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業界情報 金融

業界情報 金融 

⚫️2021.10.8日本経済新聞🗞

【サマリー】
地域銀行の経営改善を日銀が促す
経費削減等が条件

【思ったこと】
これも生きるための手段
生きていないと、理念は実現し続けられない
理念を実現し続けるための、健全な原資は資本と利益
時には借り入れや公的施策も必要
活用して、健全な原資を産めるようになることが前提であるが

【記事全文】

地域金融機関に経営改善を促す政府・日銀の支援策が動き出す。経費削減を条件に日銀が上乗せ金利を払う制度は地方銀行の8割が対象になる見通しで、信用金庫などもあわせると最大で年1000億円規模になりそうだ。金融庁が再編に伴う経費の一部を補助する制度も適用第1号が決まった。支援で得た資金をいかに成長投資や地元支援に振り向けるかが問われる。
金融庁は経営統合や合併に伴う店舗統廃合・システム改修にかかる費用の一部を補うための資金を福邦銀行に交付する。同行は10月1日付で福井銀行の子会社になった。費用全体の3分の1(30億円)を上限に交付するしくみで、福邦銀はシステム改修や店舗でのタブレット端末の導入、支店の統廃合のために14億円の交付金を受け取る。
一方、日銀の支援策は、地域金融機関が経営改善に取り組めば日銀に預ける当座預金で金利を年0.1%、上乗せするしくみだ。(1)収益力の向上や経費削減(2)合併や他行の連結子会社化――のいずれかを満たすことが条件で、具体的には本業の粗利益に対する経費の割合(OHR)を2019年度実績比で1~4%改善することを求める。



日本経済研究センターが21年3月期決算をもとに試算したところ、経費改善や経営統合で条件を満たしたとみられる地銀は82行で全地銀の8割になる。当座預金が一定の水準を保つと仮定した場合に受け取る上乗せ金利の総額は年745億円に達する計算だ。これは地銀全体の最終利益の1割弱に相当し、経費削減効果に加えて大幅な収益押し上げ要因になる。
同制度は22年度までの時限措置で、多くの金融機関で今秋から適用が始まった。人件費の圧縮や店舗網の見直しで条件を満たした佐賀銀行は1年間で4億5000万円程度の上乗せ金利を受け取る見込みだ。信用組合も7割程度が対象になったもようで、制度申請を前提にすると金融機関の上乗せ金利の総額は年900億~1000億円規模に達する可能性がある。
日銀は、地銀や信金・信組などすべての金融機関に金利を上乗せする場合の総額を年700億円強と試算していた。過去の実績に照らすと経費率の改善で制度を使えそうな地域金融機関は最終的に全体の1割以上と見込まれていたが、実際には想定を上回る勢いで利用が広がる可能性がある。



要因は大きく2つある。まず、金融機関の当座預金そのものの急増だ。政府・日銀は新型コロナウイルス下で企業の資金繰り支援策を導入。手元資金の確保を急ぐ企業への融資急増に比例して預金も増えた。制度で対象になる地銀の当座預金は足元で100兆円程度と1年間で1.6倍になった。上乗せ金利は当座預金残高に適用するため、預金が増えれば受け取る金額も増える。
条件を満たしやすい環境もある。多くの地銀は店舗網の再編や人件費の抑制に動き始めている。さらに新型コロナの感染が拡大した20年度は経済活動が停滞し、営業や出張などのコストを抑えやすかった面もある。地銀の経費率は上昇基調をたどってきたが、コロナ下の20年度は低下に転じ、日銀がマイナス金利政策を導入した直後の16年度の水準を下回った。
そもそも、支援策はマイナス金利政策で痛手を負う地域金融機関への埋め合わせという面がある。日銀は金融政策と切り離して実施しているが、マイナス金利政策の解除が見込めないなか、目先の負担を和らげつつ、経営改善で緩和長期化への耐性を高めてほしいというのが本音だ。
ただし条件のハードルは期限の22年度まで次第に高まる設計になっており、1年目の対象金融機関がずっと上乗せ金利を得られる保証はない。岡三証券グローバルリサーチセンターの高田創理事長は「経営改革の流れを止めないためにも、まずはハードルの低い1年目から多くの金融機関が参加したことに意義がある」と指摘する。
受け取った上乗せ金利の使い道も焦点だ。日銀の支援策は「地域経済の持続的な発展に貢献すること」が前提だ。足元の企業倒産は抑制されているが、金融支援が途切れれば息切れする企業は増えかねない。予防的な貸倒引当金の計上も有力な選択肢になる。
東京都地盤のきらぼし銀行の安田信幸取締役常務執行役員は「顧客サービスの向上につながるよう、キャッシュレス分野の強化などデジタル化に必要な投資に充てたい」と話す。コスト削減にとどまらず、コロナ禍で疲弊する地域経済の再生や持続可能な経営環境づくりにつなげられるかどうかが、ばらまきで終わるかどうかを分ける。

⚫️2021.10.7日本経済新聞📰

【サマリー】
日本経済新聞の分析
2023年には約二割の地銀が赤字

【思ったこと】
銀行は、公共性強いが、ビジネス
メインは融資という商品を提供し、企業さんの存続・発展というベネフィットを提供している
もう少し商売に徹することも大事か

【記事全文】

日本経済新聞社は地方銀行の将来の収益力や財務力を独自のストレステストで分析した。日銀が想定する「感染症再拡大シナリオ」を当てはめて試算したところ、2023年3月期に約2割の地銀が最終赤字になるとの結果が出た。景気が安定軌道にのれば赤字に転落する地銀は限られるが、収益力の低迷は続く。
財務データをもとに将来を探る「NIKKEI Financial RAST」で分析した。日経と金融コンサルのプロモントリー・フィナンシャル・ジャパン、日経金融工学研究所が共同で初めて分析した。
対象は21年3月末時点の第一地銀60行と第二地銀38行の計98行。日本経済研究センターの景気予測「ESPフォーキャスト調査」をもとに4つのシナリオで試算した。
最も深刻な悪化シナリオは日銀が21年4月に出した金融システムリポートの「感染症再拡大シナリオ」を参考にした。新型コロナウイルスの感染が21年末にかけて再拡大し、21年度の実質国内総生産(GDP)が前年度比1.4%増にとどまるとの想定だ。貸出先の業況悪化などで23年3月期に98行の2割強の23行で自己資本利益率(ROE)がマイナスとなった。
ROEは収益性を測る指標でマイナスは赤字や債務超過を示す。サービス業への融資が多い銀行で赤字が目立つ。全体の自己資本比率も低下し、24年3月期には23行が国際基準(8%)を下回る。
景気が基本シナリオをたどっても24年3月期まで地銀全体のROEは21年3月期の水準を下回るとの結果が出た。

⚫️2021.10.5日本経済新聞🗞

城南信用金庫は4日、敷地内に喫茶店「ドトールコーヒーショップ」を配置する支店を開店した。瀬谷支店(横浜市)を相鉄線瀬谷駅に直結した商業施設内に移転させ、買い物客や通勤客が飲食のついでに資産形成の相談や地域の情報収集に訪れられるようにした。インターネット経由の金融取引が普及し来店客の減少が続くなか、顧客接点を増やすための新たな手段にする。
ドトールは城南信金が少額出資する関連企業の子会社が運営する。ドトールの飲食スペースと信金の待合場所を一体化し、来店客が気軽に行き来できる設計にした。閉店後は信金側のスペースも飲食に利用できる。城南信金の川本恭治理事長は同日開いた式典で「地域コミュニティーの核として発展させたい」と語った。城南信金では来店客が10年前に比べて半分程度に減ったという。

⚫️2021.9.28日本経済新聞📰

九州フィナンシャルグループ(FG)と傘下の肥後銀行は27日、希望する行員の副業を認めると発表した。従業員の多様な働き方に応える形で、10月から制度を開始する。同じ傘下の鹿児島銀行も実施に向け検討している。
九州FGなどが認める従業員の副業は、相手先と雇用契約を結ばない個人事業主型の形態とし、セミナー講師やインストラクター、ウェブ関連などの仕事を想定する。副業を希望する従業員が事前に申請し、担当部署の了承を得て始めることができる。
従業員が持つ専門的なスキルを外部で生かすことで、行内に多様な価値観が生まれ、地域貢献も期待できるとみている。
九州FGによると、肥後銀行の全従業員に実施した事前アンケートでは「副業を始めたい」が18%、「様子を見て検討したい」が36%と、半数を超える従業員が副業に関心があると回答した。

⚫️2021.9.28日本経済新聞🗞


マネーロンダリング(資金洗浄)対策の強化に向けた連携が加速してきた。金融機関は口座所有者の所在を追跡するため電力会社のデータを活用するほか、不正取引を検知するシステムの共同開発も進める。貴金属業界も海外製品の買い取りをやめるなど厳格化に動く。実質不合格となった国際審査の結果を受け、対策の高度化を急ぐ。
SBIホールディングス子会社とNECの共同出資会社は、銀行向けにスマートフォン決済事業者と口座連携する際の不正な現金引き出しを防ぐシステムの提供を始めた。銀行とスマホ決済事業者のそれぞれが実施している本人確認や認証を共通化し、生体情報を絡めて精度を上げた。島根銀行が6月に初めて採用した。連携で生じかねない穴をふさぐのが狙いだ。
国際組織「金融活動作業部会」(FATF)が8月に公表した対日審査の結果は、日常的に顧客の取引実態などを把握する「継続的顧客管理」の不備を指摘するものだった。預金口座の開設時だけでなく、その後の取引内容や口座の利用者が名義人本人か継続的にチェックするよう求めた。
前提になるのが口座保有者の所在確認だ。現在ははがきを送付して確かめているが、電力会社と連携して効率化する動きが出てきた。先行するのがカード会社だ。オリエントコーポレーションとセキュリティー対策を手がけるカウリス(東京・千代田)は昨年、関西電力送配電などと連携し、電力設備の稼働状況に関するデータをカードの不正入会の未然防止に役立てる実証実験をした。
同じように銀行が電力会社に照会をかけ、口座保有者の情報更新に役立てられれば、定期的な所在確認にかかる手間やコストを大幅に減らせる可能性がある。銀行に登録された住所が電力設備が稼働していない住所だと把握できれば、ひもづく口座を重点的に監視し、不審なお金の動きを早期に察知することにもつながる。
不審な取引を事前検知するため、金融機関が共同で参加するシステムの開発も進む。各行が取引明細や顧客属性に関する大量のデータを人工知能(AI)に読み込ませる仕組みで、不正が疑われると判断した取引を行員が詳細に分析する。全国銀行協会やNECなどが3月まで実証実験をしており、実用化に向けた検討を進めている。
金融庁は10月にも個人情報の扱いを含めた制度を整備するため作業部会をつくる。自社でのシステム整備に限界がある地銀などに活用を促す。
FATFは古物商や弁護士など金融機関以外の対策も不十分だと指摘した。急速に利用者が広がるフリーマーケットアプリでは、犯罪者が不正に入手したクレジットカードからお金を抜き出すために、出品者と入札者の双方になりすます例がある。安価な商品を出品した直後に、商品に見合わない高額な買い取り価格で落札。瞬時に盗んだカードで決済することで、偽の出品者にお金が渡る仕組みだ。
フリマアプリ大手のメルカリでは、アカウント作成時や決済時の本人確認を厳しくするとともに、不審な動きを繰り返す利用者が使ったIPアドレスを割り出して取引を止めるといった仕組みを2010年代から導入。「24時間、常時監視する仕組みを整え、被害を未然に防ぐようにしている」(担当者)。
高価で持ち運びしやすい貴金属や宝石もマネロンに悪用されるケースが多い。近年は密輸対策などから海外製の金地金などの買い取りをとりやめる貴金属店も増えている。大手の石福金属興業(東京・千代田)は2018年から、海外製の貴金属地金の買い取りを一律でやめた。現在も海外製の買い取りを続けている別の貴金属大手も、入手した場所が分かる書類の提示を求めるなど本人確認を厳しくしている。
政府は省庁横断でマネロン対策を強化するためのチームを設け、量刑の厳罰化などの検討を進める。民間が実効的な対策を打つのを阻んでいる慣行や制度を洗い出したうえで手を打つ必要がある。

