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Mの法則(競馬理論) 用語集

<Mの法則>

 20世紀末に登場した、サラブレッドの心身状態を分析した理論。サラブレッドは競馬という閉じられたシステムで走っている為(中央競馬の場合なら、更にその中のJRAというシステム)、人間以上に強いストレスを抱えて走っている。そのストレスが強いと凡走するというのが基本概念。ストレスがどのように発生し、そしてストレスからどのようにしたら解放されるのかのメカニズムを、馬のタイプに応じて分析している。

<ストレス>

 接戦後や、自分と同路線の馬が多くいるレースに出走すると溜まりやすい。人間同様、競走馬もストレスが溜まれば体調もよくなく、走れなくなる。同レベルの相手に極端な脚質で連対した場合や、同じ路線の相手と接戦したりするとストレスはきつく残る。ストレスは鮮度を得ると緩和される。ストレスには、レース間隔の短い直近のストレスなどの短期ストレス、ここ数戦に渡る中期ストレス、生涯において影響する長期ストレスとがある。ストレスはダートや短距離、若い時期においては影響が少ない。また超高速や極端な道悪、超スローなど特殊レースの方が単純ストレスは影響しにくくなる。

<鮮度>

 馬の状態がフレッシュであること。休み明けや条件替わり(距離路線、中央⇔海外、中央⇔地方、芝⇔ダート、牝馬限定戦⇔混合戦、3歳限定戦⇔古馬混合戦など、中央所属の馬なら自分の走っているJRAにおけるカテゴリーと異なるレース)、メンバー替わり、格上げ戦などを走ったり、位置取りショックなどのショックを掛けることや凡走などで、一時的に鮮度は上がる。競走生涯でその条件、クラスの経験が少ない馬を、「生涯鮮度が高い」などと表現する。同じオープンでも、OP特別と重賞はカテゴリーが異なり、重賞でもGⅠはGⅡやGⅢとはカテゴリーが異なる。例えば重賞経験が豊富でも初GⅠの場合は、「GⅠ鮮度が高い」とされる。

<カテゴリーストレス>

 同じカテゴリーで出走し続けていると溜まるストレスを特別に「カテゴリーストレス」と呼ぶ。好走が多かったり、出走期間が詰まっていると余計に溜まりやすい。カテゴリーの移動を、「ステージの変化」と表現することもある。

<M3タイプ>

 競走馬の心身構造をS(闘争心)・C(集中力)・L(淡泊さ)の3つに分類したもの。LC(S)などと詳細に表されるが、その先頭がその馬の主な心身構造(カッコ内の先頭は影の主導)となる。タイプのカッコ内は、その馬の影の性質となり、時に表の性質より前に出てくることもある。種牡馬のタイプ(指数やオプションも含む)は歳と共に多少変化することがある。複合タイプについては、別のページで解説する。
 
■S(闘争心)
 闘争心を持つ馬に付く。一本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に一度の絶頂期にはあらゆる条件を飛び越して走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す“Struggle”の頭文字から。

■L(淡泊さ)
 淡泊さを持つ馬に付く。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。Lの由来は軽さを表す“Light”の頭文字から。

■C(集中力)
 集中力を持つ馬に付く。集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質を持つ。レース間隔を詰めたり、馬体重を絞ったり、内枠、ハイペース、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は集中力を表す“Concentration”の頭文字から。

■M(まとまり系)
 S、C、Lの3要素を持っているタイプ。その為、精神的にしっかりしているが、突き抜けない部分もある。ただ、先頭に書いてあるタイプの比重がかなり強い馬もいる。そういう種牡馬、競走馬は、例えばSC(L)でSが極めて強い場合は、M系でもS系(あるいはS主導)と解説で表記することがある。


<量>

 その馬の気の良さを決める。つまり量が多いと延長に対応したり、惨敗から平気で巻き返したり、間隔を開けても好走できたりする。主にL系が持つ性質で、量のないL系は本当に弱い馬になるので注意だ。また体力とは違う。体力は文字通り体力で、量は苦しい状況を走り抜くというような効果は与えない。


<体力>

 体力があると、強引な競馬が出来るし重などのパワーのいる状況にも強くなる。ただ延長などの適性を上げるわけではなく、例えばハイペースのマイルなど、タフな状況での走りを助ける効果になる。M3のどのタイプにも存在し得る。


<リズム>

 競走馬にはタイプと時期によって、接戦を連続できる「集中状態」(C系)、煮え切らない着順を繰り返す「均衡状態」(まとまり系)、圧勝を続ける「連チャン期」(S系)、好凡走を繰り返す「交互」(L系)、やる気の失せた「停滞」などのリズムを持つ。なおカッコ内は嵌まりやすいタイプだが、生涯での時期によって、いろいろなリズムを横断するので注意だ。

