全感覚祭2019 OSAKAのこと
◆ 地方から全感覚祭に遊びに行った極私的旅行記です。
◆ めちゃくちゃ楽しくて最高の祭りだった思い出をだらだらと書いてます。
○ 出発 ○
2019年9月20日 金曜日。全感覚祭2019へ行くため、仕事を午前で切り上げ空港へ向かう。
全感覚祭へ行こうと決めたのは八月。
2019年4月11日に表明されたあのステートメントを読んだ時に、そこで放たれる光を感じたいと強く感じた。安い飛行機のチケットを探しながら、東京に行くか大阪に行くか迷っていたところ、ついに大阪アーティストが発表。"渚にて"が決め手となり、学生時代を過ごした堺に行くことにした。
日々アナウンスされるフードサポートや"全感覚祭への道"とされた一連の動画を見て気持ちが高まっていく。
特にFood編がステキだった。黄金色の稲穂の海、トマトを食べた時の表情、農家の方が自分が作ったものがダイレクトに届く喜びを語る時。
ステートメントが形になって行く過程をスマホ越しにワクワクしながら見ていた。
出発の前日に熱帯低気圧が台風にかわる。ニュースの天気予報は見るたびに傘マークが・・・。"ゴールデンタイム"は感じれないなと思いながら、雨具も荷造り。台風対策も忘れずサボテンを部屋に避難させた。
▼ Tribe Called Discord! ~ 葛藤という名の部族 ▼
太平洋高気圧が張り出したおかげで台風の影響から逃れ、なんとか出発。
まずは地元では上映予定の無い”Tribe Called Discord”をみるために十三へ。
映画は素晴らしいドキュメンタリー・ロードムービー!
撮りためた数々の映像と編集の妙技。「Documentary of GEZAN」ではあるが、他文化・異文化への接近、そこにある現実、他者への理解と葛藤が描かれていて、その感情を抱えたままラストの全感覚祭へエネルギーが集約していく様は、GEZANがあのような音楽を奏でる理由を垣間見た気がした。
カウンターアクションの在り方も考えさせられた。
"正義の反対は正義"って考えは成り立たない世界。”自由”を妨げるものには全力で声をあげる必要があるんだと思う。
映画でも触れられていたが、悲惨な場所は日本にもある。わたしが住んでる島にも、爆音で飛ぶ戦闘機、埋め立てられる海、理不尽な事が沢山・・・。
Fhigt for our rights,freedom and future.
上映後には神谷監督とマヒトさんの対談がたっぷり。当然、映画だけでなく翌日に控える全感覚祭の話題にも。
マヒトさんからは、1年前は言語化出来なかったというフードフリーへの思いが語られていて、"美味しいご飯食べると、絵でも音楽でも感じ方が全然違うからね。それをみんなにも感じて欲しいと思って。それぞれ孤独を捨てずに「ひとりぼっち」で、全感覚祭へ来て下さい。"とのメッセージが。
眠りに着くチェックした天気予報は「晴れ」になってた。
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早めに行こうと思ってたけど持病の偏頭痛が・・・。熱いシャワーを浴びてからバファリンを飲み、港までゆっくり歩いた。
到着するとちょうどタカさんの開会宣言。”なんとかこの日を迎えられて、胸が爆発しそう!”とブチあがっている。
心配していた雨の気配はどこにもなく、港から吹く秋風が気持ちよい最高のコンディションではじまった。
★
スタートは、NUUAMM。じわじわと音の世界を開いていくような感じに、二人の声が交わっていく。
ときおり聞こえる工場の音もうまーく合わさって、すでに最高の世界が現れていた。化学工場のタンクから眺める働く人たちも。
次は、ゑでぃまぁこん。初めて見たけど、繊細なリズム隊の上にスチールギターと管楽器がからみ、女性ボーカル&コーラスがとろけるサイケデリックフォークだった。
カモメが舞う港をバックに奏でられる音がすごく気持ちいい。
ゆっくりと頭痛も引いてきたので、散歩がてらアーティスト展示をみる。写真やライブペインティング等、フリースタイルでおもろい。
会場では、GEZANの皆さんやボランティアの方々が、会場チェックや交通整理をきめ細かくされていて、こんな風にみんなの遊び場を提供してくれることに感謝(驚)。
★★
BLUE HEAVENへ到着。
