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【感想】スリー・アゲーツ(五條瑛)

家族の在り方を考えさせられる物語。「鉱物シリーズ」の2作目です。
北朝鮮の工作員チョンと、北朝鮮と日本のふたつの家族。
結末は決してやさしくはないけれど、チョンの想いは確かに家族を生かし、チョンが主人公である葉山隆に残した情報が、また次の物語に繋がっていきます。

「家族」というキーワードは、隆さんのトラウマを思いきり刺激して、自分をひとり残して死んだ父親へのやり場のない気持ちが端々に顔を出します。
この父親の死の真相はいまだ闇の中で、鉱物シリーズの大きな謎です。

そんなうじうじした隆さんの姿が印象的な作中で好きなシーンは、
『プレイ・ボーイ』のグラビア批評を繰り広げる隆さんと冬樹さんへのエディの一言。
「そこまでだ。坊やたち(ボーイズ)」
パンッと手をたたいてそう言い、『プレイ・ボーイ』を取り上げて小脇に抱える。
隆さんと冬樹さんの年相応の男子っぽさと、部下をあたたかく(?)見守るエディがツボです。呆れた奴らめと言わんばかりの、ものすごくわざとらしい上から目線なんだろうなと。
冬樹さんとわちゃわちゃしている隆さんは、楽しそうで好きです。

現在、本作は小学館文庫で購入が可能です。
ただ、できれば、なんとか「プラチナ・ビーズ」を入手いただき、いっしょに読んでください。その方が絶対に楽しめると思います。

(2020/3/17追記)
「うじうじした隆さんの姿が印象的」って一体どんなアピール?と自分で思ったので追記。
隆さんがうじうじしているのは、まぁわりとデフォルトなのですが。
そのわりに仕事でこれと思ったことには迷わないし、上司への内心の暴言はどんどんひどくなるし(口にはださないけど絶対バレてると思う)、女性には押しが弱いのに男性には遠慮なく塩対応だったりする。そんな隆さんをにやにや楽しむのもよいと思います。