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スルメイカの塩辛


いいスルメイカが手に入るとやっぱり塩辛にしたい。夏のスルメイカはワタ(腑)がどーもイケてないんだよな。やっぱり塩辛は冬のスルメイカって相場は決まっとる。

今回はかなりデカいガタイのスルメイカを手にいれたからこれで作る事にしたぞい。

干しの行程

そもそもスルメイカなんてのは日本全国津々浦々で取れるわけで塩辛も日本全国で作っているのでその作り方は千差万別、テンプレートなど無いに等しい。だからyoutubeなんかを見てもみんなそれぞれ思い思い作り方を主調してくるわけだ。

ここでは干しに重点を置いている。干すことでイカの水分が飛んで旨味が集まってくる、と同時に歯応えが増してくるのと塩辛自体が濃厚になる。これはいいことばかりのようにも思えるけど、人によってはもうすこしおだやかな食感だったり、ネットリよりもさらっとした塩辛が好みの人もいるだろうからやはり正解なんてないんだよね。

ただ、イカの鮮度ってのはあらかたすぐ見分けられる。この黒黒とした皮膚の表面が時間が経つと剥がれてくる。これくらいの色をしてればまず刺身で食えるものと思う。まあアニサキスだけは刺身で食うなら多少意識しときたい。塩辛にする場合大抵仕込んでる途中で死ぬと思うけど(塩辛でアニった奴はおれは知らない)

イカの解体は魚介の処理の基本中の基本であーる。包丁など使わずとも可能で、この繋ってるところを基本的に切断して中身をひっこぬけばいい。

ただ、今回の奴はデカすぎたので頭も落としといた。つるつるの白色になってるのは皮を剥いだからである。皮をついたまま塩辛にすることもできるがその場合は色素が締みてきて色が変化するぞい。

筒状に切った意味

ま、でかすぎるからいろいろ食べようかなって…

リング状に切ってオリーブで半生くらいに炒めたもの
冷製でもうまそうなスパゲッティー

余興は終わり

塩辛っちゅーのはその特性上ワタ(腑)と身で別の処理になりがちである。ちなみに発酵するのはワタだ 身は放置しても発酵しないぞ。なお、発酵するときにイケてない菌が入るとシンプルに腐る。発酵と腐敗は紙一重なので市販品はしくじらないように発酵を途中で止めたり保存料をぶっこんだりと、とにかくケミカルになる。これはまあ致し方ないかと思う

クソデカ墨袋

従ってまず綿を分離していく。この黒っぽいスジは墨袋である。墨袋はコウイカ系では相当に強烈なのだがこのスルメイカ系統でここまでデカい袋はなかなか見ないわね…なお、北陸の方はこの墨袋をふんだんに使った「黒造り」という塩辛も有名のようだ、が、ここでは捨てるw

塩で固めているがもっと固める事もある。おだやかな方

シンプルで塩で固めて2日置いている。この部分は割と塩が入っていてもうまいし、塩分を強くすると保存には強い。しかし塩辛くなる。あんま塩分が強いと味のバランスが絶妙に悪くなるので1日漬けで終えることにした。

真ん中で割ってメダマにアクセスできているのがわかる

イカのワタを切断したようするにゲソの部分である。ここに目玉が張り付いている。これは食ってもうまくないので捨てないといけないが、目玉自体がなかなかの色素を放つので飛びちって事故らないように切る必要がある。このように最初から割っておけばとりだしやすいんじゃないかな?あとクチバシ(トンビ)ってのもあるよ。これも食えるけど中の硬いのは食えないからね。

処理されたアシ

脚も塩辛に加えていいんだけど上品な塩辛を目指す場合これはつかわないこともある。今回は使わない。上品とかいうより、個人的にこのゲソは他の食い方の方が好みだから。


エンペラと身
シンプルにゆでてアテにしてる。こういうのがいいんだこういうのが。

イカは頭の方のエンペラを分離できる。これも塩辛にできる。いずれにせよ皮をしっかりおとすとこのようにほぼ真っ白になる。真っ白にしなくてもいいが、色素が移っていくのでそれをヨシとするかどうかっていうそれだけ。

