IT業界の人が中国出張の前に用意しておきたいこと

最近はものづくりだけでなく、AliPay/WeChat Payなどを中心としたキャッシュレス化の普及速度が凄まじい中国。IT業界関係者の方々も視察などに訪れることも多いのではないでしょうか。

とはいえ中国は、ニュースなどでよく言われているように、我々が知っているインターネットの世界と異なるインターネット空間が広がっています。事前に準備して訪れた方が実りある旅になると思い、このような記事を書きます。

TL;DR

WeChatは必ずインストールして、何かしらの手段でWeChat Payにお金をチャージして出かけましょう。できればAliPayも。

中国携帯キャリアのSIMも用意できると使用できるサービスが格段に増えるので、可能であれば用意しましょう。

現地では英語も日本語も基本的には通じないので、そのつもりでいましょう。もしくは中国語を勉強しておきましょう。

必須:スマートフォン(iOS、Android)

持ってない人は少ないと思いますが、一応。中国のIT関係のイノベーションはほぼすべてスマートフォンを前提としているため、必要です。

中国のSIMを差した方が利便性が大幅に増すので、スマートフォンはSIMフリー端末であることが望ましいです。

必須:WeChatのインストール

今更説明不要な感じもします。中国におけるLINE、という紹介をされることもありましたが、WeChatはチャットを超越したアプリケーションプラットフォームとして現在は中華圏では圧倒的な存在感を持っています。

中国人の方々とのコミュニケーションにも用いますし、様々なサービスのアクティベーションをWeChat経由で行うことも多いため、必ず入れておきましょう。

技術カンファレンスなどでは、イベントの公式アカウントがイベントの実況、資料の共有など様々な事を行ってくれますので、そういう意味でもインストールは必須です。

もちろん、WeChat Payで決済をしたい場合も必須です。

必須:WeChat Payへのチャージ

中国でキャッシュレス決済を行いたいのであれば必須です。WeChatのアプリをインストールした上で、以下のブログなどを参考にアクティベーションしましょう。中国の銀行口座が基本的には求められるのですが、アクティベーションまでであれば国際ブランドのクレジットカードがあれば行うことができます。

後述のAliPayは中国在住の方の協力を得られないと独力ではチャージまで行いづらいですが、WeChat Payはポケットチェンジを使用して日本国内に居ながらチャージすることもできます。

とはいえ、中国の銀行口座や、証明証などの登録が十分でない段階では、1000元までしかチャージできないことを留意しておいてください。

必須:百度地図

あると便利なアプリはあとでまとめて紹介しますが、その中でも絶対に入れておいた方が良いのが百度(バイドゥ)の地図アプリです。

中国ではグレートファイアウォールでGoogleの多くのサービスがブロックされているため正規の手段ではGoogle Mapが使えません。VPNなどを用いてGoogle Mapが使える環境だとしても、百度地図は中国に最適化されているため、乗り換え案内や、交通状況の把握、建物内のフロアごとの見取り図など情報が遥かに詳細です。地図からdidiを用いてタクシーをダイレクトに呼べたりもしますので、百度地図だけは必ず入れておいた方が便利です。

あると便利:Alipayへのチャージ

多くのサービスはWeChat Pay も AliPay も対応していることが多いためWeChat Payが使えるようになれば最低限中国のキャッシュレスの雰囲気は味わえます。もちろんAliPayしか対応していない事もあるため、手元にあると便利なのは間違いありません。

現状、AliPayについては中国の銀行口座が無い限りアクティベーションはできても独力ではチャージができないように見えるため、中国在住の知り合いが居ないとAliPayを使えるところまではたどり着けない可能性があります。

もちろんあるに越したことは無いので、チャージできる環境が確保できるのであればチャージをしておきましょう。

あると便利:VPN対応したWifiルーター

よく知られているように、中国ではグレートファイアウォールが存在し、日本で使用できる多くのサービスが中国では使用できない、という状況が発生します。代表的なところだとGmailなどのGoogle製品、Twitter、Facebook、LINE、Slackなど。

グレートファイアウォールでブロックされているサービスについては、以下のサイトからも確認できます。

GoogleやTwitter、Facebookなどについては、そのサービスが使えないだけでなく、OAuth認証なども使用できないため、多くのサービスにログイン不可能になってしまいます。

あまりに影響が大きいため、日本国内に居る時と同程度の環境を維持したいのであれば、VPN環境を独自に用意する必要があります。

最近は、WifiルーターでもVPN対応モデルがいくつか出てきていますので、保険として日本出国時に用意しておくのが無難です。

あると便利:中国の携帯キャリアのSIM

中国の最近のスマフォアプリの多くは、携帯電話番号を用いたSMS認証によりユーザー登録を行います。

WeChatやAliPay、シェアサイクルのMobikeなど海外展開しているサービスについては日本を含む世界各国の電話番号でもSMS認証を行えますが、中国の多くのサービスは「中国国内の電話番号」でしかSMS認証が行えません。

そのため、中国の携帯キャリアのSIMについては入手可能であればしておいたほうが、使用できるサービスが増えて便利です。

電話番号があれば良いので、中国向けのレンタル携帯を使って同じ目的を達成できるかもしれませんが、こちらは私は試した事が無いのでわかりません。



以下では、入れておくと便利なアプリを列挙していきます。

便利アプリ:百度地図

上述のとおりです。中国ではGoogle Mapが使えないので必ず入れておきましょう。

便利アプリ:didi

中国版Uberとして有名です。最近は日本の旧態然としたタクシー業界を尻目に日本市場への進出も加速しています。

中国では行き先を運転手に伝えるのはだいぶ酷な作業です。語学力があっても相手が場所を知らないことも多いのでなかなか難儀します。didiを使えば目的地をあらかじめ伝えられるので、その意味だけでも便利です。