⚫️2021.9.27NewsPicks📱

経営統合せず単独で持ち株会社をつくる地方銀行が増えている。沖縄銀行、十六銀行、北国銀行は10月1日、持ち株会社を新設する。証券業務やファンド運営といった機能を銀行傘下から切り離し、それぞれの機能を強めるのが狙いだ。超低金利下で収益源を広げる必要に迫られていると同時に、融資だけでは取引先のニーズに応えられなくなっている実態が背景にある。
銀行の持ち株会社化はこれまで、経営統合が絡むことが多かった。銀行同士は合併せず持ち株会社の下にぶら下げて存続させる手法だ。今回、金融庁から認可を得た3行は他行との経営統合を絡めず単独で持ち株会社に移行する。銀行がすべての子会社を抱える形を改め、持ち株会社の傘下に銀行とその他の子会社を並列させる。
先駆けとなったのが広島銀行だ。2020年10月にひろぎんホールディングス(HD)へ移行した。今年4月に街づくりを担う「ひろぎんエリアデザイン」、人材紹介を手がける「ひろぎんヒューマンリソース」をHD傘下に新設。計7社が銀行の子会社ではなく兄弟会社としてHDの下に並ぶ。


事業変革や人手不足、デジタル化への対応など、多様化する地元企業のニーズに総合的に応えるため、業務範囲規制が厳しい銀行では提供しきれない機能を兄弟会社に担わせるのが狙いだ。
ある地銀関係者は持ち株会社の設立が相次ぐ理由を「銀行傘下では新しい発想が生まれづらい」と指摘する。低金利環境が定着しても、預金と融資の金利差で稼ぐのが本業の銀行にとって融資からの脱却は容易ではない。地域商社といった新たな領域を収益化するためのガバナンスや人材育成を持ち株会社が主導する姿を描く。北国銀行は「次世代版 地域総合会社」への転身を掲げる。
融資ではなく事業会社に出資する場合、銀行は上限が原則5%に制限される一方、持ち株会社は15%まで可能だ。さらに今年11月に施行する見通しの改正銀行法では、異業種への参入が大幅に緩和される。システムやアプリの販売、広告、人材派遣といった事業を銀行の兄弟会社が営む場合、届け出のみで済むようになる。
個別に列挙されなかった業種でも、認可を得れば「すべての従属業務を収入依存度規制なしに営むことが可能」と明確化した。「銀行と切り離された持ち株会社の傘下の方が認可を得やすいだろう」(地銀幹部)との思惑も、持ち株会社への移行を後押ししている。
課題は銀行と切り離した効果を高められるかだ。大手銀行は約20年前に持ち株会社に移行した。三井住友フィナンシャルグループ(FG)が傘下の証券会社や運用会社トップに生え抜きや外から招いた人材を起用したほか、東京きらぼしFGも外部の人材を子会社トップに登用している。ただ、こうした動きは少なく、銀行出身者の事実上の「上がりポスト」になっているケースが多い。
もっとも、持ち株会社化しても銀行の存在が圧倒的に大きい構図は変わらない。合併に伴い持ち株会社をつくった地銀の幹部は「銀行を執行機関の一つに位置づけなければいけないが、進め方は常に悩んでいる」と漏らす。急激に制度や業務を見直せば、行員の統率がとれなくなるリスクもある。
金融庁幹部は「誰かのまねをするのではなく、自分たちの身の丈を考えて進めることが重要だ」と指摘する。事業の変革が待ったなしのなか、持ち株会社化はひとつの手段になり得るが、結局はそれで何をするかにかかっている。

⚫️2021.9.22日本経済新聞📰

【サマリー】
横浜銀行 副業解禁

【思ったこと】
追随する所でてくる
もし解禁になったら自分は何をしたいか
真剣に考える時が来た
銀行マン個人個人の、
中小法人さんに対して提供できる価値の向上につながればいい🤗

【記事全文】

横浜銀行は副業・兼業を認める制度を10月1日から導入する。希望する従業員は人事担当の審査を経た後、他社での週2日以内の兼業や、就業時間外での事業経営などができるようになる。兼業や副業を認めるのは県内の金融機関では初という。人脈作りや銀行業務以外の専門性を高めるなど、社員のスキルアップやキャリア形成を促す。
同行はこれまで情報漏洩や利益相反のリスクの観点から副業・兼業を認めていなかった。行内で意識調査をしたところ、副業・兼業に前向きな意見が多かったため、これを踏まえて10月1日から「キャリア・イノベーション支援制度」を新設する。
希望者からの申請を受け付け、人事担当が情報漏洩や利益相反の恐れがないことや、過重労働にならないよう健康管理などを審査し、問題がなければ承認する。

⚫️2021.9.21NewsPicks📱

金融庁は2024年3月末から、地方銀行や信用金庫に新たな資本規制を導入する。自己資本比率を計算する際に、保有株式の損失リスクを重く見積もる半面、中堅・中小企業向け融資のリスクを今より軽くする。相場変動に伴う損失リスクをおさえるとともに、企業の資金繰りを支援し実体経済を支える役割を発揮するよう促すのが狙い。
金融庁が導入するのは08年のリーマン危機の反省を踏まえてできた国際規制(バーゼル3)の国内版だ。メガバンクなど海外でも営業する銀行には23年3月末から最終段階の適用を始めるが、地銀など国内だけで営業する金融機関への適用時期は明示していなかった。
銀行は財務を健全に保つために、貸出債権や株式など損失リスクのある資産(分母)に対し、自己資本(分子)比率を一定以上に保つことを義務づけられている。国際基準行は8%、国内基準行は4%が最低水準だ。
新規制では分母にあたるリスク資産の見積もり方を変える。中堅・中小企業向け融資を対象に、損失リスクに応じた掛け目を低くする。融資を増やしても自己資本比率が下がりにくくなるため、比率低下を避けるための貸し渋りなどを抑制する効果を期待している。
国内銀行による中小企業向け融資残高は約380兆円で、全体の融資残高の約7割を占める。中小企業は資金繰りの大半を銀行に依存する。中小向けの融資を増やしても銀行の自己資本比率の低下につながりにくくすることで積極的な資金繰り支援を求める。
一方、株式についてはリスクの掛け目を厳しくする。リーマン危機時、銀行は保有株式の値下がりで巨額の損失処理を迫られた。株価下落で財務が傷み、資本に余裕がなくなった銀行が貸し渋りや貸しはがしでさらに経済を冷やす負の連鎖を招いたとの反省がある。
金融庁はこれまでもなれ合い防止などの観点からコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)などを通じて株式の持ち合い解消を強く迫ってきた。この結果、上場銀行の上場株の持ち合い比率は00年度の10%超から19年度に数%まで減ったが、なお岩盤として残っている。
新しい規制は株式を保有するコストを高くすることで、仕組みの面からも保有株の削減を促し、本来の金融仲介機能を発揮するよう求めるのが狙いだ。
メガバンクなど海外でも営業する銀行には22年3月末から本格適用する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い23年3月末に1年間、延期した。金融庁は国内だけで営業する銀行に対してはさらに1年後の24年3月末から5年間かけて段階的に適用していく方針だ。

⚫️2021.9.21NewsPicks📱

論戦が熱を帯びる自民党総裁選は日本銀行の金融政策にも影響を及ぼしそうだ。総裁選後に誕生する次期政権は事実上、令和5年4月に任期満了となる黒田東彦(はるひこ)日銀総裁の後任の指名権を持つ。候補者の間では黒田日銀が「異次元の金融緩和」で目指す2%の物価上昇に関する温度差があり、ポスト黒田の人選は金融政策の転換につながる可能性がある。
4人の候補者のうち2%目標への疑問を示唆するのは河野太郎ワクチン担当相だ。河野氏は10日、目標達成について「かなり厳しいものがあるのではないか」と言及した。金融政策は「日銀にある程度お任せしなければいけない」としているが、黒田氏の後任に2%目標にこだわらない人物を選ぶ可能性がある。

また野田聖子幹事長代行は出馬表明直前までホームページで「現在の異次元の金融緩和は長期的に行う前提ではなかったはず」と指摘。2%目標から距離をとる姿勢を感じさせていた。
一方、岸田文雄前政調会長は「大胆な金融政策は維持する。2%の目標は世界水準なので掲げ続ける」と強調。高市早苗前総務相は「金融緩和、緊急時の機動的な財政出動、大胆な危機管理投資を総動員して2%の達成を目指す」としている。
2%目標は平成25年1月、物価が持続的に下落するデフレからの脱却を掲げる当時の安倍晋三政権と日銀の共同声明に盛り込まれ、「金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す」と明記された。黒田氏は就任翌月の同年4月、早期実現に向けて大量の国債を買い入れる異次元の金融緩和を導入。当時は「2年で達成する」とした。

しかし8年余りたっても実現は遠い状況だ。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは新首相の方針次第で「金融政策に柔軟性を与えるために2%の物価上昇を『早期実現』ではなく、長期的な目標にするような共同声明の見直しがあり得る」とし、政策転換を視野に入れた黒田氏の後継選びの可能性も指摘する。
新型コロナウイルス禍からの回復が遅れ、消費の持ち直しが鈍い状況では、誰が首相になっても金融緩和策を継続するとの見方が多い。21、22日に開かれる日銀の金融政策決定会合でも金融緩和策の変更はない見通しだ。

ただ、異次元の金融緩和がもたらす低金利の長期化には金融機関の収益悪化といった副作用も大きい。総裁選候補の発言やポスト黒田として浮上してくる顔ぶれは、金融政策の転換の行方を探る手がかりになりそうだ。(高久清史)


⚫️2021.9.14日本経済新聞📰

【サマリー】
金融機関のマネロン対策強化

【思ったこと】
国際的なマネロンチェック機関から、日本はマネロン対策✖︎の烙印
制度が整って、また事務手間が増えるのか😐

【記事全文】

金融庁は13日、マネーロンダリング(資金洗浄)対策として、不正な送金の監視を複数の金融機関で共同化するための作業部会を立ち上げると表明した。金融審議会が顧客や送金に関わる情報管理などで必要な法制度を検討し、年内に結論をとりまとめる。全国銀行協会などが実証実験を始めており、実用化を後押しする。
同日に金融審の総会を開き、作業部会の設置を決めた。世界各国・地域のマネロン対策を調べる国際組織「金融活動作業部会」(FATF)は8月に対日審査の結果を公表した。政府はFATFの結果を受けた行動計画で、2024年春までに共同システムを実用化する方針を示した。

⚫️2021.9.8NewsPicks📱

[東京 8日 ロイター] - 日銀が8日に発表した8月の貸出・預金動向によると、銀行・信金計の貸出平残は前年比0.6%増の576兆8481億円だった。残高が過去最高水準で推移する半面で、新型コロナウイルスの感染拡大で前年に企業の借り入れが急速に伸びた反動が続き、伸び率は縮小傾向。2012年6月以来の低い伸び率となった。
内訳では、都銀等の貸出平残が1.6%減。地銀・第二地銀は2.0%増に、信金も2.4%増に伸びが鈍化した。感染が拡大する中でも追加の借り入れは広がっていないものの、緊急事態宣言の延長・対象地域の拡大で飲食・宿泊を中心に資金繰りが厳しい状況は続いている。日銀の担当者は動向を注視したいとしている。
8月の預金平残は都銀・地銀・第二地銀の3業態計で5.1%増の829兆0783億円となった。

⚫️2021.9.3日本経済新聞🗞

「サマリー」
金融機関が、融資先がないため
再びアパートローンに資金を向け始めた

「思ったこと」
新たな融資先が少ない
融資しないと既存の融資ストックではやっていけない
安易にアパートローン
相当対象アパートを厳選しないと、また焦付きの問題になる💰


