少しだけ。

確かに過ごしてきた現実に

過去を知らない私たちは

ぽつんと

取り残された。

揺れない鼓膜は

揺らそうとする誰かの声に

安心しきっている。

毎日を繰り返して、

誕生日を迎えては

死んでいく。

発酵したバターは

ケースの中で溶けていた。

大好きなソーダが

黒く濁ったのは

確か昨年のこと。

抜けていく炭酸ガスは

わたしの胸と同じだったから

幸せを手放した。

過去の恋人のSNSを

確認した昨晩、

ざわついた胸に

涙が溢れたのを覚えている。

まぁ、

生きていこう。

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