ビビリの第三歩
府中駅から徒歩15分にある晴見町商店街。
ここには八百屋や精肉店、中高年向けの洋服店やクリーニング屋など生活には欠かせないお店があり、その周りには家族連れが住む団地や3億円事件があった府中刑務所もある。僕は知らないが、ドラマの撮影や最近流行りのウマ娘というゲームにも商店街が登場しているらしく、近くに住む者としてはとても興味深い場所である。
そんな中でも気になったのが、晴見町商店街で30年近くたい焼きを焼いている「たいやき ちあき」さん。一匹ずつ丁寧に焼く一丁焼きで、中のあんこはこだわって作った程よい甘さの粒あん。それが頭の先から尻尾の先までしっかりと入って150円とかなり安め。もちろん味もとても良く、地元の高齢者から子供まで愛されている。
(フランスのパリでもお店を出さないかと言われたことがあるらしい)
そんなたい焼きを売っているオジちゃんと仲良くなり、最近ではオジちゃんの生い立ちや商店街のことも深く話すようになった。
(実はオジちゃん、前は漫画家で赤塚不二夫さんや馬場のぼるさん、千葉てつやさんとも交流があったらしい。その話はまた次回にでも)
「30年ほど前のここの通りは人で溢れかえってすごかった。いつもお祭りみたいに賑わっていた」
ガランとした通りを見ながら思い出話をするオジちゃん。「いまは、全然いなくてまいっちゃうよ」と笑いながら話してくれるが、どこか寂しそうな気がする。
おじちゃん曰く、この晴見町商店街は府中市の商店街の中では一番大きく、地域の活性化のために市も力を入れていた場所とのこと。しかし新型コロナの影響で軒並みお店が閉まり、70店舗ほどあったお店が約30店舗までになってしまった。それと店主の高年齢化も重なり、次々とお店がしまっているみたいだ。
「、、、ほんとに寂しくてしかたがない」
お店の前の空きスペースになっている場所を見て、ため息混じりにつぶやくオジちゃんの言葉。そう言ったオジちゃんの顔は寂しい気持ちになることが慣れてしまったような表情をしていた。
「何とかしたいなぁ」
そんな気持ちが自然と生まれてきた。
僕自身は商売をしたことがなく、モノの売り買いや店舗を構えての経営はまったく無知である。ビジネス感覚はほぼないため、店舗を構えてもすぐに潰れてしまうと思う。だけど、何かできないかなぁと考えてしまう。
「自分にできることはなんだろう」
まったく関係のないと思っていた商店街だったけどオジちゃんと話しているいまはそんな気持ちになっていた。
僕はこの商店街と関わり始めてきている。
行動するのは怖いけど、でも、自分はオジちゃんと同じ時間を生きている。もう友達にもなっている。
「怖いけど、やってみよう」
オジちゃんと話し終えて、家へ帰り際に出た言葉だった。
もう心は動き始めている。
ビビリの心だけど、やってみよう。
はー、こわい。
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