ここは、ステージとフードブースがあり、ちょうどお魚のアラ汁に行列が出来てた。アラ汁行列とハードコア。カオティックノイズ。とてもおいしそうだったのだけれど、大人気だったので、十三月食堂で提供されていたミカンを一つ頂いて港へ戻った。
青切りでツヤのあるきれいなミカン。
山本精一&脳内花畑のスタートまですこし時間があったので、海が見える階段に座り、ミカンを食べようと皮をむく。しっかりしてるけど柔らかい。甘酸っぱいにおいが鼻に届く。
ぼんやりとした頭痛を気にしながら、ひと房を口に入れ、かみしめた時。一粒一粒のはじける感触とともに涙がこぼれた。
あれ?と思ったのも束の間、たくさんの涙があふれてくる。自分でも涙が出る理由がわからなくてびっくりして動揺。もうひと房頂くと、さらに涙が・・・。
その時の状態はうまく表現できないけど、あのステートメントに共感した農家さんたちが苦労して育てた食物を、「全感覚祭」に、そして「祭りに参加する人々」に提供したという行為の意味が、エネルギーとしてダイレクトに伝わってきたんだと思う。
細胞が震える感覚ってこれ?と感動しながら全感覚で味わってた。
★★★
WHITE STAGEに移動して、山本精一&脳内花畑。
WHITE STAGEは、新装ファンタンゴで、壁面にはBAKIBAKIのペインティングも描かれ、すでにファンタンゴ。精一さんが「スタート時刻間違えて、短かなるけど濃ゆくいくので」とボソリとつぶやいたあとは、音の波があふれ出す。
タイトなドラムに、シンセベースのグルーブ。マーシャルから放たれるギター。ファンタンゴの天井が高いためリバーブが気持ちいい。
会場には号泣している人もいる。20分ちょいだったけど、完全に飛ばされた。
★★★★
放心状態のまま、渚にて。
学生時代に山本精一さん監修のコンピCD「TONE POEM ARCHIVES」で出会って以来、大好きなバンド。
ビールを飲みながらまったり楽しむ。あがらず下がらず、絶妙なテンションを保ちながら、柴山さんのギターがRED STAGEの空へ溶けていく。
ずっと聞いてられる。こんな世界が続けばいいのにと思う。
おなかがすいたので、ゑでぃまあこんの方が焼いているというお好み焼き目当てにBLUE HEAVENへ。
残念ながら終了していたので、十三月食堂へ。枝豆&ひじきご飯を頂く。間違いなくおいしい。
すべての具材に込められた思いと、フードチームの皆さんの丁寧な仕事。ちょっと泣く。
★★★★★
おなかも心も満たされ、なんとなくRED STAGEへ。
んoonがはじまったところだった。知らないバンドだったけど、一番の出会いとなった。
ボーカル・ベース・キーボード・ハープの4人で、グルーヴの渦へ連れて行く。会場もダンスフロアのように盛り上がる。
ついついスピーカーの前へ引き寄せられる。そこで気づいたが、サウンドシステムが素晴らしい。初めて見るパナソニックのスピーカーだったけれど、Function Oneっぽいコーンが入ってて、音の解像度・音質・音圧のバランスがすごい。ウーハーも積まれているのか、6弦ベースの低音までしっかりでていて、スピーカーから風が吹いてくる。
改めて全感覚祭のクオリティの高さにびびってしまう。
★★★★★★
つづいて七尾旅人。
出演が2週間前に決まったとのことだったが、全感覚祭へのシンパシーを持って参加したとのこと。
サウンドチェックもそこそこに、熱いライブが繰り広げられる。この人はライブハウスでの演奏も素晴らしいが、コンセプトをもったイベントでの演奏だとメッセージが強く伝わると感じる。辺野古や高江で歌ってくれる時もそうだった。
「いつかきみはたちあがる どんなに道は険しくとも 雨にうたれ 風にふかれ 果てない壁に 阻まれても」
十三月のメンバーへ、祭のスタッフへ、参加しているみんなへ届けられているようで、感動してしまう。
詩人の友人とのセッションも全感覚祭ならではだった。
やさしい詩が見せる情景が、”ゴールデンタイム”にマッチする。
★★★★★★★
ここで、鎮座DOPENESS。
iPadからのビートに、変幻自在のラップ。ゆるーい空気を醸し出しながら、完全にフロアをロックする。
ラップしないフリースタイルラップ。ぼけ防止ラップ。CampanellaとのSticky Step!!
