【出産】 私がママになった日
2月2日。
可愛い可愛い息子が産まれた日。
私たちが三人家族になった日。
健診へ
既に予定日を6日超過していた出産前日、入院の準備をして健診へ。
担当のお医者さんから事前に電話があって、赤ちゃんの様子によってはそのまま入院して誘発分娩の流れになるから朝イチに病院に来るように言われていた。
赤ちゃんの退院用に夫と選んだ50センチの小さなお洋服を自分の荷物と一緒に詰めて、在宅で仕事をしてた夫に託し、ダウンジャケットを羽織った。
次会う時は分娩台かもしれないのかと、ふたりでの生活が終わることに一瞬感傷的な気持ちにならなかったわけでもないが、なんだか入院にならないような気もして、軽くハグをして玄関を出た。
病院に着いたら早速お腹をモニターに繋がれ、赤ちゃんは元気とのこと。ただ子宮口が開いている様子もなく、産まれそうな気配はなし、このまま入院して促進剤入れちゃいましょうか、と先生。もうだいぶお腹が苦しくて早く赤ちゃんを出したかったのもあり、そのまま入院させてもらうことに。産婦人科病棟に送られる。
入院
夫に連絡をして入院になったことを報告。荷物を持ってきてもらう時にもう一度会えるかなと思ったけど、感染対策で面会が禁止されていたから、下の受付にバッグを預けるように言われる。それならさっきが本当に最後の二人だったんだと、少し寂しくなった。だったらもっと噛み締めて家を出ればよかった。
病室に案内してもらって、病院着に着替えて待つこと小一時間、処置室に呼ばれて、子宮口を柔らかくする効果があるというホルモンシートを膣内に入れてもらう。
病室に戻り、ベッドの上で赤ちゃんの心音を確認するモニターに繋がれてただひたすら横になる。
持っていったお絵かきロジックと数独を解いて時間をやり過ごすのだけど、体勢を変えるたびにモニターに繋がってる心音器の位置がずれて看護師さんが確認に来る。
そのうちお昼が運ばれてきて、初めての病院食。これが美味しい。想像通り味は薄めだったが、その分出汁のしっかりきいた味付けで、野菜もお肉もしっかり美味しい。「お昼食べました〜」と写真を家族に送る。
夕方になって、なんかズーンと生理痛のような痛みが出てきたような。モニターを見てると、それに合わせて定期的にお腹が張っている様子。ただホルモンのシートを抜く時間になったので、このまま陣痛に繋がらなければ、翌日促進剤を点滴で入れると説明される。この時子宮口は2-3センチ。
破水
夜ご飯を食べてシャワーも浴びてベッドの上でじっとしてると、痛みが徐々に強くなってきた。まだ全然余裕な痛みだったが、21時ごろ「プッツン」という感覚と共に、股からじわ〜っと水が出てくる感覚が。お腹に少し力を入れるとさらに水が出てくる。これ、もしかして破水?ナースコールで助産師さんを呼び確認してもらうと、やはり破水をした様子。
だからと言って何というわけでは無いようで、細菌感染のないように抗生物質の錠剤を渡され、またベッドでじっと待つ。この頃には痛みの波はきていて、これは陣痛なんだろうと思う。ただ、痛みの感覚が5分・8分・6分・9分…の様に一定ではなかったことから、さっき抜いたホルモンシートの影響が収まったら痛みもひくかもと助産師さん。
陣痛
なんせ出産は初体験なものだから、ほーそんなもんなんだと思うしかない。だが徐々に、でも確実に痛みが増してくる。日付が過ぎる頃には顔が歪むくらい痛い。汗が噴き出て、荒くなる呼吸を深呼吸でコントロールする。その場から動けなくなってくる。
途中、当然吐き気に襲われ病室のトイレに行こうにも思う様に動けない。痛みが引いた瞬間を狙ってなんとか移動するも、便器にたどり着く一歩手前で吐いてしまった。なぜ助けを求めなかったか今思うと謎だが(笑)、痛みに耐えながら必死に床を拭いて手を洗いベッドに戻る。
そこから朝にかけてはひたすら痛みに耐えた。陣痛というのは「お腹」が痛くなるものだと漠然とイメージしていたが、とにかく痛いのは尾てい骨だった。(もちろん子宮の収縮でお腹もきゅーっとなるけども、別に痛いっていうのとも違う。)
この時の痛みの種類を表現するならば、「途方もない」「逃れようのない」という言葉が浮かぶ。途方に暮れるくらい痛いんだけど、体勢を変えようがさすろうが押そうが何をしようが、その波が収まるまで逃れることのできない痛みだ。
でも面白いことに、そんな痛みの波の合間のほんの数分で気絶したみたいにすやすや眠れたのには驚いた。痛みが引くのと同時に、強烈な眠気でスゥーっと眠りに落ち、次の痛みで飛び起きる、を繰り返すのだ。後で調べてみたら、陣痛の合間に体が休めるよう、エンドルフィンという脳内麻薬的物質が出るのだとか。
陣痛じゃなかった?!