2018年以降の不適切融資問題を受けて減少が続いていた投資用不動産ローン(アパート融資)に、底打ちの兆しが出ている。21年4~6月期の銀行による新規貸出額は4年ぶりに前年同期比で増加に転じた。個人の資産形成への関心が高まり、地方銀行を中心に融資を拡大する動きが広がっている。新型コロナウイルス下で、不動産に代わる収益源の開拓が難しくなっているという金融機関側の事情も透ける。
日銀によると、銀行による21年4~6月期の「個人による貸家業」への新規貸出額は約5500億円と2割増えた。前年同期比プラスは17年1~3月期以来だ。20年4~6月期は1回目の緊急事態宣言で取引が大きく減り、今年はその反動が出た面もある。もっとも、より長期の変化を示す4四半期移動平均も4年ぶりに前四半期比プラスとなり、底打ち感が出ている。
一部の地銀は投資用不動産関連の貸し出しを増やしている。横浜銀行ではアパートローンの残高が6月末時点で1兆8110億円で、20年6月末比3%増加した。静岡銀行のアパートローン残高も1兆204億円と4%増えた。トモニホールディングス傘下の香川銀行では、投資用不動産などを含む「その他ローン」の残高が1121億円と15%伸びた。スルガ銀行は21年4~6月期、個人や資産管理会社向けで計101億円の融資を実行した。前年同期の約2倍の金額だ。今期通期では前期の2.4倍となる900億円を計画する。
投資用不動産ローンが増え始めたのは第2次安倍政権が発足した12年ごろだ。日銀が強力な金融緩和に踏み込んだことで、低金利下でも比較的高い利回りが見込め、節税効果も期待される不動産投資の関心が高まった。
日銀や金融庁が16~17年、リポートなどで地銀の不動産融資の増加を指摘し始めると、各行は融資審査を厳しくした。翌18年にスルガ銀がシェアハウス物件に関する不適切融資で業務改善命令を受けると、各行が一斉に融資を絞った。

ここに来て増加に転じたのは、新型コロナ感染拡大をきっかけに個人の資産運用への関心が高まったことがある。不動産投資家の社会人サークルで代表を務める依田泰典氏は「将来への不安に加え、在宅勤務で時間に余裕もでき、不動産投資を始めたい人からの相談が増えている」と話す。
貸出額が増えたのは、不動産の購入検討者が増えた影響が大きく、今のところ融資基準を緩める動きは限定的のようだ。スルガ銀は事件を受け、新規の取引先を一定の資産規模を持つ富裕層に絞り、契約時に営業担当者が2人以上で対応して互いにチェックするといった再発防止策もとる。一部の銀行が融資を拡大し始めた半面、投資用不動産ローンから撤退する金融機関もあり「今後は融資姿勢の二極化が進む」(不動産投資家の玉川陽介氏)との見方がある。
地銀が不動産の他に有力な貸出先を見つけられないという事情も透ける。不動産ローンでは担保をとれるうえ、1件あたりの融資額も大きい。オフィスビルや商業施設は新型コロナで空室が増えたものの、投資用として一般的な住宅の需要は底堅く価格は上昇が続く。
もっとも、スルガ銀などの事件が発覚した後も、いまだに不正を働こうとする不動産会社が存在する。自己居住用の住宅ローンを投資用不動産に充てようと提案するケースなどは後を絶たない。貸し出し競争が再燃し金融機関側の規律が緩めば、不正が横行していた過去に後戻りしかねない。

⚫️2021.8.31NewsPicks📱

「サマリー」
JAにおいて、ノルマが激しく
職員が自ら契約、ないしは他の人の保険料の支払いを職員がしているという記事

「思ったこと」
多分、市場に求められていない商品を売ろうとしているから、こうなる、、、💴😔
営業職員は、会社からすると、商品を買ってもらうための顧客接点。
そこに負荷をかけるだけで、
いまの商品を売れる商品に変えないのは、怠慢

「記事全文」
JA共済のノルマを達成するため、JA職員に自分だけでなく他人の掛け金まで不当に負担させる「自爆」が全国で横行している。通常の業務を超えて職員に経済的な犠牲を強いることは違法ではないのか。職員が「かんぽ生命の不正販売と大して変わらない」と嘆く、組織を挙げた悪しき営業の実態を追及する。
金融依存から抜け出せないJA
まずは下の表を見てもらいたい。生命保険の保有契約高・総資産と、損害保険の正味収入保険料の大手各社のランキングである。

生命保険の保有契約高・総資産では、全国共済農業組合連合会(JA共済連)が商品の企画と開発をしているJA共済が2番手に付けている。損害保険の正味収入保険料でも、大手損保と肩を並べる数字だ。これだけの業績を挙げられるのは、全国に広がる強力な販売体制があるからだ。
JA共済の商品を営業するのは、全国に562(2021年4月1日時点)ある地域のJAである。JAはJA共済連からノルマを割り当てられると、確実に遂行する。というのも、JAにとってその達成は、経営を左右する死活問題なのだ。
JAは農業協同組合と言いながら、農業と関連の深い営農指導事業や経済事業で黒字になっているところはごくわずかだ。大多数のJAは両事業の赤字を穴埋めするために、共済事業と信用(金融)事業の収益に頼ってきた。
JAがJA共済を普及する動機は、民間の保険会社の代理店と基本的には同じである。販売の実績に応じて「付加収入」と呼ばれる手数料がJA共済連から支払われる。これとは別にJAがJA共済連に出資した配当金も入ってくる。ただ、最近では運用利回りが下がり、配当金は抑えられる傾向にある。このためJAの経営において、付加収入の重要さが増している。
JAに割り当てられたノルマは、支店を経由して職員に降ってくる。これから述べるように、その負担の大きさは尋常ではない。ここからは、私がこの問題を取材するきっかけになったJA福岡京築(福岡県豊前市)を具体例に話を進めていこう。
「自爆」するのは常識
JA福岡京築の職員やOBによると、ノルマの多寡は役職で決まる。2020年度の場合、一般職は1万2000ポイント、管理職は1万4500ポイント。ポイントの算出方法は複雑な計算式で成り立っているようで、複数の職員やOBに説明を求めてもはっきりしなかった。ただ、おおむね1ポイントは共済金にして1000円前後に相当するという。つまり1万2000ポイントなら1億2000万円前後の契約を新規に取ってこなければならない。しかも毎年である。
「達成できなければどうなるのか」というのは愚問である。その時は「自爆」するのが常識だからだ。
「自爆」とは、職員が達成できないノルマの分について、自ら掛け金を負担すること。まずは自分がJA共済に入る。それでも達成できないので家族、続いて友人や知人に加入してもらう。そうした他人の掛け金を払うのは勧誘した職員。つまり肩代わりをする。これが自爆だ。

新人は1ヵ月以上の手取りが消える場合も
勧誘する相手は、なるべく年齢が若い人を選ぶ。若いほど掛け金が安くなるので、肩代わりする分が少なくて済むからだ。
JA福岡京築の2人の職員に自爆の金額について聞いた。1人は「年間20万円」で、もう1人は「僕は毎年20万円から30万円」だった。肩代わりする金額としては一般的だという。2によれば、同JAの新入職員の月給は「手取りで15万円程度」。つまり新人にとっては1ヵ月分以上の手取りが自爆で消える計算になる。
職員は毎年、ノルマの期限が近くなれば、営業のために残業するのは当たり前。深夜まで家を回ることもたびたびある。2人の職員によれば、「残業代が出たことは一切ない」。
達成が難しい見通しとなれば、すでにノルマをこなしている職員が余計に取った契約分について、組織には内緒で身銭を切って買い取る。ただ、これだけのことをしても、「一切自爆せずに済む職員は毎年2~3割しかいない」という。
もちろんJA共済連は、こうした自爆の存在を認めていない。ただ、JA共済連の県本部の運営委員会会長を務めたことがある人物に尋ねると、「自爆はある」と打ち明けた。同会長は当該県のJAの組合長の中から選出される。JA共済連は、JAの経営を知り尽くしている人物の言葉を否定することはできないはずだ。

自爆営業が横行しているJA福岡京築
4つの違法性の疑い
自爆営業は、法的にも問題がある。
「少なくとも4つの点で違法性が疑われる」。こう指摘するのは、大阪弁護士会所属で労働事件に詳しく、著書に『JA金融法務入門』(経済法令研究会)がある弁護士の中島光孝さん。4つとは、改正労働施策総合推進法(通称、パワハラ防止法)と刑法、労働基準法、労働契約法である。以下、それぞれについて説明していきたい。カギカッコはすべて中島さんの説明である。
まず、パワハラ防止法では、パワハラに該当する6つの類型の1つに、仕事における「過大な要求」を挙げている。同法は、大企業については2020年6月から、中小企業については2022年4月から適用される。事業主はパワハラ防止に必要な措置を講じなければならない。「JAが職員に限界を超えたノルマを課しているなら、パワハラの概念に該当する。総点検して、コンプライアンスを徹底する必要がある」
次に刑法では、第223条で「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する」と定められている。「職員が販売する商品について、自分で金を出して買う義務はない。組織や上司が脅迫して自爆をさせているなら、第223条の強要罪に当たる」
労働基準法は、第16条で「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めている。「ノルマを達成できない罰則として、自分の金で商品を買い取らせている場合は違反している可能性が出てくる」
労働契約法は、第3条第3項で「労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする」と定めている。「職員は自爆をすれば生活費が減るので、ワークライフバランスの条項に反する可能性がある」

職員の7~8割が自爆
以上の指摘で特に注目したいのは、先ほど取り上げたJA福岡京築の職員の証言と刑法の関連だ。「一切自爆せずに済む職員は毎年2~3割しかいない」、つまり、職員の7~8割が自爆している現状で、JAは強要していないと言い張れるだろうか。
もう一つ付け加えたいのは、多くのJA職員が「ノルマを達成できなければ、辞職するしかないところまで追い込まれる」と話していることだ。ノルマを達成していない職員は期限が近づけば、上司から「どうするんだ」と問われ続けるのは日常的。「上司から個室に呼ばれ、30分以上にわたって『いつできるのか』と聞かれることもたびたびあった」と証言するOBもいる。
そのためかJA福岡京築では職員の退職が後を絶たない。業務や財産の説明資料「ディスクロージャー」でJA福岡京築の正職員数をみると、2019年度に265人だったのが2020年度には245人。全体の約7%に当たる20人が辞めており、離職率は高いといえる。
さらに職員によれば、退職した20人のうち10人は、JA共済を販売する専門職の渉外担当者だった。同JAの場合、職員の約6人に1人が渉外担当者だそうだ。そのノルマは管理職、一般職ともに10万ポイントに及ぶ。彼らは、ほかの職員の7~8倍に相当するノルマを課せられているのだ。

JA福岡京築の支店別ノルマ表。ノルマは支店から一人ひとりの職員に降ってくる。
先ほどの職員の説明によれば、10万ポイントのノルマは共済額にして10億円前後という計算になる。掛け金に換算すれば毎月18万円前後だという。とりわけ新人であれば、自爆する分が多くなると、手元に何も残らないどころか、借金することになってしまう。同JAの職員は次のように証言する。
「渉外担当になった職員の多くは1年で辞めていきます。簡単に達成できる数字ではないですから。だから辞めさせたい人間がいれば、渉外担当に回すこともあるんです」
職員とOBによる一連の証言が事実かどうかを確認するため、JA福岡京築に取材を申し込んだものの、「一切の取材はお断りします」という回答だった。
不正の遠因としての自爆
自爆は、職員に経済的な犠牲を強いるだけでなく、心身に多大な負担をかけて、職を失わせるほどに苛烈なものである。取材を通じてもう一つ問題に感じたのは、彼ら彼女らの職業的な倫理感を狂わせていることだ。
JA福岡京築では、職員による横領や共済金の詐取が頻発している。では、なぜ職員は不正に手を染めるのか。この問いを投げかけると、ある職員は「自爆で失った金を取り戻したいからでは」と証言した。もちろん不正を犯した理由を、すべて自爆に求めるわけにはいかない。ただ、自爆がその遠因になっている可能性は否定できないのではないか。
自爆が存在するのはJA福岡京築だけではない。私は2012年まで7年間、JAグループの機関紙である「日本農業新聞」の記者だった。全国のJA職員から、自爆にまつわる愚痴をたびたび聞かされてきた。JAグループは、組織の腐敗を招く原因を看過したままでいいのだろうか。
最後にもう一つ付け加えたい。筆者は、自爆をはじめJA共済の闇について、別のオンライン・メディアで記事を書いた。しかし、いったん公開されたその記事は、JA共済連がそのメディアに圧力をかけた結果、非公開となり、それは今もそのままだ。表現の自由を侵害してまで、臭い物に蓋をするようなことを続けていては、全国のJA職員たちが救われる日は永遠に来ない。


