ALBUM OF THE YEAR 2020
JHENE AIKO - CHILOMBO
しなやかで惚れ惚れするボーカリゼーションに骨の髄まで浸り切れる、これぞ2020年のR&B。彼女の歌は実はオーセンティックな意味でもかなり上手いのだが、雰囲気たっぷりなトラックの上でフロウさせたら他の追随を許さない。聴きどころだらけのアルバムだが中でも10k hoursが好き過ぎた。死ぬほどディープにチルしている、チルR&Bの極限値。
J HUS - BIG CONSPIRACY
メインストリームのラップに食傷気味になってしまった自分にとってAfro Swingと形容される、このアルバムで聴くことのできるビートとフロウは特段に美味しかった。脈打ち鼓動するビート、逞しくスピットされるラップ。気持ちよくぶん殴ってくれる。2000年代のUSヒップホップを想起させる部分もあるが、ずっとソリッドで荒々しい。細胞が喜ぶファンクネス。
BABY ROSE - TO MYSELF (DELUXE)
物哀しい。
彼女についての記事の中にwounded soulと形容するのを目にした。彼女のボーカルからは確かにそれを感じる。低くスモーキーな声質、ヴィブラートというには不安定な震えを伴った歌唱。
朧げに処理されたキーボードやギター等のウワモノ対して、ビートとボーカルの存在感は強く、心綺楼の中の妙にくっきりとした像を見るようで少し不思議な感じがする。
ゴスペルやジャズはあくまで後天的に会得したエッセンスであり下地にある感じがあまりしない。辺境感。この所在なさげな佇まいがブルージーなフィーリングに一層の説得力を与えているようにも思える。
FIREBOY DML - APOLLO
ナイジェリアのシンガー。底抜けの爽やかさに心を鷲掴みにされた。一応R&Bルーツのポップシンガーということになるのか。冒頭ではD smokeをフィーチャーしているがUSのR&BやHIP HOPとは一線を画す。Afro Swingと呼応するような、R&B、ダンスホール、アフリカンポップの集合点のようなサウンドが楽しすぎる。素晴らしい。めちゃ都会的。聴いた事ない人にはとにかく聴いてみて欲しい。最高の気分になれるアルバム。
MASEGO - STUDYING ABROAD
I WANT YOUの現代版をやるならこんな音になるのかもしれない。現行R&Bらしいエッジーさが光るサウンドの上で、ミュージシャンらしい巧みさがメロディや和音から艶かしく迸る。非常にエロき音楽。セクシュアルヒーリング2020。
LEDISI - THE WILD CARD
ネオソウルはジャズを通過して洗練された様式美を獲得した。LEDISIはゴスペルとジャズに跨る素晴らしいボーカルでネオソウルの成熟を体現してるように思う。ソウルミュージックラヴァーとしての僕の感性に一番アプローチしてきた音楽は、今年はこれだった。まずは冒頭のハチロクのソウルバラッドANYTHING FOR YOUを聴いて欲しい。じんわりと胸が熱くなるはずだから。惚れ惚れするテクニックと抑制がもたらす気品。
LE MAKEUP - 微熱
FRANK OCEANのBLONDEへアプローチする日本のアーティストの作品はここ数年何度も耳にしてきたけど、これぞ真打だと思えた。傑作。「微熱」というニュアンスを表現するために多彩に構築されたサウンドがフレッシュ。ぶっきら棒に響くボーカルも良い。歌モノではあるが歌に溺れてもいないし執着してもいないのが素晴らしい。少し泣きたくなるような、素敵な気持ちになれる綺麗なアルバム。
CHANNEL TRES - I CAN'T GO OUTSIDE
生暖かくメランコリックなダンスミュージック。感触としては90年代っぽいメロウネスが感じらる。それは僕が最も好むフィーリングで、即ちこの作品を愛さない理由は無いという事になる。タイトルに表されるシニカルな切なさが淡々と鼓動するビートにのって漂う。ひたすらに聴き続けたい音に満ちた作品だった。
PLAYBOI CARTI - WHOLE LOTTA RED
くそかっこいい。アートワークも好きだった。声含めたサウンドの歪み方がツボ。過去作から続く持ち味を強化したなと思った。分かり易い新奇性ではなく各要素のチューニングがいい塩梅にいい加減でどこか凶々しく、ついつい聴いてしまう。
この作品のトラックを構築的な意味合いで新鮮味がないと捉える向きもあるみたいだ。一方自分は美味しい音の波を浴び続ける、聴くドラッグの最高峰という感覚で聴いた。
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