便利アプリ:Mobike

「中国の新4大発明」の一つとして一時期もてはやされていた、シェアサイクルサービスの大手です。最近はサービスの運用コストの高さやプライバシーの問題からマネタイズが難しいのではと言われ始め、ビジネスとしては岐路に立っています。Mobikeは2018年に美团に買収されましたし、Mobikeと並ぶシェアサイクルの巨人Ofoは倒産の危機に瀕していると噂されており、街中に置かれている自転車のメンテナンス状況がひどいです(まともに乗れる自転車を探すのが難しい)。

とはいえ、スマフォで解錠して、目的地に着いたら乗り捨てられる体験は非常に気持ち良いので、アプリとしてはぜひ入れておくべきです。

なお、中国の道路は日本と異なり右側通行で、自転車も道路の右側の路肩側を走ることになりますので注意してください。そして日本と異なり、歩道を自転車で走るような人はまず居ませんのでこちらも注意してください。

便利アプリ:饿了么 / 美团

中国では「外卖」と呼ばれているジャンルの、日本で言う「出前館」のようなケータリングサービスです。美团は映画や列車のチケットなども取り扱ったりと饿了么よりもかなり幅広いサービスを提供していますが、ここでは「外卖」のサービスとして一括りにしておきます。

非常に豊富なメニューと、びっくりするくらい早く届けてくれるデリバリー能力の高さが売りです。街中でもひっきりなしに饿了么と美团の配達バイクを見かけるくらい、広く普及しています。

ホテルとかに居る際、外に出かけたくないけど作りたての料理を食べたいときには本当に重宝します。

ただし、基本的には中国キャリアのSIMを用意する必要がありますし、配達員とは中国語でコミュニケーションをすることが求められます。

便利アプリ:盒马鲜生 ほか、O2O系のアプリ

盒马鲜生は、店舗から半径5km以内であればアプリで注文すれば30分以内で配送してくれる事で有名になった、アリババが近年力を入れていてO2O分野で注目されているスーパーマーケットです。

オンラインで注文もできますし、直接店舗に行って品物に触れて見て購入することもできますが、基本的に購入時には盒马鲜生のアプリが必要です。

店舗に行ってからあわててアプリをインストールするのは結構時間を取りますので、視察目的などで興味がある場合は事前にインストールしておくのをおすすめします。なお盒马鲜生はAliPayとの連携が必須なため、AliPayへのチャージもあわせて何かしらの手段で行っておく必要があります。

盒马鲜生以外にも、Auchan(欧尚)などのスーパーや、简24などの無人コンビニ(无人便利店/无人超市)や、ケンタッキーやマクドナルドの自助点餐(セルフ注文)機能など、実店舗でアプリを使って商品の購入を行うことができるサービスが中国では増えてきています。これらのお店でアプリを使って商品を買いたい場合は、事前にアプリを入れておくことをおすすめします。

なお、個人認証の際に必ず中国携帯キャリアの電話番号が必要になりますので、ご注意を。


さらに一歩進みたい場合

上記のような準備をして、中国に訪れ、実際に中国のスマフォを中心とした数々のサービス・イノベーションを味わうと、誰しも「もっと色々試したい」と思うはずです。

そう思った人が、もう一歩前に進むために必要そうな事をいくつか書きます。

中国語の勉強

当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、中国では多くの場所で中国語しか通じません。たとえスマートフォン中心でできることが広がっても、アプリに書かれている中国語が理解できないとサービスを使いこなすこともできませんし、対面で中国語でのコミュニケーションが必要な場も多いです。

なので、中国語の読み書き、会話の勉強は、中国事情を詳しく知ろうと思ったり、より多くのサービスを体験してみようと思った時に、絶対避けて通れない道だと思います。

中国のIT事情に詳しくなる

中国の近年のイノベーションは加速度的で、毎日のように新しい話題が生まれては消えていきます。

日本のメディアの中国に関する記事は、情報が遅いですし、事実とはかけ離れたような「釣り記事」のようなものも多く見かけます。最近話題になったものとしては以下。

情報の新鮮さや正確さなどを考えると、やはり中国のニュースアプリ用いて、中国語で読むのが一番良いように思えます。とはいえ中国語の習得にはそれなりに時間がかかります。

最近、「36氪」というテックニュースサイトが日本語記事の配信をはじめました。こちらなどを参考にすると比較的手軽に最新の中国テックニュースを読むことができるので、個人的にはオススメです。

もちろん中国語がある程度読めるのであれば、今日头条(TikTokで有名なBytedance社のニュースアプリ)などを用いて中国語でニュースを読むのが一番情報を速く手にれられると思います。


中国での銀行口座の開設

銀行口座が無いと、WeChat Payも1000元までしかチャージできないなどの大きな制約があるため、こちらを解消するためには銀行口座の開設が必要です。

むかしはかなり緩かったようですが、最近はかなり規制が強化されているという情報も見かけます。以下のようにビザなしでも開設できたという情報もあります。いずれにせよ窓口で申請が必要なため、それなりの中国語の能力が必要になります。

ちなみに、こちらについては正直私も未だ実施できてないので、次の長期出張の際にはぜひトライしたいと思っています。

中国人の知り合いを増やす

中国では、列車の切符を購入する際に基本的にIDカードが必要になるなど、中国国民としての身分証明証が無いと行えない事が多いです。中国人と外国人で、行えることの差が大きい国である、という印象があります。

そういう意味も込めて、最終的に困ったときに手助けをお願いできるよう、中国人の知り合いを増やしておくことも大事だと思います。



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