974年10月に和解が成立。

サリドマイドによる薬害事件は、日本のみならず世界的にも問題となったため、WHO加盟国を中心に市販後の副作用情報の収集の重要性が改めて認識された。
各国における副作用情報の収集体制の整備が図られることとなった。


◯サリドマイドは催眠鎮静剤等
◯妊婦が摂取で出生児に四肢の欠損、耳の障害など先天性の異常
◯血管新生を妨げる
◯血液−胎盤関門を通過して胎児に移行
◯血管新生を妨げる作用(催奇性)は光学異性体のS体のみが有する
◯R体とS体は相互に転換するので催奇性は避けられない
◯1963年に製薬会社と国が被告で提訴 
◯1974年に和解
◯世界的に問題となったため、WHO加盟国を中心に副作用情報の収集体制の整備が図られた

以下、もち犬調べの補足(長いよ)

そもそも催眠鎮静剤をなぜ妊婦さんが飲んだのか?
妊娠初期って吐き気や胃の不調が出やすいですよね。
つわりだと気付かず、胃腸薬を服用した事例が多々あります。
「忙しいあなたに!神経性の胃痛に効く!」なんていって市販の胃薬に入っていました。
それと「麻酔性のない睡眠剤」とうたっても売り出されていました。
どちらも妊婦(初期なので妊娠に気付いていない方も含む)が飲んでもそりゃあおかしくないですよね。

そしてそんな妊娠初期に1回、1錠飲むだけでも胎児に影響が出てしまったのです。
妊娠初期の3ヶ月、この期間のどのタイミングで飲んだかによって胎児への影響は変わりました。

血液−胎盤関門はその名の通り、お母さんから送られる血液と赤ちゃんの胎盤とを繋ぐトンネルみたいなイメージです。
このトンネルは「危なっ」というものは、ここで堰き止めてくれるんですけどもサリドマイドのやつはしれっと通過しやがりました。

血管新生、これが邪魔されるとすくすく育つはずの手足が成長しなくなります。
成長しようという細胞が壊されてしまったからです。
この成長の時期にサリドマイドを飲むと手がない、極端に短ったり指の数が少ないといった四肢の異常や欠損が生じます。
特徴的な見た目から「アザラシ肢症」と呼ばれる疾患です。

耳ができる頃だと、耳がない状態で生まれたり、極端に小さな耳で難聴となります。
他にも心臓の異常、内臓の異常なども起きます。

なぜレンツ博士を無視したのか。
そして、スモンと時期が近いのが年代を見てハッと気付きませんか?
この2つ、近い時期に発生しているのです。
整腸剤、催眠鎮静剤、胃薬と…スモンだけでもかなりの薬剤に含まれていたのにサリドマイドまで…市販薬に危険がいっぱいだった時代です。

サリドマイド胎芽症は生まれるまでに命を落とすことも多く、推定患者は1000人以上。
このうち生存して認定患者となったのは309名です。
2024年現在、55〜67歳の方です。
けっこう、身近にいる年代ではないでしょうか?
遠い昔の出来事ではないのです。

そんなサリドマイドですが、現在でも使用されています。
え?!まだ使ってんの?となりますがご安心ください。
現在では研究が進み、治療薬として使われています。
再発または難治性の多発性骨髄腫、らい性結節性紅斑、クロウ・深瀬(POEMS)症候群…
といった要は骨髄の癌や患者さんの少ない希少疾患の治療に使われています。

何がどう作用するかが解明されたので、今はちゃんと体にとって有害なやつらをやっつけるのに活躍しています。

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