⚫️2021.8.31日本経済新聞📰

「サマリー」
日本の金融機関におけるマネーロンダリングチェックは、甘いと世界機関から指摘された

「思ったこと」
また、現場での、マネーロンダリングチェックにかかる事務が膨大になる→金融機関のコストあがる😔

「記事全文」


マネーロンダリング(資金洗浄)対策を審査する国際組織「金融活動作業部会」(FATF)は30日、対日審査の結果を発表した。小規模な金融機関などの対応が不十分だとして、実質不合格の判定となった。貴金属・宝石商や弁護士など金融以外の業種でも対策に不備があると指摘した。政府は省庁横断のチームをつくり、法定刑の引き上げを含む対策強化に動く。
FATFは39の国・地域が加盟し、200以上の国・地域にマネロン対策を勧告する。審査で「重点フォローアップ国」に区分けされたのは日本のほか米国や中国など計19カ国。事実上の合格となる「通常フォローアップ国」は英国、ロシアなど8カ国にとどまる。
日本は「観察対象国」は免れたものの、今後5年間で改善状況をFATFに3回報告する必要がある。改善が進まなければFATFから名指しで対応の遅れを批判されるリスクがある。
FATFは日本の「金融機関等によるマネロン・テロ資金対策」の評価を4段階で下から2番目の「M」評価とした。大手金融機関は「(資金洗浄)リスクについて適切な理解を有している」とする一方、規模が小さい一部の金融機関は「理解が限定的だ」と指摘した。
カギを握るのが「継続的顧客管理」だ。口座開設時の本人確認や目的の聞き取りといった対応は進みつつあるが、開設後もその口座を本人が使っているのか、取引に不審な点がないかの継続的なチェックが不十分だとFATFはみている。金融庁には、対策が不十分な事業者への行政処分を有効に活用するよう求めた。
金融以外でも宝石商や弁護士など一部業種を「リスクについて低いレベルの理解しかない」とし、NPOを隠れみのにした資金洗浄リスクへの理解も「十分ではない」とした。
FATFは2008年の前回審査の後の改善の進捗が遅いとして、日本を名指しで批判。日本は「マネロンに甘い国」との烙印(らくいん)を押された。日本政府は今回の結果を踏まえて複数の関係省庁で政策会議を設置したほか、金融庁と日銀が地銀などの対応状況を一斉検査する。
関連法令を改正して、マネロンの法定刑を引き上げたり、捜査・訴追の権限を強化したりすることも検討する。テロのリスクが身近な欧米を中心に、テロ資金源になるマネロン対策への視線は厳しい。対策が甘いと見なされれば、国内金融機関の海外での活動にも響く。実効性の高いマネロン対策が求められる。

⚫️2021.8.27日本経済新聞

「サマリー」
コロナのおわりが見えず、融資がこげつくことを想定して
銀行が引き当てを計上

「思ったこと」
今は、コロナの制度融資で、しかも元金据え置きして、赤字なのに金あまりの状況にあるとこもある
ただ、返済が開始になる(そろそろ)と、毎月が厳しくなる
その前に、経営基盤、財務基盤の改善は必須

「記事全文」


新型コロナウイルス禍が長期化する中で、全国15の地方銀行が将来発生すると予測する損失を前倒しで処理し始めた。実体経済が回復するシナリオを読み切れない上に長引く低金利政策で体力が低下しており、海外金融機関やメガバンクのように備えを厚くできていない。段階的な小幅処理を繰り返しながら、見えない不良債権リスクに対応しようとしている。
コロナ禍による不良債権リスクは発生前まで正常債権だった企業が突然、経営難に陥り顕在化するケースが多い。銀行は融資先を正常債権と不良債権に分類し、そのうち不良債権は要管理先、破綻懸念先、破綻先といった債務者区分を付けている。コロナで打撃を受けた企業がコロナ収束後に元通りに戻らなければ、突然、破綻懸念先や破綻先に転落する恐れがある。
正常債権の引当率は平均0.2%台(20年3月末、全国銀行ベース。一般貸倒引当金を貸出金で割り算出)。不良債権(同。約20%)と比べると100分の1の薄さだ。正常債権と不良債権を合算しても、8割の地銀が引当率1%未満。コロナ倒産が相次げば、資本不足に陥る懸念がくすぶる。
このため、全国の地銀の中で引当金を積み増す動きが出てきた。その一つが琉球銀行だ。
琉球銀行の川上康頭取は5月、21年3月期の決算でフォワードルッキング(FL)引当金を適用したと明らかにした。「コロナ禍が長引いたときに備え、現時点で可能な限り引き当てる」という。
FL引当金は経済の将来予測に基づいて引当金を計上する手法。導入で先行する米国の大手銀行では国内総生産(GDP)を使い損失率を予想する手法が一般的で、不良債権だけでなく正常債権も引き当ての対象になる。新型コロナ発生直後に米銀の決算が大幅減益になったのはこうした手法で多額の貸倒引当金を計上したためだ。
銀行の引き当て不足が米リーマン危機を深刻化させたとの反省から導入された。近い将来、不況期に入ると予測した場合、保守的に引当金を積み、景気が過熱しそうになると予測したら逆に引当金を取り崩す。
国際会計基準は18年、米国会計基準は20年から将来予測に基づいた引き当てができるようになった。日本では金融庁が19年に金融検査マニュアルを廃止し、将来予測に基づく引き当てを促してきた。だが、有価証券報告書にFL引当金の導入を明記した地銀はふくおかフィナンシャルグループと琉球銀行の2行・グループにとどまっている。
JPモルガン・チェースなど米5大銀行は21年4~6月期に引当金の取り崩しなどで62億ドル(約6800億円)を利益計上した。一時的に景気が悪化しても、回復局面に入れば引当金を取り崩す方向にカジを切るため、中長期的には引当総額は大きく変わらない。ただ、決算期ごとの変動が大きくなることから、収益力が乏しければ引当金の重みで赤字に転落する。健全性が悪化すれば金融当局の行政処分にもつながる。
100年に1度といわれるテールリスクに備えた新しい会計手法だが、最近はこうしたリスクが頻発している。一方、経済環境が世界的に好転し始めており、邦銀が日本、とりわけ各地の地方経済を予測するのは難しい面もある。
邦銀は決算期ごとの変動を嫌い、一定期間をかけて段階処理するところが多い。過去の不良債権危機時に処理が遅れ、先送りと批判されたのはその慣行が裏目に出たためだ。今回も大半の地銀はFL引当金の適用を先送りし、抜本的な引当金積み増しを避けた面もありそうだ。
一方、FL引当金まで踏み込まないものの、将来損失を段階的に処理し始めた地銀もある。コンコルディア・フィナンシャルグループや北日本銀行、山梨中央銀行など14行は正常債権や不良債権について会計手法を微修正し、業種別に細かく見たり損失率を変えたりした。「従来の基準をもとに、コロナ禍の実態に合わせて必要な修正を加えている状況」(デロイトトーマツグループの坂田響氏)という。

倒産率が歴史的な低水準にとどまる中でも、コロナ禍で経営難に陥る企業が出始め、不良債権処理も始まりつつある。群馬銀は今年3月、私的整理に入ったサンデンホールディングス関連で担保など保全されていない135億円が取り立て不能になる恐れがあると発表した。
21年3月期決算で引当金を増やした上位10行を見ると群馬銀のほか、鹿児島銀、八十二銀、京都銀、広島銀、伊予銀など財務的な余力のある銀行も目立つ。すでに不良債権に分類している融資の引当金を厚めに積んでいることがうかがえる。
21年3月期決算に計上した地銀・第二地銀全体の不良債権処理費用は前年同期比約25%増で、同期間の貸出金伸び率の約5%を大きく上回った。ただ、業界全体の自己資本比率は19年3月期に10%を下回り、体力の乏しい地銀が増え始めている。
手厚い国の支援策で不良債権予備軍が温存されている可能性もある。コロナ倒産が水面下で抑えられているいまのうちに、体力の範囲内で段階的にコロナ処理を進める手探りの状態が続いている。

210826日経

コンコルディア・フィナンシャルグループ傘下の横浜銀行と、東京きらぼしフィナンシャルグループ傘下のきらぼし銀行が業務提携する方針を固めた。新型コロナウイルス禍で課題となっている企業の事業再建を支援するため、中小企業向け金融で連携する。
週内にも業務提携で基本合意する。事業承継時のM&A(合併・買収)助言や買収資金を融通するストラクチャード・ファイナンス(仕組み金融)、医療機関向けの金融支援で連携する。コロナ禍で不採算事業の売却や事業承継の取り組みが加速しており、提携効果は大きいと判断した。
仕組み金融の分野は手間がかかる一方、中堅・中小企業向けの案件になるとメガバンクの収益目線に合わない面がある。これまで顕在化していなかった需要を掘り起こすことで、首都圏でのシェア拡大を目指す。
横浜銀行はソリューション営業部を立ち上げるなど近年、仕組み金融などの分野に注力してきた。きらぼし銀行はファンドの運営や医療機関への金融支援で強みを持っており、両行の機能を掛け合わせて地域のコロナ禍からの再生を支援する。

210826日経


「自然災害ガイドライン」の対象に、コロナの影響で収入などが減った人も加えた
新型コロナウイルスの影響で借金を返せない個人らの債務を減免する特例措置の手続きが空転している。売上高が激減した飲食店の経営者やコロナで雇い止めにあった派遣社員など1000件超の申請があったが、債務の整理が成立したのはわずか3件。すべての債権者の同意や弁護士の確保など課題は多く、苦境にある個人を支える制度になっていない。
新制度はローンの免除や減額を弁護士などの専門家が個人を支援する形で、債権者である金融機関と調整する。土台となるのは自然災害などで家屋が被災するなどして借金の返済が困難になった個人や個人事業主の債務を減免する仕組みだ。

「自然災害ガイドライン」と呼ばれ、全国銀行協会などが15年に定めた。20年12月にコロナの影響で収入や売り上げが減った人も対象に加える制度を始めた。ガイドラインの運営機関によると20年12月から21年6月末までの7カ月の申請は1085件にのぼった。このうち785件が金融機関などと債務整理の手続きに入った。ただし、債務整理で最終的な合意に至ったのはわずか3件にとどまる。
同意巡り難航も
手続きが進まない理由の一つに、コロナの場合は返済が難しくなった証明がしにくいという点がある。震災で家屋が倒壊した場合は、自治体から罹災(りさい)証明書の発行が受けられるため被害を認定しやすい。コロナにはこうした仕組みがなく、そのうえ債務者の属性も多様なので、借金の「棒引き」にあたる「債務の減免にためらう金融機関も少なくない」(亀山元弁護士)
自治体や公的機関が手掛ける制度融資もハードルになっている。金融機関の債務減免と同時に個人事業主が事業をたたむ場合、制度融資までを減免対象に含めるかは自治体ごとに見解が分かれる。社会福祉協議会の緊急小口資金の貸し付けも一部が減免対象として認められるケースもあるが、業務負荷の重さから協議会が迅速に対応できないケースも多いという。
債務減免にあたってはすべての債権者の同意が必要で、公的機関を含め減免に応じない債権者が1人でもいると手続きが進まなくなる。
コロナが原因で借金の返済に苦しむ人は複数の金融機関から借り入れているケースも多く、減免に後ろ向きな債権者が現れると手続きが滞りがちだ。
少ない支援報酬
自然災害ガイドラインの前身にあたる「個人版私的整理ガイドライン」では、第三者機関の運営委員会が中立的な立場から手続きの適正性などを審査した。奥国範弁護士は「コロナの影響は直接は表れないため、債権者と債務者で認識のずれが生じやすい。困難な判断を伴う案件は、中立的な機関が事実上の裁定のような助言を与える仕組みを整えるべき」と指摘する。
手続きを支援する専門家の確保も課題だ。「弁護士の業務が追いつかず、手続きでボトルネックが生じている」(金融機関関係者)。相談にかかる弁護士費用は政府が負担するが、金融庁が確保した21年度の予算は3600万円にとどまる。「(弁護士や税理士など)登録支援専門家はわずかな報酬で対応にあたっている」(奥弁護士)と、報酬の引き上げを期待する声が多い。
金融庁は申請の増加に対応するため、当面の予算の確保に向け調整に入る。手続きの迅速化についても今後の進捗状況を見極めた上で対応する方針だ。