めちゃくちゃ楽しいライブ。ちょっとシリアスになってた雰囲気が、グッとあがっていく。
★★★★★★★★
日も暮れ、空が藍色に変わったところで折坂悠太。
重奏(バンドセット)でのライブは初めてなので、とても楽しみにしていた。素晴らしい楽曲が、弾き語りとはちがった豊かな表情をもって演奏される。少し冷えてきた空気のなかで、伸びやかな歌声が暖かく広がっていく。
とっぷりと日も暮れた中、必要最小限の照明で繰り広げられるライブは、手練れのジプシーバンドのようで、素晴らしい光景だった。
MCでは「お金という単位で価値が付けられないものがあること、そのようなものにこそ大事な何かがあるのでは、全感覚祭はそれを実感できる場としてとても素晴らしい場所だと想います(意訳)」というようなことが語られていて、出演者の共感が伝わってきた。
★★★★★★★★★
そして、THE NOVEMBERS。
ソリッドなサウンドで、じわじわとあげていく演奏。
6月末にリキッドルームで初めて見たときは爆音で疾走していたが、今回はライブ全体で爆発させるような構成だった。
赤く照らされるインダストリアルサウンドが、最高のサウンドシステムでブチならされ、ボルテージも最高潮に。
★★★★★★★★★★
ラストはGEZAN。
フロアはパンパン。演奏がはじまった瞬間に、全体が大きな波のようにうねり始める。モッシュ&ダイブの嵐で最高のテンションで突き進む。
ヘビーなバスドラと高音スネア。
ゴリゴリにチューンされたベース。
フルテンのマーシャルにファズで歪んだギター。
すべてを浄化するようなシャウト。
Absolutely Imagination
Wasted Youth
赤曜日
東京
BODY ODD
忘炎
この祭りがみんなの想像力で作り上げられ、そして一人一人の想像力が世界を少しづつ新しいステップへ進めていくパワーになる。
ストリートファイトを続けて、奇跡のような瞬間がいつか日常に出来ることがくると信じている。
この瞬間にたどり着くまでの想いを、GEZANの演奏から感じていた。
右腕に食い込むマイクシールドとやさしい眼差し。ファズとともに高く掲げられるギター。うねるようなソリッドベース。突き抜けるようなスネア。
ハードなサウンドにも関わらず、そこにはすべての生ける者死せる者への愛情がある。
GEZANのメンバー、十三月が見せたかった景色がそこには広がっていたと想う。
アンコールは D.N.A
ハーモニクスギターとともに始まるダンス。Tribe Called Discordから続く祭りはついにクライマックスへ。
それぞれのDNAが選択することで生まれる未来がある。この祭りで感じたこと、問いかけられたことを、次に繋げて欲しいと。つぎはみんなの番だよって伝えられている。「孤独を忘れずに来てください」っていうのは、このことを伝えたかったんだと感じた。
全感覚につつまれて、この祝祭は終わりを告げた。
★ ★ ★
翌日、少し早起きして港を散歩する。
昨日の祭りの余韻に浸りながら、ぼんやりと会場のあとを眺めていた。
ライブが終わった後、撤収するスタッフのそばで、みんながゴミ拾いをしていたためか、数百人規模のイベントの翌日とは思えないくらいきれいな状態になっていた。
★ ★
堺駅に向かう途中、「堺のお伊勢さん」という看板が目にとまった。
なんとなく気になり、この土地で遊ばせてもらった感謝も伝えなくてはと思い、お参りをしていくこととした。
お参りをすませて、せっかくだからと記帳させてもらおうとした時。
そこに「はれますように」という祈りとともに、彼の名が記されていた。
★
お目汚し失礼いたしました。ここまでお読みいただきありがとうございます。
最後になりますが、フリー(自由)は自分たちで勝ち取る必要があるのだと、全感覚祭で強く強く感じました。
遠方からですが、本当に参加して良かったです。
十三月の皆様の祭りがこれからも続くことを楽しみにしています。
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