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大きい木には大きな影-『つるかめ助産院』

全編通して心洗われるような清らかさが満載でした。
その一方で、泥臭さ、無様さ、苦しさ、みじめさ・・・も描かれていて、人間臭さも感じました。

大きい木には大きな影ができるし、小さい木には小さな影しかできないの。亀子は誰が見ても大きくて立派な木よ。でも、あんなに明るくて元気だからこそ、その内面に真っ黒い影を包んでいるのかもしれない。

ドロドロぐちゃぐちゃの感情や考えは持っちゃいけない、それでも湧いてきてしまうものでそうすると後ろめたい、ゆえになるべく外には出さないようにしてきたけど。
この言葉を読んで、
真っ黒い影を持っていても、もしかしたら、持っているからこそ大きな木に成長して、そこにできる影でほかの人や物事を包むことができるのかもしれない、内に影を持っていてもOKなのかも。
そんなふうに思い、ドロドロぐちゃぐちゃを吐き出し問題の原因を知ることができたこともあり、
背中を押してくれる1冊でした。

締めには、清々しさを感じた表現をいくつかご紹介。

海は、涙を我慢しているような潤んだ色をたたえていた。
体中の細胞が、両手を伸ばして万歳をする。

詩的でありながら、いつか見たこと・体験したことがあるような、「わかる」感のある表現が絶妙だと思います。

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