210818日経


損害保険ジャパンがコールセンターで人工知能(AI)を使ったデジタルトランスフォーメーション(DX)を急ピッチで進めている。問い合わせの電話のうちすでに2~3割はAIによる完全自動対応を実現し、オペレーターにつながった電話も通話内容からAIが回答候補を提示する。対話内容をAIが要約する実験にも着手した。
さいたま市の損保ジャパンのコールセンターでオペレーターの横山瑞穂さんが電話を受けると、上下2つの画面がめまぐるしく動き始めた。上の画面では顧客との対話内容がLINEのような形でリアルタイムに書き起こされ、回答候補が示される。横山さんはそれらを見ながらテキパキと電話を応対し、3分ほどで受け付けは完了した。
裏で稼働しているのは2018年にNTTコミュニケーションズと提携し導入したAIだ。誰が応答しても短時間で同じレベルの回答ができるようになるため、採用した人材を即戦力化できる。
火災保険や自動車保険の問い合わせのうちオペレーターに電話がつながるのは全体の7割程度。簡単な内容なら、20年に導入した伊藤忠テクノソリューションズのAIが音声を聞き取るだけで受け付けを完了する。これまでは自動車損害賠償責任保険(自賠責)だけに対応していたが、7月には火災保険や自動車保険など主力商品の問い合わせにも使い始めた。
コールセンターが稼働していない時間でも別のAIが自動回答する。損保ジャパンの鈴木志保氏は「デジタル技術の活用で簡単な業務は自動で完了するようになった。オペレーターが対応する業務が高度なものに集中できるようになってきた」と手応えを感じている。
7月からは顧客とオペレーターの対話内容をAIが要約する新たな実証実験も始めた。通話内容を要約して代理店や営業店に連携する作業は問い合わせ1件に費やす時間の約3割にのぼる。要約作業のDXはコールセンターの生産性を高める。
要約で提携するのはAIスタートアップのELYZA(イライザ、東京・文京)だ。自然言語処理のAIは世界で進歩を遂げているが日本語は出遅れ気味だ。対話と対話内容を要約したデータのセットが英語に比べて圧倒的に少ないためだ。曽根岡侑也最高経営責任者(CEO)は「損保には大量のオペレーターがいて、そこから生まれてくる要約文を使うことで、海外と同じくらいのデータセットを作ることができる」と期待する。

210818日経

三井住友銀行は年内にも住所変更やキャッシュカード紛失時など全ての手続きを原則、スマートフォンアプリで完結できるようにする。年内にもシステムを改修し、これまでアプリで手続きができなかった日曜午後9時から月曜午前7時までの時間にも手続きできるように見直す。新型コロナウイルス禍で非対面取引へのニーズが高まるなかデジタル化を加速する。
三井住友銀行では毎月約500万人がスマホアプリを利用している。ただしスマホアプリで手続きが完結するのは現在、取引数の多い振り込みや残高照会など全サービスの約3割に限られる。各種変更手続きや投資信託の売買、カードローンの申し込みなどの手続きは店頭に足を運ぶか、パソコンのブラウザを使う必要がある。システム改修で利便性を高める。
手続きのデジタル化ではネット銀行が先行してきた。住信SBIネット銀行や楽天銀行は原則全ての手続きがアプリで完結するほか、5月にサービスを始めたみんなの銀行も店舗を持たないスマホ完結が強みだ。
有人店舗を構えるメガバンクや地方銀行などは高齢者を中心に店舗を訪れる顧客が多く、スマホでのサービス展開が遅れていたがコロナ禍で取り組みが加速している。三井住友銀やりそな銀行、埼玉りそな銀行は住宅ローン手続きが完結するアプリを導入したほか、三菱UFJ銀行は年内にも保険や証券、信託などの金融サービスを一体提供するアプリを投入する。
三井住友銀はシステム改修後も店頭のサービスは続ける。


210818日経


金融庁が金融機関への検査体制を強化する。機動的に経営実態を把握できる通年検査の対象に新生銀行とあおぞら銀行を追加するほか、融資の焦げ付きや市場運用での損失リスクに目配りする業態横断のチームも新設した。監視の網の目を細かくし、新型コロナウイルス禍や低金利環境の長期化に伴うリスクの芽に先手を打てるようにする。
通年検査は事前に特定の検査項目を決めず、幹部らと対話するなかで課題をあぶり出す手法だ。金融機関と当局の意思疎通を密にし、急な社会情勢の変化などに迅速に対応しやすくする狙いがあり、2013年に3メガバンクを対象に始まった。
検査官が一定期間、本支店に立ち入って提出された資料を確認したり、担当者や幹部をヒアリングしたりするそれまでの検査と違い、文字通り年中、取締役会や経営会議の議事録、融資審査の書類などあらゆる経営資料を常時チェックするのが最大の特徴だ。

期間を隔てる立ち入り検査では結果の通知書をその都度、交付するが、通年検査では銀行との継続的な議論を重視する。
米国では大手銀行に対して、通貨監督庁(OCC)から専属の監督官が各行内に常駐し、実際に取締役会に参加したり、経営陣らと日常的にやりとりしたりしながらリスクを洗い出す。OCCのほか、米連邦準備理事会(FRB)なども立ち入り検査の権限を持っている。通年検査は米国の常駐検査と似た効果を狙っている。
金融庁は18年に三井住友トラスト・ホールディングス(HD)、りそなHD、ゆうちょ銀行、農林中央金庫を通年検査の対象に追加し、新たに21事務年度(21年7月~22年6月)から新生、あおぞら両行を加えた。これで主要行すべてが通年検査の対象になる。
新生銀行は、大株主のSBIホールディングスが株主総会で工藤英之社長ら一部の経営陣の選任に反対票を投じるなど対立姿勢を強めており、監督上の重要度が高まっている。海外のノンバンクへ出資するなど事業を拡大する一方で、金融庁からリスク管理上の情報共有の不備を指摘される事例もあった。
通年検査で銀行との連携を強化することで、経営状況をつぶさに確認する狙いがある。あおぞら銀行も債権買い取りや不動産関連融資で他行との差別化を打ち出しており、個別把握の重要度は増している。
金融庁は通年検査の拡大とあわせて、「信用リスク」と「市場リスク」を業態横断で監視するチームも新設した。足元ではコロナ禍で飲食・宿泊業界を中心に経営が悪化している。政府保証が裏付けの実質無利子・無担保融資の活用で倒産件数は抑えられているものの、長引けば主力の融資先が傾き、不良債権が増えるリスクもくすぶる。
融資の焦げ付きに備えて貸倒引当金を積むための基準だった「金融検査マニュアル」は19年に廃止しており、引き当ての判断は金融機関に委ねられている。金融庁もコロナ禍での資金繰り支援を最優先に求めているが、経済活動の停滞長期化で支援と健全性維持のバランスは重要性を増しており、先回りして警戒を強める。
超低金利環境の長期化で、国内金融機関は海外を含めて有価証券投資への傾斜を強めている。リスクに見合った体制が整っていないのに多額の資金をハイリスクの運用商品に投じている例もある。こうした市場リスクは主要行にとどまらず、地方銀行や生命保険会社にも通じる。
このため、これまで監督局が担ってきた地銀や生保への検査業務を総合政策局も分担し、主要行への検査と同じ目線で市場リスクを一元的に把握する体制を整備。海外運用に潜むリスクの芽の早期発見につなげる。監督局にあった一部のフィンテック企業や貸金業者への検査も総合政策局に移した。
金融庁が18年に検査局を総合政策局に改組したのは、かつて「重箱の隅をつつく」と批判された手法を改め、検査機能を高めるためだった。7月に就任した中島淳一長官は直近まで総合政策局長をつとめ、検査への課題意識が強い。「先祖返り」せず、いかに効率的にリスクの芽を摘めるか。金融庁の検査能力も高度化を求められている。

210811日経

川崎信用金庫は川崎市多摩区の登戸支店の余剰スペースを活用し、サテライトオフィスサービス「ZXY(ジザイ)」を16日から始める。新型コロナウイルス対策として郊外の住宅地にリモートワーク用のオフィスを設ける法人需要に対応する。支店3階のホールと応接ブース部分の約300平方メートルをリノベーションした。不動産業のザイマックス(東京・港)に賃貸し、法人会員制サテライトオフィスとして運営を委託する。
利用時間は平日の午前7時から午後9時まで。1人用の個室を40部屋用意し、契約をした法人の従業員であれば、15分310円で利用できる。

210804日経

戸建て住宅のオープンハウスは金融業に参入する。住宅の購入者が入居後の電気代などを一括で引き落としできるネット銀行を5日に開設。住宅の売却後も安定して決済手数料を得られる事業モデルを構築し、年間1万件規模の契約数を目指す。将来は独自の住宅ローンの提供やネット銀行システムの中小工務店への開放も視野に入れる。

210803日経


▽…収益環境が悪化している地方銀行の再編を後押しするため、政府や日銀がつくった新制度のこと。店舗やシステムなどの固定費を抑えるには、地銀同士の合併や経営統合が有力な選択肢となる。菅義偉首相は自民党総裁選中の2020年9月に「将来的には数が多すぎるのではないか」と発言し、地銀問題を重要政策に掲げた。
▽…20年11月に施行した独占禁止法の特例法では、同一県内での地銀同士が合併し融資のシェアなどが引き上がったとしても寡占禁止規定の適用除外とすることとした。22年の統合を目指している青森県の青森銀行とみちのく銀行が初の適用となる見通しだ。
▽…7月には改正金融機能強化法が施行し、政府が再編にかかる費用に補助金を交付する制度も始まった。システム統合などが対象で費用全体の3分の1、額としては30億円が上限となる。日銀は統合などで経費削減を実現する地銀の当座預金に年0.1%の金利を上乗せする制度の申請を3月に始めた。いずれも時限措置で、再編を足踏みしていた地銀が検討を加速するきっかけとなっている。

210802日経

りそなホールディングス(HD)は銀行の店頭で顔認証だけで入出金や振り込みができる仕組みを2022年度中にも実用化する。金融機関として初の取り組みとなる。ジェーシービー(JCB)、大日本印刷、パナソニックと4社連合を組み、小売店などでも「顔パス」で決済できる共通インフラを構築する。高い利用者保護が求められる金融機関で顔認証(総合・経済面きょうのことば)が本格化すれば普及の契機となりそうだ。
大日本印刷やパナソニック子会社のパナソニックシステムソリューションズジャパンが、顧客の本人確認や画像認識の技術を提供する。
りそなHD本社で今年度中に試験的に導入し、来年度にも傘下銀行の支店で活用する。利用者はあらかじめ顔情報をシステムに登録すれば、窓口で送金などの手続きができる。
通帳やキャッシュカードは紛失したり、パスワードを盗み取られたりして不正利用されるリスクが伴う。顔認証の場合は何も持たずに銀行の店頭で手続きできるために安全性は高くなる。
4社連合はりそなでの実用化を皮切りに、顔認証を新たな決済手段として普及させることをめざす。JCBの加盟店などを活用し、小売店やホテルなどで「顔パス」決済の導入を促す。
店頭でカメラに顔を映すと、登録された顔情報と照合されて支払いができる仕組みを想定する。キャッシュレス決済ではスマートフォンで特定のアプリを開く手間がかかる。普及すればより円滑な決済が可能になる。
パナソニックと大日本印刷が画像認識の技術、JCBは加盟店を活用した販路の開拓を担う。りそなは個人の資産や暗証番号データなどを預かるノウハウを蓄積しており共通基盤では顔データを保管する役割を担う。
クレスト(東京・港)の調査によると、国内で顔認証技術の利用に抵抗があると回答した人は6割に上る。プライバシー保護の観点から懸念が強い。利用者が個人情報である自らの画像が金融機関や加盟店などで使われることに抵抗感を覚える可能性もあり、サービス拡大には課題もある。
中国ではアリババ集団傘下の決済アプリ「支付宝(アリペイ)」などが顔認証による決済手段を提供し、幅広く普及している。
調査会社の米グローバルマーケットインサイツによると、顔認証技術の市場規模は26年に120億ドル(約1兆3000億円)と20年から年平均18%で成長する見通し。別の試算では、足元の日本の規模は中国の半分程度にとどまっている。

