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省脳

どこに記録するか、何を記憶するか。

私のパソコンの使いかたはMG(マネジメントゲーム)の開発者・西研究所 西順一郎先生から習ったものです。それにとどまらずマネをさせていただいています。西先生から学んだ言葉で私にとって一番印象的な言葉は「省脳(しょうのう)」です。

耳慣れない言葉かと思いますが、私がこのフレーズを聞いたのは、例のマネジメント・ゲーム研修に参加したときのことでした。省脳は西順一郎先生が作ったフレーズ(造語)です。西先生がホワイトボードに「省脳」と書かれたときのことを、その爽快感を今でも思い出します。それは、まるまる二日間みっちりのマネジメントゲーム研修締めの講義でした。その講義を聴いた私は、欲しかったものをようやく手に入れた気分でした。

言葉の響き、字面、ユーモアといいさすが西先生、センスがよく言葉の意味は「あまり細かいところにはこだわらず、ざっくりと物事をとらえ、ここぞという時に力を出す。そういう時に自分の脳を使うのだ」と私は理解しました。「省脳」とは、車は人間の足に、電話は人間の声のように、人間は自分の代わりをしてくれるさまざまな便利な道具を開発して来ました。コンピュータもそのひとつ。コンピュータは人間のどの部分の増幅器なのか、それは脳ではないでしょうか。人間の脳には限りがあります。スケジュールや名簿など自分の脳で暗記をするより、そんなことはコンピュータにやらせておいて、脳を空け、空いた脳で、大切な人に会うとか、何かしてあげだいとか、人間にしか判断できないことを考えるためにコンピュータを使うこととそのときは理解しました。

頭の中にある物事をパソコンの中に記録して、いったん頭から忘れ、そして、必要なときに思い出すようにします。約束事や電話番号、友だちの誕生日、記念日なども、自分の頭で覚えておきません。無駄なことから脳を解放し、代わりに外部のバックアップに記録を移します。それはパソコンの役目です。パソコンで済むようなことはパソコンで、自分の脳からは削除します。限りある自分の脳の領域はなるべく空けておいて、人間の脳はもっと他に、人間の脳でしかできないことに使いましょうというのが省脳なのです。人間の脳でしか考えられないようなこととは、ひらめき、直感、隣にいる人をよろこばせることで、人間誰もが持っている素晴らしい右脳の能力のことです。

スマートフォン、タブレット、パソコンなどさまざまデバイスがインターネットとつながって、いろんなやり方が変わって来ました。”クラウド”という言葉はインターネットのことで、現在ではこのクラウドを活用すると更に便利になります。

パソコン時代の記録先は、パソコンでした。パソコンは自分の脳だから常に持ち歩かなければならなりませんでした。自分が自分専用のパソコンの前に行かないと仕事ができないのがパソコンの時代。それがクラウドを使うことで一変しました。

ブラウザ時代の保存先は、パソコンのハードディスクではなく、インターネット上。つまりクラウドにあるハードディスクになります。クラウドに自分の脳の増幅器があります。こちらはインターネット上にありますから、引き出す機器(スマートフォン、タブレット、パソコンなど)をインターネットにつなげば、情報の読み書きができます。もうハードディスクを持ち歩かなくてもいいのです。手ぶらでいい。歩いていても、車に乗っていても、地下鉄でも、寝ているときでさえ、日本中、アメリカに行っても常時インターネットに繋がっている状態といっていい。

こんな便利な脳の増幅器を使わない手はありません。クラウドとつながる機器は、テレビやカーナビ、ゲーム機、腕時計やメガネでも引き出せる開発が進んでいます自分の脳の預け先はいろいろあります。私はGoogle社に2TB(テラバイト=1000GB)、Apple社に2TB自分の脳を預けています。自分の脳には容量があるが、クラウドには上限はないと思って差支えありません(課金すれば増やすことができます)。

デジタル化はアナログを極めるところにあると思います。デジタルの得意なところ、アナログしかできないところをよく考えてデジタル化するのがいいと思います。アナログのほうがやりやすい、快適と思えることを無理矢理デジタル化すると上手くいきません。記録するのはデジタルの真骨頂。パソコンは自分の脳の一部。自分のパソコンに保存してある情報をクラウドに移すことは、自分の脳を空けるのと同じこと。自分の脳を空け、空いた脳を自分にしか考えられないことを考えるために使うというのが、従来の正しい使いかただと思います。今はパソコンからブラウザに変わって来ているのでインターネットが正しい使いかたです。とは言え、このバックアップには重大な弱点があります。電気と通信環境です。それがなくなったらすべての行動のための必要な情報がなくなるのです。原始的なようでも紙と鉛筆が必要だということに今更ながら自覚せざるをえません。紙の手帳の役割は完全に電子手帳やコンピュータ、スマホに奪われたということではありません。

西先生のスケジュール管理の手法は、このセオリーに成り立っています。スケジュールは5W1Hに分解して、パソコンのデータベースに入れ整理します。決まっているもの、決まっていないスケジュール、片っ端から入れて行きます。スケジュール以外にも、その時になったら思い出したいことを記入していきます。そして、日付順にソート(並べ替え)して、自分は何をするのかを決めていく。こうして、データがたまってくると、パソコンが「今日はこうしなさい」「広島に行くにはこの飛行機で行って、折角広島まで行くのでだから知人に会うのがいいですよ!電話番号はコレ」というようにパソコンが教えてくれるようになって便利です。省脳はパソコンの使い方の話だけではなく、パソコンを紙の手帳に置き換えても応用できる汎用的な素晴らしいアイデアです。私はパソコンは人と会うための道具だと思っていましたが、「インターネット=クラウド」に置き換わり、スマホを経て原点である紙の手帳の再評価につながっていく、面白いものですね。手帳の役目のひとつは記録することです。メモしたら忘れていいのです。メモを見て思い出します。そして、どうするのか考えるが脳の役目です。

直ぐ書いて忘れる。後で見て直す。

「直ぐやる、後で直す」というソニーで生まれた言葉があります。ソニーは創造性を旨とする企業です。「直ぐやる、後で直す」はソニー創造性の13原則のひとつです。「直ぐやる、後で直す」とは、「つまりつべこべいわず、まず体験するなりして感覚をバッとつかむ、そのうち理屈があとからわかってくる」というものです。

スケジューリングもあらかじめわかっているスケジュールをまず入れてみます。もしそこに別のスケジュールが入っていたら、その時点で改めて考えればいいわけです。どちらのスケジュールも実行したいわけです。どちらかのスケジュールを前後に調整できるかもしれません。また、そういう発想が、意思決定ができるのがスケジューリングという作業だと思います。とりあえず、わかっているスケジュールは全部入れます。この場合は鳥の目で見渡せる曜日優先カレンダーを使うのがおすすめです、3ヶ月前になったら考えるというスケジューリングはいかがでしょうか。曜日優先カレンダーは6ヶ月が一目で見渡せる優れものです。ずいぶん前に入れていて忘れていたスケジュールももう一度見れば思い出します。思い出せばその段階で意思決定することができます。直ぐ書いて忘れる。しかし後で見て直す。柔軟な思考は智恵であり、スケジューリングの本質なのです。

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