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真友のはなし


 不思議な感情が湧く、そんな友人はいますか。不思議な感情とはなんとも説明し難いのですが、一緒に居ると心の奥底がじんわりと温かくなるような。その子の笑顔を見て、嬉しくて泣きたくなるような。これから先、何があっても無条件にずっと大好きなんだろうと確信できるような。そんな友人がわたしには一人います。
 ここでは詳しく書きませんが、彼女とは、お互いの立場があり、フェアではない関係でした。立場がある以上は、一線を引いての関わり。特別視は決して許されません。お互いの立場が解けたときにやっと、わたしは彼女と、一個人として、大好きな真友として関わり続ける決意を固めたのでした。きっと彼女もそう思ってくれているはず、今度こそ対等な関係になるのだと思いながら。
 毎日その子の幸せを祈って眠りにつきます。忘れることはないです。わたし自身、人にそのような気持ちを抱いたのは初めてで、自分でも戸惑うことがあります。恋情を抱いているわけでもありません。その子に恋人ができたら、わたし以上の存在ができたら・・・と思うと寂しい気持ちになるのは否めないけれど、その子が幸せになるのならそれは本望。
 ずっと人を本当に愛せる日が来るのだろうか。わたしの長年の疑問でした。わたしはその子を通して”愛”を知ったのです。こんなに幸せなことって他にあるのでしょうか。あとはその子が思うまま自由に生きてくれたら、幸せになってくれたら・・・。それ以上に嬉しいことはありません。
 彼女は人には打ち明けずらい、悩みをたくさん抱えています。彼女の苦しみを、引き受けられたら良いのにと本気で思います。わたしは当たり前だけど、傍にいることしかできません。自分だけ、能天気に生きていることに負い目を感じる時も正直ありました。彼女の心配ばかりして、勝手に悲しんでいました。でもわたしはそれらをやめ、彼女を信じることにしました。彼女の”力”をわたしが信じないで誰が信じるんだ!!!強く思いました。わたしは彼女の幸せを信じます。だれよりも。

 以下は、愛を知らない、星の王子さまにキツネが語りかける場面です。
グッとくるものがあるので引用させていただきました。

【ぼくの暮しは単調だ。ぼくがニワトリを追いかけ、そのぼくを人間が追いかける。ニワトリはどれも同じようだし、人間もみんな同じようだ。だからぼくはちょっとうんざりしてる。でも、もしきみがぼくをなつかせてくれたら、ぼくの暮しは急に陽が差したようになる。ほかの足音なら、ぼくは地面にもぐってかくれる。でもきみの足音は音楽みたいに、ぼくを巣の外へいざなうんだ。それに、ほら!むこうに麦畑が見えるだろう?ぼくはパンを食べない。だから小麦にはなんの用もない。麦畑を見ても、心に浮かぶものもない。それはさびしいことだ!でもきみは、金色の髪をしている。そのきみがぼくをなつかせてくれたら、すてきだろうなあ!金色に輝く小麦を見ただけで、ぼくはきみを思い出すようになる。麦色をわたっていく風の音まで、好きになる...…】

星の王子さま サン=テグジュペリ 河野万里子 訳 新潮文庫

 


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