210730日経


取引先に脱炭素を促す融資商品が広がっている
中小企業の脱炭素化に向け、地域金融機関の役割が強まっている。地方銀行が地元の融資先に対して、温暖化ガスの排出抑制などに向けた事業転換を促すための融資が広がる。6月に改正した産業競争力強化法などで、金融機関が利益を得られる仕組みも整った。金融庁も年度内に金融機関を後押しする指針をつくる。今後は人材やノウハウの共有が課題となる。

静岡銀行は「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」と呼ぶ新たな手法を使った融資を1月に中小向けで初めて契約した。企業活動が環境や経済に与える影響を分析し、改善策を後押しする融資で、自動車シート縫製の平野ビニール工業(静岡県磐田市)を対象とした。
静岡経済研究所や日本格付研究所と連携し、事業全体を対象に課題や影響を分析。気候変動対応に限らず、国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」に沿った目標を設けた。平野ビニールは2030年までに営業車10台全てをエコカーに切り替えることや、外国人の技能実習生の社宅整備などを目標にした。気候対応ではエコカー効果を含め具体的な温暖化ガスの排出量を測定しており、太陽光発電の導入などによる削減計画もつくる。
静岡銀はさらに9月までに10件を決定する予定だ。金利の引き下げなどの優遇はないものの、金融機関から環境や社会へのお墨付きを得られる仕組みとして注目されている。
温暖化ガスの排出削減などに関わる数値目標の達成で段階的に金利が引き下がる融資「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」も広がっている。滋賀銀行は地銀で先駆けてSLLを始めており、これまでに関西の工事業者など8件に対して計約107億円を実行した。外部評価は格付投資情報センター(R&I)などと連携している。今年度に入ってからは、肥後銀行、京都銀行、群馬銀行、八十二銀行などが相次いでSLLの取り扱い開始を発表している。
脱炭素融資を後押しする政策も相次ぐ。6月に成立した改正産業競争力強化法は、SLLなどでの金利引き下げを政府の予算で肩代わりする制度を盛り込んだ。政府から認可を受けた金融機関は利子補給を受けられる。10年以上の長期計画の設定や、7年以上の融資期間などが条件だ。目標達成により金利が切り下がり、企業は最大で0.2%の優遇を受けられる。
経済産業省は目標の妥当性や進捗を審査する外部機関を募集し、8月2日に制度が施行する予定だ。「既に多くの民間金融機関から問い合わせが来ている」(担当者)という。
日銀も今月16日、金融機関を後押しする新制度の骨子案をまとめた。金利0%で長期資金を供給し、当座預金にかかる金利が0%となる部分を増やすことでマイナス金利の負担を軽減できる措置も盛り込んだ。
金融庁は年度内にも金融機関が融資先に脱炭素を促す上で参考にするための指針をつくる。企業との対話のあり方や有効な金融機能の提供方法などを示すとみられる。
都市部の大手企業では既に独自の目標や改善策を公表しているケースが多く、全国の企業数の99%を占める中小企業への浸透が次の課題となる。企業側は外部の評価機関などへ金利以外の追加の費用を払わなければならない。ある地銀関係者は「地元の中小企業と大企業の認識の差はかなり大きい」と指摘する。大手企業はサプライチェーン(供給網)全体での環境対策を進めており、対応が遅れた地方の部品メーカーなどは取引が停止されるリスクも高い。
融資先の脱炭素を促す取り組みは現状では、大企業を融資先に持つメガバンクや比較的規模の大きい地銀にとどまる。地銀自身に人的資源やノウハウが不足することも多く、規模によって取り組みの温度差がさらに開く可能性が高い。新たな制度や指針が絵に描いた餅にならないよう、地道な取り組みを支えるための施策も求められる。

210730日経

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が業種やグループの垣根を越えた金融連携に踏み出す。大和証券グループ本社や東京海上ホールディングス、フィンテック企業など他社を含めたサービスをスマートフォンで一体提供する基盤をつくる。三菱UFJ銀行は80兆円近い個人預金を抱える。顧客接点の多いメガバンクの一角が本腰を入れることで、海外と比べて遅れていたスマホ金融の普及が進む可能性がある。

年内にも銀行や保険、証券、信託など様々な金融サービスを一体提供するスマホ向けアプリを投入する。MUFGはアプリを通じ、個人顧客が株式や投資信託、クラウドファンディングへの応募、保険など幅広い金融商品を購入できるようにする。API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース、総合2面きょうのことば)という仕組みを使って各社とデータ連携し、利用者が金融資産を一元的に管理しやすくする。
自社やグループにとらわれず、幅広い金融機関を招き入れる。大和証券グループ本社傘下のスマホ証券「コネクト」のほか、ウェルスナビ、少額資金を募集するクラウドファンディングのファンズ(東京・港)が参加する。
傘下のauカブコム証券や三菱UFJモルガン・スタンレー証券のほか、東京海上ホールディングスとも組む。当初は10社程度が参加し、順次増やしていく方針だ。
LINEやKDDIなども金融サービスを展開しているが、証券や投資信託など個別の金融商品の提供にとどまる。国内では自社グループのサービスを中心に提供する例が多く、1つのアプリで幅広い資産運用サービスを提供するのは珍しい。
日本のモバイル金融は米国などから立ち遅れている。米調査会社のアップアニーによると、日本での2020年の金融アプリのダウンロード回数は1億回強。米国の約5億回と比べて少ない。MUFGは「脱自前」にカジを切り、モバイル金融の普及につなげる。
今秋にも施行する「金融サービスの提供に関する法律」では、銀行、証券、保険など幅広い金融商品の販売仲介ができる「金融サービス仲介業」が設けられる。IT(情報技術)企業などが仲介業に参入する見通し。MUFGは先行して他業種と連携する枠組みをつくり、競争激化に備える。
買い物などで得たポイントを資産として運用する機能も持つ。三菱UFJ銀行が抱える個人の約3400万口座を土台に、包括提携するNTTドコモの「dポイント」(約8200万人)、auカブコム証券に出資するKDDIなどが参画する共通ポイントサービス「Ponta」(約1億人)の利用者を引き込みたい考え。
海外ではAPIを生かし、米ウォルマートなどが金融機能を提供する。金融と金融以外の垣根は低くなっており、MUFGも将来的により広いサービス網の構築を念頭に置く。ただ、どこまで他社と情報を共有するかは個人情報保護との兼ね合いで課題になる。

210729日経

世界各国・地域のマネーロンダリング(資金洗浄)対策を調べる国際組織による対日審査結果の概要が28日、わかった。預金口座を開設した後の本人確認や取引内容のチェックなど「継続的な顧客・取引管理が不十分」だと指摘。取引先企業の背後にいる実質的な支配者の情報入手の体制にも課題があるとした。この結果、日本は審査で再び実質的な「不合格」となり、より厳しい対策を求められる。

「金融活動作業部会」(FATF)は39の国・地域が加盟し、190以上の国・地域にマネロン対策を勧告する国際組織。日本は評価がより低く国名を公表されるリスクがある「観察対象国」は免れたが、FATFは8月に公表する対日審査の報告書で実質的な不合格の「重点フォローアップ国」と評価する見通しだ。
他の重点フォローアップ国は米国、カナダ、中国など約20カ国で、実質的な合格となる「通常フォローアップ国」は英国、ロシアなど約10カ国にとどまる。「重点」となった国は今後5年の間に改善状況をFATFに3回報告する必要がある。
今回の審査で問題視されたのが「金融機関による継続的顧客管理、取引管理が不十分」な点だ。日本は米欧などと比べ銀行口座の開設が容易とされるが、不稼働口座などが使われた際の本人確認や海外送金など取引内容のチェック体制には国際的に厳しい視線が注がれてきた。2018年に愛媛銀行から総額5億円を超える資金が香港経由で北朝鮮に流れる事件が起きたとされる。
金融庁は19年前後から、口座開設時の厳格な本人確認を要求。用途などを聞き取り項目に加えたほか、職場や住所から離れた支店での口座開設は原則、拒んでいる。だが海外では本人確認が取れない顧客の口座は使えないようにするなどより強い措置をとるのが容易で、不正防止の実効性をさらに高めるよう求められた形だ。
FATFは「法人などの実質的支配者情報の入手が不十分」とも指摘した。口座名義の企業は問題なく見えても、実際はいわゆるフロント企業で、マネロンに悪用されるリスクもある。取引先企業の実質的な支配者を確認するよう求める規制を厳格化する国も増えており、日本に対してもより踏み込んだ取引先の実態把握を求めた。
金融機関への監督行政についても「検査・処分実績が不十分」との指摘があった。国内でも不正を検知するシステム構築などが不十分な地域金融機関は大手行よりリスク管理体制や本人確認が緩い傾向があり、対応が急務だ。金融庁と日銀は今夏にも、地域金融機関のマネロン状況について調査し、不備があれば法律に基づく報告徴求命令や業務改善命令を出すことも視野に入れている。
マネロンに対する制裁が不十分なことも問題視された。審査では「マネロン罪の訴追・処罰の実績が不十分」「マネロン収益や犯罪供用物の没収実績が不十分」と指摘。テロ資金も「テロ資金供与罪の射程が狭い」「24時間以内のテロリストの資産凍結が未達成」などと改善を求めた。
マネロンを封じこめるためには金融庁や警察庁、法務省など省庁横断の対応が求められる。このため政府は内閣官房に担当チームを設置し、犯罪収益移転防止法など関連法令の改正案づくりに着手。マネロン行為への厳罰化を検討する。
テロ組織や大量破壊兵器拡散に関与する疑いのある国家、租税回避をねらう個人など、マネロンに対する世界の規制は年々厳しくなっている。日本のマネロン対策は、テロを経験し危険と隣り合わせにある欧米と比べて緩いと指摘されてきた。国際規制の抜け穴とならないよう官民一体の対策が急務になっている。

210726日経

新型コロナ禍を機に世界でキャッシュレス化が加速している。フィンテック企業などが決済で攻勢をかけ、伝統的な金融機関の牙城が揺らぐ。手軽なスマートフォンの送金や決済は欧米からアジア・中南米に広がる。通貨のデジタル化は、個人の購買や信用情報のビッグデータにも直結する。2千年を超える貨幣の歴史が迎えた大転換。非金融も交えた決済の覇権取りは金融の勢力図を塗り替える可能性を秘める。
(関連記事総合・経済面に)
デジタル金融の最前線をいく米国では暮らしが一変した。ニューヨークに住む高校生ダニエル・モーティマー君(18)は、親からお小遣いを送金アプリ「ベンモ」で受け取る。「外での支払いは99%がアプリかカード。財布に現金は5ドルくらいしかない」。友達とカフェで割り勘するときもベンモで決済する。
2年で送金2.4倍
現金以外の支払い手段はこれまでクレジットカードやデビットカードだった。コロナ下ではスマホ決済や送金も広がった。独調査会社スタティスタによるとベンモの送金額は1~3月に510億ドル(約5兆6000億円)と2年で2.4倍に急増した。米アクセンチュアは世界で30年までの10年間に48兆ドル、2兆7000億件の決済が現金からキャッシュレスにかわると予測する。