朝6時ごろ、そろそろ状態を確認してもらおうかと、助産師さんにナースコール。だいぶ痛みが強くなってきたことを伝える。この時点で私の中では、もうだいぶお産が進んだのではないかと思ってる。
しかしなんとまだ「前駆陣痛」だというのだ。陣痛の感覚は短い時で1~2分になっていたものの、やはりモニターで確認する限り間隔が一定ではないことが理由らしい。確かに1分間隔の次は6分空いてみたり、2分になったり5分になったり、聞いていた陣痛の感じとは違う。
でもでも、これが本陣痛ですらないと!?
いやいや、もう何時間もかなりの痛みだったけどなぁ…。
「本陣痛はもっと痛いってことですか?」思わず聞く。
「うん、もっともっと痛くなるよ。」
うわーーーーーん!
途方に暮れる余裕もなくどんどん襲ってくる痛み。痛いのは長くて1分程度だとわかったので、深呼吸しながら頭の中で1..2..3..4….秒数を数えていく。49..50..51…痛みが引いていく。
分娩台へ
汗だくになりながらそれを繰り返しているうちに、陣痛の波に合わせてお腹に力が入ることに気づく。これが「いきみたくなる」というやつだろうか?そんな気がする。だって力を入れない様に意識しても、体がおえっとえずくかの様に勝手に踏ん張ってしまう。
「いきみたい感覚が出てきたのですけど…。」
8時ごろ念の為ナースコール。
すぐに助産師さんが来て、子宮口を確認してくれた。慌てた様子で電話をかけ始め、「もう8-9センチ開いてます、分娩台行きましょう」とのこと。
前駆陣痛だと言われてから2時間。やっぱり本陣痛だった安堵感と、もうすぐ赤ちゃんに会える楽しみが押し寄せて、一気に落ち着いた気持ちになる。
分娩台に上がって立ち会いを希望していた夫に連絡。
ここまで来てもやっぱり陣痛の間隔はチグハグで、なんでだろう、担当してくれた女医さんと助産師さんも不思議そうにしてる。
(結局生まれるまでそうだったので、体質か何かだろうか?)
家から徒歩数分の病院を選んだので、夫がすぐに到着する。今どんな状況かを説明していたら、お医者さんも英語が喋れる方だったので、説明を代わってくれた。
もう陣痛の波が来るたび、体が勝手にいきんでしまう。
でも、「これからこういう状態になったらこう言うからこうしてね。」と、助産師さんが的確な指導をしてくれたおかげで、落ち着いて波に乗ることができた。
分娩台に上がってから40分ほど、力一杯いきんで、思わず「い、痛い!」と口に出た直後、息子が産まれてきた。ちゃんと人だった。
誕生
息子は一回「オギャー」と泣いてからはずっと大人しかった。モニターに繋がれてもお尻の穴で体温を測られても静かにしてた。
その代わりに私が泣いた。それはもうワンワン泣いた。無事に生まれてきてくれた安堵と、「自分の子供」に会った感動で涙が止まらなかった。
ほやほやの赤ちゃん。夫は何度も"He's so beautiful."と言った。
私も本当にそう思った。
一通りチェックしてもらった後、カンガルーケアをさせてもらう。ちっちゃいお猿さんみたいにシワシワな息子を胸に置いてもらったら、ふわふわで暖かくて、また感動して泣いた。背中にも耳にもふわふわな産毛が生えていて、私の胸の上でむにゃむにゃしてたあの姿と重みを一生忘れたくない。
少し落ち着いてから実家に電話をかけた。でも、電話がつながってパパの声が聞こえた瞬間、またワンワン泣いてしまった。外出してたママからも折り返し電話があって、泣きながら報告した。
夫の両親がいるフランスは夜中だったけど、"It's a call worth waking up for"と電話をかけた。二人とも大喜びで、夫が生まれた日と同じくらい嬉しいと言ってくれたそう。
大好きな大好きな可愛い可愛い息子。
みんなに愛されて、幸せな息子。
私たちの一番大切な宝物。
自分のママとパパが私の胸いっぱいに注いでくれた愛情をこの子にいっぱい注いであげたい。大事に大事に育てていく。
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