Empty vessels make the most sound

Facebook などでつながっている知人が設定するプロフィールに、たまに驚かされる事があります。

転職に伴う栄転とかなら色々喜ばしいのですが、結構多いのが「お前その会社で絶対そんなポジションについてないだろ」というケース。

ある人は、とある会社在籍時の肩書として「プロダクトマネージャー」と書いてました。いやちょっとまてよと。お前は俺より後に入社して先に辞めていったけど、一度もその肩書で会社で呼ばれたのを聞いたことが無いぞ、と。「プロダクト責任者」どころか「マネージャー」と呼ばれてたのも聞いたことがないぞ。そもそもお前はある部門の2人しか居ないチームにいて、もう一人が控えめな性格だったからなんとなくリーダーっぽい振る舞いをしてただけだろう、と。

FacebookやTwitter、LinkedInなどの肩書は、履歴書とは異なり、たとえ事実と異なっていても、経歴を詐称していても、誰も咎める術はないでしょうし法的な拘束力もないでしょう。もちろんものすごく耳目を集めるような人はあら捜しされるでしょうが、一般的な社会人の経歴なんてほとんどの人は気にしないでしょう。

ということで、「やりたい放題」「言ったもの勝ち」になっているのが現実だと思います。もちろん多くの良識的な人は等身大な振る舞いをしますが、一部の自己顕示欲の強い人が自分のプロフィールを好き勝手喧伝するのをよく目にします。そしてそういう人の方が目立ってしまう現実もあります。

SNSで目立ちたいだけなら温かい目で見守っても良いですが、実際に採用プロセスにそういう人が流れてくると扱いが面倒です。遭遇した、見聞きした事のある人の類型を雑に挙げてみます。

ポジションを騙る人

先の自称「プロダクトマネージャー」のように、会社の中で実際は違うポジション、責任の無いポジションにいたのに、あたかも重要なポジションについていたかのように語る人。

世間的な知名度が高かったり、技術者にリスペクトされている会社に属した事がある人に、こういうタイプが多いような気がします。

特に多いパターンが

・会社が小さいころに入社した人

・属していた会社が有名な会社に買収された人

などで、今想像する会社のイメージとはだいぶかけ離れた状況で会社にうまく転がりこんだ人が、そのイメージに嵩を借りて「自分はこの会社で極めてう重要なポジションにいた」と喧伝することかな、と思います。

こういう人は、面接の場とかで、そのポジションに居たなら必ず経験しているような経験談や思索について深掘りして聞くと、たいていの人がボロを出します。

技術を騙る人

ちょっと技術を触った事があるだけなのに、仕事で使いこなしていたとか、その道のプロフェッショナルであると自称する人も多いです。

Hadoop を触る部署で、Hiveのクエリーをちょっと触っていただけなのに「ビッグデータのプロフェッショナル」、たまたまちょっと前まで賑やかだった暗号通貨のプロジェクトで雑用をしてただけなのに「Cryptocurrencyに一定の知見がある」、AWSをコンソールからしか操作できないし他の方法を知らないのに「クラウドSRE」、等々。DockerをローカルPCで立ち上げた経験がある程度なのに「Kubernetesの専門家」みたいな顔をしている人もいました。

エンジニア界隈では、優秀な人ほど謙遜して語り、そうでない人ほど自分を過大評価しがちであることは、皆が知っているくらい敷衍して語られています。

なので面接時にも警戒はされますし、技術的な深掘りをしてしまえばたいていにおいてボロが出ます。

しかし属していた会社が有名な会社だったりするとその御威光で目がくらみ、その人の実力を見誤る事も結構ありがちなので注意が必要です。

経歴を盛る人

面接というよりTwitterなどでよく見かけるのですが、世の中で何かニュースなどが流れたときに、自分が達成したことでないのにあたかも「自分の仕事」のように騙る人もよく見かけます。

元同僚がテレビに出演したりすると「この人とは隣の席でいつも色々雑談した云々」と距離の近さをアピールしたり、元同僚がサービスを開始すると「このサービス面白そう」とだけ言っておけば良いものを「元同僚の○○さんがまたやりました」的な書き方をしたり。