脱現金は世界に共通するが、新興国での意義はより大きい。近隣に銀行がないといった理由で新興国の口座開設のハードルは高い。キャッシュレス化によって、低所得者は口座なしでもスマホで決済や送金ができるようになる。街中の小売店などが金融機関のような役割を果たし、利用者が現金を持ち込むとモバイル口座に入金できる。
「デジタル化で決済が変われば、世界で銀行口座を持たない17億人の成人に金融サービスを提供できる」。国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は強調する。IMFによれば、誰もが送金や決済ができる「金融包摂」が進んだ国ほど国内総生産(GDP)成長率が高くなる傾向がみられた。
決済アプリで入出金の履歴が積み重なれば、零細店でも融資に道が開ける。都市部の出稼ぎ労働者が地元にデジタル送金することで、都市と地方のお金のめぐりもよくなる。キャッシュレス化は経済成長と所得格差を縮小する効果をもたらす。
スマホ送金を手がけるブラジルのヌーバンクは利用者が4000万人に拡大した。ダビッド・ベレス最高経営責任者(CEO)は「中南米人口の50%はいまだに銀行口座を持たない」と語る。
治安の悪いブラジルでは強盗のリスクが高いが、「現金を持たないスマホ集金で安全になった」。サンパウロ市内のヤクルトレディー、テレサ・レイテさんは語る。アフリカでも携帯電話を使った送金サービスの「エムペサ」がケニアなどで社会インフラ化した。
不正利用懸念も
ただし、急速な脱現金化には死角もある。ひとつは個人のプライバシーの保護だ。堅牢な金融機関システムの外側にあるスマホアプリとの連携が増えると、個人情報とひもづいた金融データが拡散しかねない。偽の通販や金融機関のサイトに誘導して個人情報を盗むフィッシングサイトは20年に世界で約20万件に達した。
巨大な顧客基盤を持つテック企業に金融取引が集中することへの警戒感もある。特定企業のデータ独占は、独占禁止法や経済安保の摩擦を引き起こす。中国では利用者が10億人超の決済アプリ「アリペイ」に当局のメスが入った。決済情報を活用した小口融資などで高収益を得ていたが、事業分離を迫られた。
日本総合研究所の清水聡主任研究員は「フィンテックの発展には、新サービスに規制が追いつき利用者の保護が確保されることが不可欠」と指摘する。キャッシュレス拡大によるメリットを生かすには、個人情報保護とセキュリティー確保が必須条件になる。


210714日経

金融庁と日銀は今夏にも、地方銀行や信用金庫などの地域金融機関を対象としたマネーロンダリング(資金洗浄)対策の一斉調査に乗り出す。8月公表の国際審査で、不正送金件数が高止まりする日本は金融機関の内部管理体制などの不備が指摘される見通し。不正送金の防止策を点検し、不十分だと判断すれば金融機関に対策を求める。
各国・地域のマネロン対策を調べる国際組織「金融活動作業部会」(FATF)は8月に、2019年秋に実施した日本の審査結果を公表する。前回08年の国際審査では本人確認などの項目で日本が厳しい評価となった経緯がある。今回の対日審査でも複数の不備が指摘され、実質的な不合格を意味する「重点フォローアップ国」と評価されたもようだ。

警察庁によると、マネロンが疑われる取引は20年に43万件あった。ネットバンキングを通じた不正送金は1734件で、5年前と比べると16%多い。海外と比べて口座開設が容易な日本は預金口座数がおよそ8億あり、使われていない口座が不正送金に悪用される例がある。
とりわけ不正を検知するシステム構築などが不十分な地域金融機関が問題にされる可能性が高い。大手行に比べてリスク管理体制や本人確認が相対的に緩い傾向があり、かねて課題とされてきた。20年秋に発覚した「ドコモ口座」を通じた不正送金では地銀が主な標的となった。
このため金融庁と日銀は今夏、連携して地域金融機関のマネロン対応の状況を調査する。地域金融機関は数が多いため、金融庁の要請を受けて調査の一部を日銀でも担う方向だ。日銀は監督権限を持たないものの、金融機関との契約に基づく「日銀考査」を実施している。金融機関の了承を得た上で考査結果などを金融庁と共有する見通しだ。
金融庁は21年2月にマネロンやテロ資金供与への対策に関する指針を改正し、顧客の属性や取引内容によって不正を犯すリスクを分類した上で、厳格に顧客管理をするよう求めている。
現時点での対応状況を確認し、不備があれば法律に基づく報告徴求命令や業務改善命令を出すことを視野に入れている。国際社会の脅威となっているサイバーセキュリティー対策についても調査する方針だ。
金融庁と日銀は21年度から検査・考査の一体運用で連携を強化している。各調査の実施状況や計画、リスク認識などの情報を共有しながら作業を分担することで合意していた。
テロ資金への流用を阻止するためマネロンに対する国際社会の監視の目は厳しくなっている。金融機関にとっても社会的評価を損なったり、海外当局から制裁を受けたりするリスクを軽減するためにマネロン対策の強化は大きな課題になる。


210714日経

日銀が企業の気候変動対策を促す新たな資金供給策を導入する。投融資の判断は民間にゆだね、自らは後方支援に徹するのが特徴だ。中央銀行としての中立性を保ちつつ脱炭素を促す「呼び水」の制度と位置づけるが、効果は上がるのか。

「新たなアプローチ」。黒田東彦総裁は6月18日の政策決定会合で導入を決めた資金供給制度をこう呼んだ。カギは日銀が市場に直接介入するのを避ける点にある。
骨子は15~16日の決定会合で決めるが、投融資の対象を判断するのはあくまで民間の金融機関。日銀はその原資を好条件で供給する「バックファイナンス」に徹する。
これにより金融機関の低利融資などを促し、企業が脱炭素に向けた設備投資をしやすい環境を整える。「市場の中立性に配慮した仕組みだ」と日銀は主張する。
揺れる米欧中銀
中央銀行は伝統的に特定分野への介入を嫌う。大きな力をもつがゆえに市場をゆがめる危険があるためだ。世界の中銀でも、この問題が脱炭素に取り組むうえで大きな対立点になっている。
例えば欧州中央銀行(ECB)。量的緩和に伴う債券購入で、グリーンボンド(環境債)などの比重を高めるべきか、中立を保つべきかで揺れてきた。ドイツ連邦銀行のワイトマン総裁らは「中銀が特定産業を罰したり奨励したりすべきでない」と強調。ラガルド総裁やシュナーベル専務理事は市場そのものが気候変動の深刻さを理解していない可能性を指摘し「誤った市場の判断を、中銀が基準にするのは適切でない」と反論してきた。
結局、8日には社債の購入に際して気候変動への取り組みなどを勘案して配分を決める方針を打ち出した。
米連邦準備理事会(FRB)でも意見は割れる。パウエル議長が「気候変動への対策はFRBの優先事項でなく選挙で選ばれた人びとの役目だ」と主張。ブレイナード理事やデイリー・サンフランシスコ連銀総裁は「物価や雇用に影響する気候変動を無視すべきでない」と反論している。
この論争がやっかいなのは、仮に中立性をめぐる問題が決着しても、では具体的にどんな対象をグリーンとみなすのか、いわゆるタクソノミー(分類)をめぐる論争が待ち受けている点だ。
日銀の新制度はこうした正面からの論争を避けつつ小さな一歩を踏み出す折衷案といえる。「違いを際立たせるより、まず可能な範囲で二酸化炭素(CO2)の排出削減に貢献するという方向性を大事にした」と関係者は明かす。
気候変動対応は中銀の使命か、という論争も巧みに棚上げした。「長い目で見たマクロ経済の安定に資する」。黒田総裁は評価を新制度に限定し、日銀の使命と矛盾しないとの解釈を示した。
英国が3月、気候変動への対策を正式に英イングランド銀行の使命と定義し、立場を明確にしたのとは対照的だ。
対立点を際立たせない日銀流には一長一短がある。利点はスピードで、気候変動対策で「日銀が先頭に立てば国際的な発言力も高まる」との期待も行内にはある。
「見せかけ」警戒
一方、民間からは「唐突な動きだ」との声も上がる。幅広い議論と支持の後ろ盾を欠く新制度が小粒で中途半端な中身にとどまれば、呼び水の効果も発揮しにくい。
企業に長期かつ低コストの資金を流すアメとして、脱炭素への投融資を増やした金融機関の当座預金に金利を払う案も出ている。だが投融資の規模が膨らめば、気候変動と日銀の役割について正面からの議論は避けられない矛盾を抱える。
判断を民間に丸投げすれば、まやかしの投融資が増えるとの批判もある。日銀はグリーン・ウォッシュ(見せかけの気候変動対策)に厳しい目が向くなか「金融機関の規律は働く」とみるが、それには情報開示の拡充などが前提になろう。
中銀の中立性と脱炭素をめぐる論争の間隙を突き、そろりと一歩前に出た日銀。議論の行方に一石を投じうるその手法は、課題もまた多い。

210713日経

日銀は15~16日の金融政策決定会合で、金融機関の気候変動対応の投融資を促す新制度の骨格を決める。銀行がマイナス金利の適用を回避しやすくするといった優遇策を検討する。欧州中央銀行(ECB)なども気候リスクへの政策対応を進めており、脱炭素に向けた中央銀行の動きが加速している。(関連記事金融経済面に)
日銀は6月会合で金融機関の気候変動対応の投融資を後押しする資金供給策の創設を決めた。今回の会合で骨子案を決め、具体的な制度設計を秋にかけて詰める。運用は年内に始める計画だ。
新制度は既存の成長分野向けの資金供給策の後継と位置づける。脱炭素につながる企業向け融資をしたり環境債を買ったりする金融機関に対し、低利で数年単位の長期資金を供給する見通しだ。マイナス金利の負担を軽減するため、利用額に応じて金融機関の日銀当座預金にかかる金利を0%にする案を検討する。

210712日経

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、失業や収入の減少で住宅ローンの返済に行き詰まる人が増えている。金融機関は一時的な返済猶予には応じているが、状況が改善しない場合は、物件を売却してローン清算に充てる任意売却などの対応を迫られる。コロナ禍で広がる「我が家の危機」を追った。(中村信平)
「残債務全額を直ちにご返済ください」。今年1月、埼玉県に住む男性(38)のもとに金融機関から一通の封筒が届いた。入っていたのは住宅ローン残高の一括返済を求める催告書。「ついに来たか……」。男性はうなだれつつ、家を手放す覚悟を決めた。
2018年2月、結婚を機に同県草加市に2階建て一軒家を購入した。相手の女性には小学生以下の娘が3人おり、「子どものために」と広めの物件を選んだ。借入額は3350万円。月10万円の35年ローンを組んだが、美容品卸の営業職で収入は安定していた。19年には長男も生まれた。
だが、穏やかな生活はコロナ禍で一変した。取引先の美容院の休業などで営業成績が下がり収入も急減。転職し契約社員として倉庫管理会社を2社掛け持ちしたが、20年7月からローンが返せなくなった。年14.5%の遅延損害金も発生した。
妻も働きに出るため、家族で男性の実家に移ったが、妻と男性の両親の関係が次第に悪化し、20年10月に離婚。子どもとも離れて暮らす。
約半年間の滞納の末に届いた催告書は当然の結果だった。滞納がさらに続けば家を差し押さえられ、競売にかけられる可能性が出てくる。男性は家を売ってローン返済に充てる任意売却を決断。21年3月、不動産会社に駆け込んだ。
「任意売却に関する相談はコロナ禍で急激に増えた」。男性が相談した不動産会社「明誠商事」(東京)の飛田芳幸社長は語る。新型コロナで給料が下がったり、仕事が減って残業代が出なくなったりした会社員などの相談が多いという。
相談は20年夏ごろにいったん落ち着いたが、今年に入って再び増加に転じている。「ローンの返済条件の変更などで支払いを維持してきた人も、コロナ禍の長期化で収入が回復せず、限界が来ている」とみる。
任意売却は、ローンが払えない場合に金融機関の合意を得て自宅を売却する仕組みだ。金融機関が裁判所に物件の差し押さえを申し立てて競売にかけると、自宅を追われるだけでなく市場価格よりかなり低い価格で売却され、多額のローンが残る。「任意売却なら売却までに時間的な余裕ができる。競売と違って情報が公開されることもない」(飛田社長)という。
任意売却を選ぶ人が増える中、弱みにつけ込む悪質な不動産業者も現れている。住宅ローン返済に関するコンサルタント会社「クラフトレジデンス」(東京)がインターネット上に設けた相談フォームには複数の被害相談が寄せられている。
「任意売却後に残ったローンは支払わなくていい」と誤った情報を伝えられ、支払いをやめたところ金融機関から一括請求の催告が来たり、打ち合わせ代金と称して3万円を請求されたり。相場より数百万円低い査定額を提示されたケースもあった。
同社の山口剛平社長は「窮状につけ込もうとする悪質な不動産業者が増える恐れがある。住宅ローンとの二重の苦労を抱え込まないよう、複数の業者を比べるなど慎重に選択してほしい」と呼びかけている。

