月曜モカ子の私的モチーフ vol.192「水」
先日、とある知り合いの先生から、深夜にぽん、とlineが、しかも数ヶ月ぶりに来たと思ったら「貧乏人は毒を飲め!」という大変過激なTouTubeだけが添付されており「お・おお・・・」となり、そのタイトルにやられているところに周防大島の人たちが断水が続き困っているような報道や、水道の民営化に関しての報道なんかを相次いでテレビでしていて、これまではそこまで深刻に考えたりはしていなかった「水」について考えていた矢先、
我が家の水が変な匂いがするようになってしまった。
最初は風呂場で臭ったので「あれ? 自分の掃除が行き届いていないのかな」と思った。けれど次にキッチンからも同じ匂いがし、最終的にトイレからも同じ匂いがしたので、これはと思って水道局へ電話をする。
どんな感じの臭いかというと多分これってアンモニア臭というやつなんだろうけど、ちょっと酸っぱいような、言い方悪いけど脇汗のような臭い。
昨日1日の間に色々検証したけど、やっぱり蛇口から出ている水にその臭いがついていることがわかったのだが、水道局の人が来た結果、「異常なし」ということだった。
水質検査の結果、飲んでも全く問題ない、異常な数値が検出されなかったし、近所一帯からもそういった異臭のクレームは受けていないとのこと。
わたしが結構ショックだったのは、水道局の人は男の人2人で来たのだけれど、2人ともが口を揃えて「おっしゃっているような臭いはしない」と言ったこと。
「え? ええ? 今もしてるじゃないですか、なんか脇の臭いみたいな臭い」
と懸命に訴えたのだが、
匂い、には個体差があるので、水質に問題がない以上、こちらとしては問題ないということになります、とのこと。
わたしには割とはっきり臭っていたから、
(もしかして数値として異常値が出ない場合は、どれだけ臭っても臭わないと言うようなマニュアルがあるのでは!?)
と、勘ぐってしまったくらい。
ううう、と思ったけれど、逆に考えると、
この人たちももしかしたら根拠のない不安による住民からのクレームなんかにも日々心をすり減らしながら対応しているのかもしれないと思ったので、
「そうですか、ではわたしが過敏になっているのかもしれないですね、わざわざご足労ありがとうございました」
ということで、締めくくった。
(2人とも悪い人じゃなかったし、わたしは多分、鼻は他の人よりちょっと鋭いと思うので)
とりあえず、差し迫った危険はないようなので、
あとはしばらく、この匂いがどう変化していくか、見守るしかない。お金はかかってしまうけど、この臭いの水で米を炊く気にはならないので、しばらくは結構ミネラルウォーターを使うことになるなあと思う。
突然「水」のことが自分にとっての目の前の差し迫った課題となり、先生から送られてきた「貧乏人は毒を飲め!」という過激な動画のタイトルが頭によぎる。
この先生は不思議な人。陰謀論などにかなり深いところまで精通していて、話についてこれるのがわたしくらいなので、時々連絡をくれるのだが(わたしは何せガリ勉なんで、なんでもとことん掘り下げてしまうので陰謀論についても色々知っている)本人はとてもとてもお金持ちで、陰謀論的に言うと、搾取し使われる側には今後もならない立場の人。親友とやっているUtataneで、わたしはお金がありすぎて憂鬱な未亡人に扮しているが、お金に退屈している人ってこういう感じなんだなあと先生を見ていると思う。金持ち、そして世界の行く末を悲観している。
そしてとことん悲観しているので、自分のお金を地球を救うことには使わない。「意味ないんですよ」そう思っているから。
(そこがわたしは少し悲しい)
「貧乏人は毒を飲め」と送ってくる先生は、絶対に毒を飲まなくていいけれど、送られたわたしは、毒を飲まなくてはならない可能性がある。
(えっとこれは日本の水道のことを言っているのではないので、そして陰謀論なので。そういう話です)
今現実に、わたしの家の蛇口からは脇汗の臭いの水が出ている。もしくは、水道の水が脇汗の臭いに感じてしまう、「鼻の病」にわたしは陥ってしまっている。笑
そしてとても恐ろしいことに、これは水道局の責任や、水道局で働いている人の問題じゃなくて、わたしたち自身の責任であり、問題なのだ。
テレビが言うには、高度経済成長の時に整備したインフラ(水道)はもうだいぶガタがきているけれど、それは国営ではちょっとメンテナンスしきれないとのこと。しかしそれが民営になった場合、水質や、災害時や、すべての問題がいわゆる資本主義化(利益ありきになる)わけで、安全な水を供給し続けられるかは不透明だ(リスクをはらむ)ということ。
水道局の人は「無味無臭」と言ったけれど、
蛇口から出る水はわたしが感じるに脇汗ぽい臭いや、昔おばあちゃん家の外にあったカワヤの男子用の便器から臭ってくる感じの、あのちょっとツンとするあれ、を漂わせていて、とても飲む勇気はでない。その水を眺めながら、わたしは地球の未来と自然破壊と、環境汚染について深刻に考えている。
また自宅の蛇口からそんな水が出てくるまでは、どこか他人事のように考えていた自分を恥じてもいる。
日本という国は水の国で、生まれた滋賀県は日本最大の水瓶の街。これまで美しく綺麗な水、というものに対して「終焉」を具体的にイメージしてこれていなかった。
けれど今、それをわたしは目の前で突きつけられている。
この酸っぱい、変な臭いの水が「何ら飲んでも問題がないという問題」に、わたしは目下苦悩している。
(イラスト=MihoKingo)
※すみませんアーカイヴをこちらに載せるの忘れていました。
今日から連続でポンポンと載せていきます、よろしくです^-^
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