今後の戦略

最近の市場の話題は「インフレ」から「景気 減速・景気後退」にシフトしている。
債券市場では期待インフレ率と名目金利にピ ークアウト感がみられ、株式市場ではディフェンシブ業種が優位となっている。
また、景気後退を懸念しているのは金融市場だけでない。コンファレンスボードの最 新の調査によると、68%ものCEO(最高経営責任者)が景気後退を予想していると いう。
幾つかの指標は、米景気がこの先、拡大から縮小に転じる可能性を示している。ISM製造業景況指数とS&P500の前年比騰落率は歴史的にみて連動性が高く 、仮にISM製造業景況指数が50を割り込むとすれば(なおかつ今回は 2020年のように財政・金融政策の支援が見込めないこともあり)、S&P500は前年比で低調に推移すると考えるのが自然である。
現状、既にS&P500は前年比マイナス 圏で推移しており、株式市場は米景気の失速~縮小を部分的に織り込んでいると いえる。
この先、ISMが実際に50割れとなるのか、その時期や深さはどうか、といっ たことは定かでないが、米景気が減速していくという方向性自体は確度が高いもの である。
一方、今回は景気が落ち込むにしても深刻化・長期化しない可能性がある。先 ほどのコンファレンスボードの調査では、経済のハードランディング(急激な失速) を予想するCEOは11%に留まっており、残りの人々は「非常に短く、緩やかな」景 気後退を予想している。たしかに、現在は米国の企業も家計もバランスシートは健 全であり、銀行の資本水準や質が向上しており、住宅バブルのような時期に比べ ると、是正されるべき大きな経済的不均衡は存在しないようにみえる。投資家は、 深刻な不況を想定して過度にリスク回避的になるよりは、景気が減速する局面で の守りの戦略を意識しつつ、中期的な視点でその先に米国経済が何とか乗り切る 可能性も考慮する、というのが妥当に思える。
投資戦略
現在の極端に弱気な投資家心理やインフレのピークア ウト等を背景に、中期的には相場を前向きにみているが、当分は下方リスクを意識 した守りの戦略が重要と考えている。コスト圧力が高止まりする中で景気減速懸念 が強まる局面のもと、インフレに対処する力のある高利益率(高ブランド力)銘柄や、安定成長銘柄は相対的に優位に推移する見通しである。ただし中期的には、 特に実質金利のピークアウト感が鮮明となる場合、株価バリュエーションが割高で はないグロース株へと物色が広がっていくと想定している。

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