■均衡
 3〜8着あたりを繰り返す状態。3着にはなるものの、2着には来にくい。打破するには内枠や少頭数、特殊馬場などの条件が必要。
■停滞
 走る気が萎えている状態。馬に走る気がなければ、どんなに馬体が出来ていても、よほど条件がよくない限り走れない。

<硬直>
 競走馬の心身構造が硬くなること。冬の寒い時期とくに硬くなりやすい。休み明けの激走や苦手な距離、強引なショックでの激走などの無理の「後」に起こる。ただし、合わない条件でも激走しなければ硬直化せず、むしろ次走にいいショック療法になるケースも。

<ウマゲノム指数>
 『ウマゲノム種牡馬辞典(ガイドワークス)』で採用されている指数。詳しくは辞典を参照のこと。「変わり身(巻き返し)指数」、「蓄積疲労耐久指数」、「高速上がり指数」、「ダートハイラップ指数」、「衝撃指数」、「ダッシュ再現値」、「GP」などがある。
 
<鮮度欲求率>
 鮮度の影響力。鮮度要求率の高い種牡馬は、鮮度が高いと好走しやすく、鮮度が落ちると凡走しやすくなる。血統によって、鮮度の影響度合いは変化する。詳しくは『ウマゲノム種牡馬辞典』参照のこと。

<ショック療法(位置取りショックなど)>

 馬に前走とは違う種類の刺激(距離変更や位置取り、馬場替わり)などを与えて、ストレス状態から解き放ち、激走させるもの。ただ劇薬なので、失敗すると逆効果で惨敗する。その馬のタイプにあったショックが必要になる。馬は前走より気持ちよく走ると好走し、辛く感じると凡走するので、その馬が気持ちよく走れるようにショックを掛けてやるのが基本。ショック成功後の反動も怖い。

■位置取りショック
 道中の位置取りを変えることで、馬に刺激を与えるMのショック療法のひとつ。前走先行から今回差し、あるいはその逆など。特に前走逃げられなかった馬が今回逃げるショックを、「逃げられなかった逃げ馬」と呼び、圧倒的な回収率を叩き出す。逃げ馬の回収率は競馬においてどの条件でもかなり高いが、その回収率を支えているのは、この「逃げられなかった逃げ馬」になる。馬は前走より気持ちよく走ると激走するので、前走と違って前に馬がいない先頭を走るという体験は、極めて効果的になるわけだ。前走逃げていた逃げ馬を買ったところで、回収率はほとんど上がらない。

■距離変更ショック
 前走より長い距離を走ることを延長、短い距離を走ることを短縮と言う。この2つを総称して距離変更ショックと呼ぶ。前走と同じ距離は同距離。

■ダートから芝
 Mのショック療法のひとつ。前走に砂の飛び散るダートを走らせ、今走走りやすい芝を走らせるというもの。前走の辛い経験から、芝で気持ちよく走らせることによって、激走をもたらすことを目的とする。超ハイペースや重などで決まりやすい。その逆の芝からダートもある。また、芝→ダート→芝とバウンド式を加えるとなお良い。

■バウンド式
 Mのショック療法のひとつ。2走前(ないし3走前)に今回と似たような条件を走らせ、馬に今回のショックに対し、慣れと安心感を与えることを狙いとしている。例えば、1200mに短縮ショックで向かわせたとする。そのときに予め1200mを経験させておくというものだ。つまり1200m→1400m→1200mのようなローテーションをいう。

<短縮ショッカー>

「前走で今走より長い距離を走っている」、「前走3角5番手以内の競馬」、「今走距離以下での連対歴あり」、「7ヶ月以内に今走が芝なら芝を、ダートならダートを走ったことがある」。これらの条件を満たした馬を「短縮ショッカー」と呼び、馬券界に旋風を巻き起こした作戦。簡単でありながら高い回収率を誇る。

<逆ショッカー>

 前走で3角5番手以降だった馬が、今回距離短縮で3角8番手以内を走る形。短縮ショッカー以上に簡単に導き出せて、JRAや南関で単勝回収率100円を超えたという、単純かつ破壊的な馬券術(詳しくは『短縮×逆ショッカー(ガイドワークス)』を参照のこと)。ペースが緩いレースや単調なレースの場合は、短縮ショッカーより効果的になる。

<グローバルリズム(GR)>
 競走馬がその生涯に通じて持つ、長期的な好凡走のリズム。血統によって、特徴的なグローバルリズムを持つ馬が多い。

<根幹距離>
 マイル(1600m)を中心とした、400mの倍数で構成される1200m、1600m、2000mなどのこと。日本のチャンピオンシップのほとんどが、この根幹距離で行われる。レベルの高いタフなレースでは総合的な強さを知る指針ともなるが、レベルの低いレースでは、むしろ最も走りやすく設定されている距離なので、揉まれ弱い、単調な馬に有利になりやすい。競馬用語だが、Mの法則が90年代にタイプ理論に本格的に組み入れた後、取り上げられる機会が一気に増えた。

