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鮮度馬3頭で決まった高松宮記念


 鮮度馬3頭で決まった高松宮記念
    -重と疲労の関係-

―― 4月中旬に新しい『ウマゲノム版種牡馬辞典(ガイドワークス)』が刊行されるので、それを記念して、noteにコラムを書くことになりました。ブログのようなものを書いたことがなかったので、長く続くか分かりませんが、ぼちぼちと更新するので気長に待っていてください。せっかくなので気が向いたら競馬以外にも、日々の話なんかも投稿しようかと思います――

(前半部分は3月31日の「Mの法則」HPから抜粋)
 今週は勝負レースの御堂筋Sで290倍の万馬券が3点目で当たり、重賞では毎日杯で本命が勝って馬単的中、日経賞も本命のウインマリリンが勝って馬単25.6倍、マーチSは馬連83倍と3レースで的中して好調だったが、昨年本命クリノガウディー1着失格のリベンジを狙った高松宮記念はワイドの的中という結末だった。
 その高松宮記念は、古馬1200m重賞が初めての2頭と、前走海外の休み明けという、「JRA古馬トップクラス1200mのカテゴリーストレス」がない3頭でそのまま決まり、M的には教科書的なレースとも言えるものだった。ただ、近年は上位人気馬がまともなステップではなくストレスの薄い裏ローテーションを組んできて、人気薄の方がストレスがきついというケースが多く、穴予想としては厳しいレースが増えたのもまた事実である。今回も、人気3頭が別路線でストレスが薄くM的に有利という、典型的なパターンになった。
 ストレス馬は結局全馬凡走で、例えばライトオンキューは、「内枠の道悪」自体は物理的にベストなタイプなので、ストレスで勝てないまでも上位には来るのでは?とも思えたが、あっさりと崩れてしまった。改めてストレスの恐ろしさを思い知らされる結末である。
 それと何とも後味が悪かったのが、昨年の高松宮記念で本命にしたクリノガウディーが同じ週の土曜にダート戦に出て、惨敗したことだった。昨年失格にならずにそのまま勝っていれば、大事に使われて今年もまず重の高松宮記念で勝ち負けだったろうが、使い込まれて疲労を溜めてどんどん心身が硬くなっていった。たった1つのレースで、その後の競走生活が変わってしまうというのを実感させられる結末であり、馬にはなんとも可哀想な話である。能力以上に、ステップが馬にとって如何に重要か?ということではあるのだが。

 

 道悪はストレス馬に有利で、疲労馬には不利なる

 高松宮記念は、極端な道悪と疲労の問題も提起したので、少し振り返ってみよう。
 ダノンスマッシュのロードカナロアは、今度の『ウマゲノム辞典』で上がりが掛かると急激に期待値の下がる種牡馬として紹介されている。レース上がりが36秒以下に落ちると、成績も急激に下降するタイプなのだ。今年は雨でもそれほど馬場が悪化せず、しかもスローに近かったから、レース上がりも道悪にしては速く、ロードカナロア産駒の得意な上がりゾーンに嵌まったというのが、物理的な好走理由だった。もっと重い馬場で、上がりが掛かっていれば危なかったろう。ただこの馬は、昨年も道悪だったとはいえ、同じようなスローの高速上がりという、ロードカナロア産駒の好きな上がりゾーンだったのに、惨敗していた。
 では、昨年と今年で何が違ったのだろうか?
 新聞を見れば誰でも分かることだが、昨年は前哨戦を勝っていたが、今回は休み明けというのが、最も大きな違いになる。M的には当たり前になるストレスの有無ということだが、ここにはもう少し深い、道悪についての問題もあったので、振り返ってみよう。
 道悪はばらけるので揉まれにくく、ストレスの影響も比較的受けにくくなる(馬体を併せるような激戦になるほど、ストレスの影響は出やすい)。ただ酷い道悪だと、ストレス面はクリア出来ても、単純な肉体疲労は出やすい。昨年のダノンスマッシュは直近の前哨戦オーシャンS勝ち後なので、心身疲労が相当きつい状態だった。そのため、苦手な道悪で疲労に対抗出来ず、レースを投げ出したのである。
 しかし今年は、海外(国内と違って同じ距離でも、「システムの外」に出るので海外はストレスがほぼ残らないというのがMの基本概念になる。単純疲労が残るケースは多いが、それは少し別の話になる)からの、しかも休み明けという、鮮度満載の状態だったので疲れがなく、道悪も昨年のように大きなマイナスには働かなかったのだ。物理的に酷い道悪は得意ではないので、もっと重い馬場になっていれば勝てなかったと思うが、上がり34秒前半で上がれる程度の馬場なら、疲労のあった昨年と違い、道悪が物理的なマイナスにはならないステップだったわけである。
 ちなみに先日の阪神大賞典のアリストテレスも、全く同じ現象だった。
 エピファネイア産駒も、酷い道悪はあまり好きではないのだが、鮮度が高いと我慢しやすい種牡馬になる。AJCCのときは、「初古馬重賞」で「休み明け」という鮮度状態だったので我慢して走れたわけだが、阪神大賞典は鮮度でAJCCを激走した直後のレースだったので、酷い道悪で疲労を我慢出来ずに投げ出したのだった。
 同じAJCCで3着だったラストドラフトも、AJCCはアルゼンチン共和国杯連対後だったが中10週開いていたので疲労が薄れていた。そのぶん、アルゼンチン共和国杯連対のストレスを馬群がばらける馬場のお陰で、なんとか我慢して3着に来られたというパターンになる(同馬は道悪が得意ということもあるが)。
 
 以上、極端な道悪とMの関係をまとめると、
「酷い道悪の場合は、ばらけるのでストレスの影響は受けにくくなるが、単純疲労の影響は出やすい」
 ということになる。ストレスと疲労の関係については、今後も折りを見て分析していきたいと思う。
 


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