見出し画像

待ち望む、豊かな時間。

島田潤一郎『古くてあたらしい仕事』より

そこには、昨日のニュースよりも今日のニュースが、五分前の投稿よりも一分前 の投稿の ほうが価値があるという、時代の大きな変化があった。
ぼくは一〇代のころ、「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年マガジン」を買い続けることで一週間の長さを知り、「ロッキング・オン」や「ミュージック・マガジン」を買い続けることで一カ月の長さを知ったが、いつのまにか、それらを待ち望んで生活をすることはできなくなっていた。日々、毎分毎秒更新される情報をチェック しているうちに、あっという間に一日が終わり、一カ月が過ぎていく。そんな時間のなかで、慌ただしい生活をするようになった。
そうしたデジタルメディアのスピードに比べると、本の世界というのは、一〇〇 年も前からほとんど変わっていないように見えた。見ようによっては、本だけが時代から取り残されているようだった。

これを読んで、何かを「待ち望む」ということが確かに減っているかもしれないなと思った。十分すぎる程の情報に追われ(ているように感じて)、誰に求められているわけでもないのに、急き立てられている。そうして取った計画や行動も、あっという間に過ぎ去り流れていってしまう気がする。
「待ち望む」あるいは「待ち侘びる」という豊かさを、大切にしたいと気づかされた文章。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?