価値観から、しごとをつくる
品川駅から長い通路をくぐりぬけると、港南口の出口が迎える。待ち合わせのカフェは、出口から徒歩で5分ほど。大きな会社の本社をはじめ大きなビルがならぶ日本有数のビジネス街を横切り、約束場所のカフェに到着する。
時間はまだ午前中、まだ店内は込み合っておらず、おしゃべりするにはちょうどいい雰囲気だ。約束時間より早く着いたと思ったが、先方はすでにミーティングをしていたようで到着済だった。
今日は数年ぶりの再開、楽しみにしていた。お相手は働き方改革やリモートワークの言葉が世に出る何年も前から、自由な働き方を提唱している とある会社の社長さん、といっても自分より少し人生の先輩といった気さくな方だ。
その会社は、社員が完全リモートワーク、しかもサーフィンのいい波が来たら仕事は少しおいておく。かつて「社員をサーフィンに行かせよう」の会社(パタゴニア社)が世間の話題になったが、その何歩も先も行く大胆な働き方だ。
さらに、こうしたワークスタイルに対する考え方を自社のブログでも積極的に公開している。
普通企業の情報発信というと、どんな事業、つまり何をしているかが中心だ。そうではなく、自分たちの価値観を発信している。なぜ事業ではなく価値観を発信しているのだろうか。お話を聞いてるうちに何となくわかったことがある。
価値観を発信しつづけると、その考え方に共感する人や組織が興味を示す。その輪が大きくなっていくと、自分たちの働き方に対する価値観に理解を示してくれる人たちとつながったり、仕事をすることができる。
社員のワークライフバランスを後押しして、無茶な納期の依頼は引き受けないと宣言している会社には、その仕事のスタイルを踏まえてお付き合いしてくれるような取引先が自然とつながるはずだ。
自分にとって、価値観をもとに仕事を考えるという発想は新鮮だった。
自分はこれまで仕事を考える上で仕事の内容つまり「何をするか」を中心に考えてきた。そして、社会に出てから試行錯誤しながらも、まぁかつてやりたいと思っていた仕事に携わるようになった。じゃあそれでハッピーになったかというと、そういうわけでもない。
例えば、周りが同僚クライアント含めてワーカホリックな方も多く、夜に「これ朝までにやっておいて」なんて無理難題も降ってくるきたり、プライベートも考えられないほど疲労困憊した働き方が続いていた。
そうした経験も経て、最近は「何をするか」ではなく、自身の価値観つまり「どうありたいか」、そしてその価値観を理解し合えるチームやクライアントつまり「誰とやるか」の方に軸を置くようになってきた。
仕事以外にもいろいろとチャレンジしたいことがあるなら、バランスがとれる働き方がいい、それが実現できる仕事は何だろう。こういう考え方のほうが自分の方は性に合っていることに(ようやく)気づいた。
米Dropbox創業者Drew Houston氏も、かつて卒業式でのスピーチで、あなたの価値は、自分と一緒に過ごす人の5人の平均値で決まる、自分に刺激を与えてくれる人と一緒に過ごすということは、自分の才能や努力と同じくらい大切であるとお話していた。何をするか以上に、自分の価値観をもとに誰と働くかというのが大切ということかと思える。
時間を忘れておしゃべりしている間にもうお昼、残念ながらお開きだ。
「これからね、地元に出張行ってくるよ。 面白い企画の種をまいてるんでね。」
「おもしろそうですね。 自分も地元でおもしろいことやりたいですね。」
「おもしろそうなところ、おもしろそうな人には自分からアタックしなきゃ。」
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