面接の場においては、同じ会社にいてたまたま噂話程度に聞いたプロジェクトの状況を、あたかも自分がやったかのように騙る、というケースが多いです。

いずれも、その人の力を証明するものでもないし、その人とは関係ない人たちの能力であったり才能であったり努力が証明されているだけです。なのに交流関係や在籍した会社の箔を使って我田引水をして自分を盛るような印象操作をする人も世の中には多いなと感じます。

防御方法:面接ではちゃんと深掘りして聞きましょう

たいてい、騙っているだけの人は、深く突っ込むとボロがでます。意外とそのあたり前のプロセスを経ないで書類だけで判断したりするから、上記のような人を面接でふるい落とせないだけ、というケースも多い気がします。

「コードテストを導入してます」みたいな形でプロセスで対応しようとする会社も多いですが、プロセスが形骸化してしまうと結局見逃してしまうので、ちゃんと現場担当者や人事の方が疑問に思ったことを深く聞くプロセスを用意した方が良いと思います。

なお、深掘りできないのは、面接する側も、詳しくなくて能力が足りないから、という可能性も多分にしてあります。面接する技術、人を判断する技術もスキルの一つです。自分たちに確固たる信念もそれを実現するスキルもない組織は、そこそこの人材しか結局採れないと覚悟しておいた方が良いかもしれません。

防御方法:欲しい人材の定義をはっきりしましょう

最近以下のTwitterが話題になってました。

僕はここで挙げられた件の人が能力が無い人とは思えません。これを見て僕が思ったのは、「実際にプログラムコードが書けなくても技術について詳しくて適切に語れる能力があるということで、そういう人を求めている職場なら問題ない」だろうということです。

単純に、手を動かしてくれる人がほしい会社と、その人の能力のFit & Gap が異なるだけ、という状況で、詐欺という言葉を使うのは強すぎるな、と感じます。

上述の「騙る人」も、カッティングエッジな中身のある技術者を求める上ではノイズになりますが、中小企業とかにおいては良い技術営業職のスキルとして成立する可能性もあり、すべてが駄目というわけではないと思います。

近年は多くのスタートアップ中心に JD (Job Description) をきちんと細かく定義する会社も増えてきていますし、どんな人材がほしいのかをはっきり明文化するのもとても大事だと思います。それにより、応募する側も、採用する側の面接担当の方も、判断の基準がクリアになっていきます。

防御方法:バックグラウンドスクリーニング

自分を騙ったり盛る人を、なかなか人事や担当の面接官だけでは見破れないこともあると思います。

その一つの抑止策として、バックグラウンドスクリーニングがあるかなと思います。

ちょまどさんがマイクロソフトに入社する前に1ヶ月間のバックグラウンドスクリーニングをされた、とお話してました。これは、面接を通過した人に対して、その人が経歴書で書いた内容に相違が無いかを確認するプロセスです。

私も以前マイクロソフト社の内定をいただいた事があり、人事の方に1〜2ヶ月ほどのバックグラウンドスクリーニングを実施する旨を伝えられました。「面接で嘘をついてないのであれば何も心配することはありません(ニッコリ」と語られたのが印象的でした。なお内定は諸般事情で辞退しました。

実際のところ実施するには会社にそれなりの体力が必要ですが、バックオフィスに余裕がある組織であれば、このようなバックグラウンドスクリーニングという手法はある程度有効でもあり、面接応募者への心理的なプレッシャーにもなると思います。

まとめにかえて

日本のIT企業は狭い世界で、転職先に同僚がいた、みたいな事も結構あると思います。

なので、経歴を騙ったた人が面接にやってきても、意外とそれを嘘と見抜ける人がいたりすることもあります。

個人としては、日々誠実に人と接し、まじめに目の前の課題をクリアするために全力を尽くし、コツコツと積み重ねていく事が結果的に自分のプロフィールを充実させることだと思います。嘘をついたり騙ってもいずれバレます。面接は通過しても業務に入るとどうせバレます。

逆の視点で、真面目にコツコツ働いていると、そのことを知ってる元同僚が在籍してる会社に面接応募した際に、経歴書や面接の場で表現できなかったりアピールできなかったけれど元同僚の人に「この人は絶対おすすめです」と後押しされることもあったりします。

だからこそ、日々慎ましく真面目に働くことが、一番のリスクヘッジでもあるし、得る収穫の多い福利的な行為だと思います。

自己顕示欲はわかりますが、騙ったり盛るのは程々に。





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