<非根幹距離>
 1000m、1400m、1800m、2200mなど、400mの倍数ではない距離=根幹距離以外の距離のこと。根幹距離とは呼吸の仕方が異なる。精神力の弱い馬は非根幹距離の方が合う。また体力不足を誤魔化せる距離でもある。中でも1400mが一番軽いコース。

<活性化>
 馬がS質を刺激されている状態を、活性化されているという。活性化すると、忙しい流れやタフな展開に対応しやすくなる。速いペースや、積極的な騎乗、ダート、レベルの高いレースなどを走ると活性化される。活性化が弱いと、急なペースアップや一気の相手強化などに対応しにくくなる。

<オプション>

 競走馬は、前走の記憶やリズムを肉体に刻んでおり、同じ条件でも走ったり走らなかったりする。そこで走りやすいパターンを示したのがオプション。カッコ内はそのオプションの短縮表記。
 種牡馬毎のオプションと、現役馬個別のオプションがある。種牡馬のオプションは『ウマゲノム種牡馬辞典』に掲載されている。現役馬のオプションは、オープンで5着以内に入った段階で、毎週の「競馬GP」などの回顧に掲載されている(競馬王のウェブサイトにも掲載)。

■短縮(短)
 前走からの距離短縮を好むタイプ。C系(集中力)の馬に付きやすい。
■延長(延)
 前走からの距離延長を得意とするタイプに付く。L系につきやすい。

■内枠(内)
 内枠での競馬を好む馬に付く。
■中枠(中)
 内枠でも外枠でもなく、中盤の枠を好む馬に付く。
■外枠(外)
 外枠を好む馬に付く。主にM3タイプのL系(淡泊さ)の馬に付くことが多い。

■巻き返し(巻)
 惨敗からの巻き返し力のこと。

■広い馬場(広)
 京都や中山、新潟などの広い馬場向きの馬に付く。主に淡泊さを持つL系の馬に付くことが多い。

■特殊馬場(特)
 極端に速かったり、重かったり、硬かったり、通常と違う馬場を好む馬に付く。

■高速(高)
 摩擦のない高速馬場向きの馬に付く。

■硬い馬場(硬)
 開幕の高速芝やダートの不良馬場など、下の硬い馬場向き。

■重馬場(重)
 重馬場向き。

■多頭数(多)
 15頭程度以上の多頭数での競馬を好むタイプの馬に付く。M3タイプでC系(集中力)の馬に付くことが多い。
■少頭数(少)
 11頭程度までの少頭数での競馬を好む馬に付く。主にM3タイプのL系(淡泊さ)の馬に付きやすい。

■交互(交)
 好走と凡走を繰り返すタイプ。その馬によって違い、○×○×…というのが基本で、○××○×○○×…という純粋な交互ではないケースもあるので注意。

■斤量(斤)
 軽い斤量を好む馬に付く。

■坂(坂)
 坂のある中山や阪神などのコースに向いているタイプ。

■開く(開)、休(休)
 レース間隔を開け、リフレッシュするとよい馬に付く。特に3ヶ月以上間隔が開いた休み明けに強い馬には、「休」が付く。

■詰める(詰)
 レース間隔を詰めて使う方が良い馬に付く

■アップ(ア)
 自分より強い相手には頑張るタイプ。例えば、格上挑戦で激走するような馬。逆が「ダウン」。

■ダウン(ダ)
 ダウンを示す。アップの逆で、弱い相手には頑張るタイプ。淡泊さを持つL系の馬にその傾向がよく現れている。

■ダートから芝替わり(芝替)
 ダートから芝のショックの効果を表す。

■芝からダート替わり(ダ替)
 芝からダートのショックの効果を表す。


<単勝爆弾>

 人気馬が勝つ可能性が低いか、期待値が低いレースにおいて、他の勝つ可能性のある馬の単勝を何点か、絨毯爆撃のように買う戦法。パターンとしては、①上位人気馬4・5頭が全馬怪しいときに、人気薄の単勝を何点も買う。②人気馬の数頭が怪しく、買いたい馬が何頭かいる場合に、その何頭かの単勝を買う。③その日の馬場だけがわかっていて、人気馬がその馬場には向かないとき、その馬場に合う馬の単勝を何点か自動的に買うという3つが基本。

<馬体重>
 Mの馬体重理論はタイプとも密接に関わっている。それについてはまた項目を改めて別のところで解説する。


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