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漫画家専業になって半年

漫画家専業になってから、半年が経過しました。

私は8歳のときから「漫画家になりたい」という夢を持っていたので、今は本当に幸せな毎日です。
本当にここまで、時間がかかりました。
夢を叶えるのは難しいですが、夢を叶え続けるのはさらに厳しいことだと思います。

現時点の自分の課題は何か、読者の皆様や私の仕事に関わってくださる原作者様、編集部の皆様、アシスタントの方にもご満足いただける仕事ができているのかを常に考えて、よりよい作品作りを目指していきたいと思います。

そんなわけで、このあたりで一度、自分の遍歴を振り返ってみようかなと思いました。

投稿時代

思い起こせば、私は学生時代から投稿活動をしていました。何作も何作も投稿して、結局、最初にいただいた奨励賞より上の賞を取ることなく大学卒業を迎えました。

さらっと書きましたが、この何作も日の目を見ることなく作品を投稿していた間は、永遠のように長く感じられました。
次こそは何か変わるかも、次こそは、と思いながら挑戦し続けて、せめてひとつでも上の賞が取れれば成果も感じられたかもしれませんが、最後まで何一つ結果は変わりませんでした。

また、当時はアナログ原稿での投稿でしたが、編集者に対して原稿返却を毎回希望していたにも関わらず、返却された原稿は最初の2作のみで、残りの作品は現在も未返却のため、「ほかの編集部に持ち込む」「同人誌として発表する」ということはありませんでした。(もはや、返さないで! 忘れて! って感じですが。笑)

就職活動時代

その後、新卒での就職に失敗し、卒業後はしばらくニートでした。(すぐにバイトを始めましたが)
とにかくお金が無かった!

同級生たちは新入社員として、毎月お給料をもらいながらどんどん前に進んでいくのに、私はいつまで毎日家で履歴書を書いているんだろう? この差はどこで生まれたのだろう? と思うと、とても惨めで苦しかった覚えがあります。
当時は、私は社会の誰からも必要とされていないんだ、漫画なんか描いていたからこんなことになったんだ、私の漫画も努力もすべて無駄だったんだ、と思っていました。

とにかく仕事もお金もないのが大変で、実家のおかげで住むところだけはありましたが、そのあともブラック企業に入って2か月無給で働いたり、もはや出勤する交通費すらないから親に借金したりといろいろありました。
でも、そこから半年も経つ頃にはなんとか会社員になることができました。

システムエンジニア勤務+同人活動時代

親にお金を返して、システムエンジニアとして働きながら漫画を描く新しい生活がスタートしました。

数年間は、会社のかたわら同人活動ばかりしていました。
とにかくこの頃は漫画を描けるだけで、仕事があるだけで嬉しくて、好きなゲームの同人誌を出しまくっていました。
二次創作ばかりしていないで、一次創作もしたいなぁとは思いつつ、毎日は忙しく過ぎていきました。

そのうちに、「あれ、私編集者になったほうがいいのかも? だって、本を作ることがすごく好きだ!」と思うようになり、転職してゲーム関連の書籍制作会社に転がり込みました。
もはや転職活動もお手の物です。こちとら最初の就職までに100社以上受けとるんじゃという感じです。

書籍制作会社勤務+同人時代

とはいえ、準社員での採用だったため、ここから正社員に這い上がるまでもじつは3年半かかっています。
編集者の世界も実力主義で、後輩がどんどん私より先に昇格していくし、何なら最終的には後輩が上司をやっていました。

理不尽だと感じることもたくさんあったのですが、それが世の中というものです。その理不尽さやトラブルをどう受け止めてクリアしていくかが問われているのだと、少しずつわかるようになっていきました。
「世の中が悪い」「他人が悪い」と思っているうちは、一歩も前に進めないのだと。
もっとしなやかに。もっと他者に感謝と敬意を。
他者に喜ばれる仕事を、もっと他者に認められる仕事を。

社会の一員として仕事をする以上、その社会を愛することも大切だと思うようになりました。拗ねていてもかわいくないですしね。
何より、一緒に働いている人たちといい仕事をするためには、信頼関係を築くことが大切です。

ゲーム関連の制作会社ということで、そこでは様々な出会いがありました。
第一線で活躍するクリエイター、プロデューサー、タレントさんにインタビューしたり、取材させていただく機会もたくさんありました。その全てが刺激になりました。

一冊の本ができるまでに、どれほど多くの工程があるのか、どれほど多くの課題をクリアしなくてはいけないのか、いくらお金がかかって、いくら得なければ赤字になるのか、制作にかかわった人員をどのようにディレクションしていくか、完成品のクオリティをどのように担保するのか、読者や顧客の満足度をどう受け止め、次につなげるか。
私はこの会社に入っていなかったら、今でも漫画家にはなっていないかもしれません。