塩による脱水

先述したようにイカは干しあげていくのであるが、まず基本的に鮮度がいい奴はとりわけ身に過剰な水分をふくんでいるため、塩をして浸透圧に変化をかけて身から水分を抽出してやる。この手法は、最終的に塩味が付いていい食材にのみ適用できる。つまり、塩味が深くなりすぎないように気をつける必要があり、その時間としては大体30分〜1時間くらいだ。それ以上をやるとものすごい塩っぽいイカになる。それがいいなら別にいいんだけど。

ジュクジュクになってるのがわかる

このように明らかに水分が浮いてくる。ここまでやればまあokって感じなので洗い流す。洗っても別にまた身に水分が入ったりはしないからねw あくまで筋肉の内部の水分を排出するので外から加えて入っていくもんでもない。

干し

外干し

今回は外干しであるが脱水シート+冷蔵庫の組合せも有効である。気温がそもそもこの時期は外気が低いので冷蔵庫とあんま変わらない状況になっていることが多いから腐敗の心配はよほど汚ねえ器具で調理するとかしたらアレだけど基本的には無い。まあこの辺は字面とか動画見てわかるもんじゃねえから最後は経験則とも言えるよな。ここで半日に1回くらいひっくり返しながら2日干した。

合わせていく

実は最後の1日だけ脱水シートを使っている(身もワタも)

カピカピテクスチャー

このようにエンペラにいたってはもうカピってるし、身に関しては半分干物状態である。この状態でちょっと食ってみるとすげえうまい。この半生干物ってのも実はうまいので、ワタとあわせない天麩羅ひらお形式にするのもアリかもしれない、その場合早く食べきっちゃいたいけど。

この素朴な物体がワタである。3日放置してるので内部では結構発酵が進んでいるはずだ。

ワタの袋を分解して内部を観察する、食ってみるとすさまじい旨味を放っている。


イカのワタはそれでも脂とか雑な感じの大胆な味になっているので、このように漉しとることである程度それが軽減できるそうな。表面に残ったやつは捨てていくので贅沢な使い方ともいえるね。


合わさったもの

この時点ですげえ旨いんだけど、ワタと身が馴染んでなくて、実際ワタの味が強烈なのに対して身がシンプルなので味の強弱を感じる状態だ。ここから丸半日〜1日寝かせることで味が馴染んで完成していく。

実食

うますぎ

自作の塩辛を食ったらもう市販品に戻るのは難しい。ただ、結構減塩なのもあるし、そこまで長持ちはしないだろうから一週間を目処に食べきっちゃいたい。ややあやういなってなればこれを焼いてスパゲッティーに加えることも考えてもいい。


じゃがばたー

ジャガバターに加えるのは北海道の知識らしいが、こんなけしからんもんを考えた奴は誰なんだ…

まとめ

現代においては塩辛は、少なくとも都市部では自作するという概念が希薄になってきていると思う。それだけ市販品が流れているし、そもそも、そんなにうまい塩辛っていうのを食う機会がないのかもしれんが、刺身クオリティーの黒々としたスルメイカを見付けたら試してみてもいいんじゃないだろーか。

なお、東北のエリアはこのイカのワタ(腑)の意識がかなり高い。

こちらのtweetのようにイカのゲソにもれなくワタがついてくる。こういう売り方は東北のエリアに行くと一般的に見られる光景なのだが、全国的には割とレアと思う。前に八戸のバーでイカの腑を使った塩辛じゃない食べ物をいただいたが(バーのはずなんだけど何でw)、塩辛じゃない何ともいえない不思議な食べもので鮮明にうまかった。仙台で居酒屋入ったときもイカの腑を身と炒めたものが出てきた。そんなの知らなかったころは俺なんて普通に問答無用で捨ててたからね。食は経験だなーと思い知らされたもんでした。

まあ今後もいいイカが入ったら加工していきますよん。最後まで読んでくれたのならありがとう。こんな長い記事を..

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