兼業作家時代

平行して、同人活動は相変わらず続けていたのですが、少しずつ軸を二次創作ではなくオリジナルに移していきました。作品を作って持ち込みに行ったり、気になる編集部に送ってみたり。

その過程で、ありがたいことに「モモチップスと仕事をしたい」と声をかけてくださった編集者の方は何人もいらっしゃいました。

そのなかで実際に仕事をさせてくださったのは、西東社の児童書シリーズや宙出版(当時)の少女漫画アプリ「ネクストF」でした。
私の商業デビューは、2016年12月発行の『ミラクルきょうふ!本当に怖いストーリー永遠の呪縛』と言ってよいのではないかと思います。オリジナルの読み切りでは2019年「ネクストF」に掲載された『ラブリーワーカホリック』になるでしょう。

しかし、編集者としての激務と漫画家業を並行することがとにかく難しく、スケジューリングに苦労したり、自分の原稿のクオリティに満足できなかったりと、いろいろな課題がありました。
しっかりと言うべきことは言う、必要なスケジュールが確保されていない仕事は安易に受けない。そして受けた仕事は、全力をもって責任を果たさなくてはなりません。

コミカライズ作家志望時代

「ネクストF」での読み切りが連載に繋がらないことを悩む一方、時を同じくする2019年頃から私はライトノベルに心奪われて、「ライトノベルのコミカライズ作家になりたい!」と思うようになりました。
早々に大好きな『本好きの下剋上』(TOブックス)の公式アンソロジーに寄稿することが叶ったのは本当に幸運でした。

また、アンソロジーという形式上、多くの作家と並んで掲載されることになるので、読者からも編集者からもほかの作家の作品と比較されることになるということは理解していました。そこでの鑑賞に耐え得る作品を作らないと、次のチャンスは来ない。
大好きな作品の公式アンソロジーに漫画を描く以上、自分の限界を越えなければいけない、という気持ちで描き上げました。
光栄なことに、このアンソロジーの仕事には4巻から継続的に7巻まで参加させていただくことが叶いました。

一方で、なかなか切望していたコミカライズの仕事には発展させることができないうちに、1年以上が経過してしまいました。
待っていても仕方がない! 日々情報収集し、コミカライズ作家を募集している編集部に原稿を送ってみました。
そこでやっと声をかけてくださったのが、現在の担当編集者((株)コンパス)です。

最初は、じつは男性向けのバトルアクション原作のコミカライズ作家の募集だったので、私には適性がないということで落選だったのですが、改めて「女性向けのコミカライズに挑戦してみませんか?」という話でお声がけいただきました。

連載準備、専業へ

連載準備を進めることになって、話は順調に進んでいったものの、今度は編集者として会社勤務をしながら連載原稿を上げる生活に限界がきました。

その頃、苦心のすえ正社員としてディレクターに昇格し、ずっと任せてほしかった案件が担当できるようになって2年ほどが経過していました。
やっと仕事が楽しくなってきたところなのに、今辞めてしまうのはもったいない。正直、連載が今後どうなるかもわからない。

でも、決めました。
私は会社を辞めて漫画家になる。

何年も、それこそ20年以上も、子供の頃からずっとそこを目指して走ってきました。
やっとそのときがきたのだ、と思いました。

これまでやってきたことのすべてが、何も無駄じゃない。これまで積み重ねてきたネーム、画面づくり、作品づくりへの研究と工夫、磨いてきた技術、勉強してきたこと、経験してきたこと、仕事への取り組み。
22歳のとき、漫画なんか描いても無駄なんだ、自分は誰にも必要とされていないんだと感じていた自分に、今は「無駄じゃないよ」と伝えたいです。
途中の回り道だと思えることも、自分に欠けたパーツを探している途中も楽しもう。

これから

これからも、私はずっと努力をして、自分の夢を愛する強さを持ち続けたいです。

漫画というすばらしい文化を積み上げていくひとつの石になる日まで、己を磨いていきたい。
私を支えてくださる多くの方、見守ってくださる方、期待したり応援してくださる皆さんに、恩返しできるような仕事をしたい。

皆さんの人生もすべてがすばらしいといえる作品を作れる作家になるまで、この先も、たとえ何十年でも、努力し続けたいと思います。

見ていてください。


2022年仕事履歴

『悪役令嬢がポンコツすぎて、王子と婚約破棄に至りません』連載中です


『ミラクルきょうふ! 本当に怖いストーリーDX 珊瑚』発売中です
(漫画一編寄稿しました)


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