210709日経

米グーグルが日本で金融事業に本格参入することが8日までにわかった。国内のスマートフォン決済会社を200億円超で買収し、インドや米国に続き日本でも2022年をめどに自社グループで送金・決済サービスを始めるもようだ。巨大IT(情報技術)企業の参入で金融と異業種の合従連衡が一段と加速する。
グーグルが買収するのはスタートアップ企業のpring(プリン、東京・港)。17年に決済代行のメタップスや、みずほ銀行などが共同出資して設立した資金移動業者だ。複数の関係者によると、グーグルがみずほ銀行などプリンの既存株主から全株式を200億~300億円で取得する方向で最終調整に入った。
日本は先進国のなかでもキャッシュレス決済の普及が遅れており、開拓の余地が大きいと判断したようだ。米国のITプラットフォーマーは膨大な顧客基盤やデータを生かし、金融に事業領域を広げている。グーグルの参入で日本でもデジタル金融を巡り既存の金融機関やネット企業との競争が激しくなる。
グーグルの広報担当者は日本経済新聞の問い合わせに対し「噂や臆測にはコメントしない」と回答した。
プリンは銀行口座をひも付けて入金しQRコード決済ができるアプリを手がける。登録者は数十万人程度とみられるが、使い勝手の良さが若年層を中心に支持を集める。

210707日経

大手銀、税収納を電子化 23年度に
自治体へデータ一括送信 年600億円のコスト圧縮へ
2021年7月7日 2:00 [有料会員限定]







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QRコードがつけば、その後の事務手続きはペーパーレスになる
3メガバンクとりそな銀行は紙でのやり取りが主体だった納税手続きを電子化する。2023年度からQRコードを読み取って自動車税などが払えるようになるのにあわせて、銀行と自治体間の納付書類のやり取りを電子化。煩雑な紙のやり取りを減らし、電子データを一括送信することで自治体
側の確認の手間も省く。納税者から銀行、自治体まで紙がつきまとう現在の納税業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めて、年間600億円超かかっているコストの圧縮につなげる。
現在、自治体が自動車税や固定資産税などの納付書類を送ると、納税する個人や法人は(1)納付書を銀行に持ち込む(2)コンビニで納付する(3)「Pay-easy(ペイジー)」などの収納サービスで納付する――の手法がある。国税の約7割、地方税の4割は銀行窓口で支払われており、持ち込まれる納付書類はメガバンク1行で年間800万件規模にのぼる。
問題は生活者が窓口で支払った後だ。銀行は受け取った納付書類を専用の事務センターに集約して仕分け・集計作業しているが、銀行と自治体間のやり取りは電子化されていないため納付書の現物を自治体に送付。約1700ある自治体ごとに納付書の書式が異なるため、機械化できず、多大な労力をかけている。全国銀行協会は税公金の納付業務にかかるコストは銀行界全体で年間622億円程度にのぼると試算する。
事務が煩雑で採算にあわないとして、三菱UFJ銀行は今年3月、店舗がない地域の194自治体の税公金の収納業務から撤退した。

納付書を受け取る自治体の負担も重い。コンビニや銀行から送られてきた納付済みの通知書をもとに納税者のデータと手作業で突き合わせる必要がある。納税額が手書きされている納付書もある。
税公金の納付に伴う社会的コストを減らすため、総務省は23年度以降、地方税の納付書にQRコードを印字し、スマートフォンで読み取るだけで納税できるようにする。同省や全国銀行協会、地方自治体などでつくる検討会は6月、QRコードの規格をとりまとめた。
納付書にQRコードが印字されれば、これまで銀行がコストを割いてきた紙ベースの手続きは大幅に減る。納税者がスマホで納税すれば銀行の窓口対応も不要になる。スマホを使えない納税者が銀行の窓口を訪れても、各行で導入が進むQRコードを読み取れる高機能ATMの利用を促すことで、その後の書類送付の処理は不要になる。
スマホや高機能ATMで読み取った納税データは、銀行やスマホ決済事業者(ペイ事業者)が地方税の共通納税システム「eLTAX(エルタックス)」に送信する。金融機関が個別にeLTAXに接続すると、業務が煩雑になったり、追加のコストがかさんだりする懸念がある。
このため、三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクとりそな、埼玉りそなの5銀行は、開発を進めている小口送金網「ことら」を税公金の納付業務のハブとして活用する検討に入った。「ことら」がハブとなって銀行やペイ事業者と自治体を結ぶことで、双方の負担は軽くなる。
QRコード納付が普及すれば、年間600億円超のコストの大半を削減できるとみられる。銀行は、これまで事務にかかりきりになっていた銀行員をコンサルティングなどより付加価値の高い業務に振り向けられるようになるほか、自治体も効率的な人員配置が可能になる。銀行界が利用者、自治体双方の利便性向上に汗をかくことで、デジタル化による効率化を前進させたい考えだ。

210706日経
組み込み型金融の広がり

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73595190V00C21A7EE9000

210701日経
メガ、ネットバンク振り込み手数料引き下げ

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73445110R00C21A7MM8000

210630日経
するが、投資用マンションでも不正

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73400720Z20C21A6EE9000


210525日経

同じグループの銀行と証券会社が一体的に営業しやすくなる。金融庁は14日、銀行と証券会社間での顧客情報の共有を制限する規制の緩和案を示した。企業が能動的に拒まない限り共有可能になる。融資だけでなく新株や社債発行による資金調達まで提案の幅を広げ、企業の生産性向上にむけた事業再編やM&A(合併・買収)などを金融面から後押ししやすくする。証券界は顧客の不利益防止策の強化を求めている。

金融庁は同日開いた金融審議会で、同一グループ内の銀行と証券会社間で顧客情報の共有を制限する「ファイアウオール規制」を緩める案を提示した。グループ内で情報共有することや企業側が拒めば共有を止めることをあらかじめ金融機関のホームページで示せば、企業に個別に通知しなくてもよくする。
それぞれ証券子会社を抱える3メガバンクは、情報共有ルールが緩和されれば、企業から特定の案件の相談を受ける前から、M&Aや市場調達の手法をより深く検討し提案できるようになると主張してきた。
例えば、融資先の財務情報に精通する三菱UFJ銀行が、借り入れより新株発行や非中核事業の売却で資金調達した方が企業価値の向上につながるとみているとする。グループの三菱UFJモルガン・スタンレー証券と情報を共有し、最適と思われる金融サービスを提案しやすくなる。
これまでも情報共有規制は段階的に緩和されてきた。2009年に金融商品取引法の政令などを改正し、企業側が拒否して初めて共有に制約がかかるオプトアウトと呼ぶ仕組みを導入した。ただ監督指針で共有する情報や管理の仕方を書面で事前に細かく伝えることを求めたため、ほぼ使われてこなかった。
「まず動向監視」
金融庁は年度内にも内閣府令を改正する。企業価値を高めるためのM&Aや事業承継の助言などの必要性が増すなか、証券会社だけでなく、銀行グループもより一体的にこうしたニーズに応えやすくする必要があると判断した。大企業向けで始め、今後は中小企業や個人向けの是非を議論する。
もっとも、昨秋から金融審で始まった議論で焦点になってきたのが、銀行による優越的地位の乱用や利益相反をいかに防ぐかだ。M&Aの売り手と買い手の双方に提案を持ち込み、自社に利益を誘導する案件を意図的に組成することなどは防ぐ必要がある。とくに銀行優位が色濃い中小企業の不利益への懸念は強い。
規制緩和に反対の立場の独立系証券は「すべての情報を銀行グループに握られたくないから、わざわざ我々と取引している企業も多い」(大手証券幹部)と主張する。米国では銀行と証券会社の情報共有に特段の制限はないが、一般の法律で利益相反取引には重い罰金が科されるなど厳しい目が向けられている。
野村ホールディングスや大和証券グループ本社は銀行の優越的地位が日本では根強く残っているとして、緩和するなら顧客の不利益防止策の強化をセットで進めるよう求めている。14日の金融審でも、委員からは情報共有のあり方が欧米の金融機関に近づくことを念頭に「違反があったときの罰則もグローバル化すべきだ」との声があがった。
金融庁は報告書で、利益相反の防止について「監督指針で典型的なケースを具体的に例示した上で新たな事項も規定しモニタリングを強化する」との趣旨を示した。金融庁の氷見野良三長官は14日の時事通信社主催の金融懇話会で、罰則について「まずしっかりモニタリングしていく。不十分な面が出てくれば、さらなる対応も必要に応じて考えたい」と述べた。
情報筒抜け警戒
肝心の顧客ニーズはどこにあるのか。金融庁と経団連による企業への聞き取り調査では、情報共有の可否を個別案件ごとに判断したいという企業が37社中21社あった。銀行グループ内であらゆる情報が筒抜けになることへの警戒感は依然として強い。大手証券は「これまで規制は順次緩められてきたのに、銀行グループは(M&A助言で)あまり実績を残せなかった。規制の有無が原因ではない」と主張する。
融資以外の収益源を広げたいメガバンクと、これを切り口に市場業務に食い込まれることや利益相反への強い懸念を持つ独立系証券会社は議論の当初から激しく対立してきた。規制緩和で問われるのは、銀行がどれだけ企業の利益に貢献できるかだ。
210617NewsPicks
ヤマダが銀行サービス 家電と住宅ローン一体で

210622日経


国土交通省は全国の土地や建物の情報を共通IDで一元的に把握できる仕組みをつくる。民間の売買データベースと国の登記簿などを照合しやすくする。事業者が消費者の求める情報を調べやすくなり、取引を円滑・透明にできる。人工知能(AI)による資産査定など新サービスの普及を促す。中古住宅市場を活性化できれば空き家対策にもつながる。

国土交通省は不動産データを整備し取引活性化を狙う(都内のタワーマンション群)
有識者らによる検討会を設け、2021年度中にデータ連携の指針をまとめる。22年度からの運用をめざす。不動産取引で融資する銀行など金融機関にとっても、物件の担保価値を評価しやすくなると見込まれる。
不動産の分野では、流通物件の成約実績を蓄積する事業者用の検索システム「レインズ」がある。各事業者は管理物件の改修履歴など独自の詳しいデータも持つ。バラバラの情報をひもづけて消費者に提供するのに手間がかかる問題があった。
国交省は共通IDをつくり、データ連携を進める狙いだ。国の法務局が管理する不動産登記簿にある13ケタの番号の活用を想定する。業界各社には物件の新規登録やデータ更新の際にIDを反映するよう求める。対象となる土地・建物は全国2億件超に上るという。
導入には事業者ごとのシステム改修が必要になる見込みだ。登録項目などの詳細は検討会で議論する。登記簿には個人情報も含まれることから、データ連携が個人情報保護法に抵触しないようにルールを詰める。
日本は中古物件の取引が少ない。背景には「設備の状況や価格の妥当性が分からない」といった消費者の不安もある。データ連携が進めば事業者は消費者のニーズに応じた様々な情報を網羅的に集めやすくなる。データ量が増え分析も容易になるため、コンピューターが迅速に資産価格を見積もる「AI査定」などの精度も高まる。
消費者向けの住宅情報サイトでは、同じ物件の広告でも仲介業者が異なると重複して分かりにくいといった指摘が少なくない。共通IDを活用すれば同じ物件を整理して見やすくしたり、問い合わせをしなくても成約情報を即座に反映させたりできる。消費者がスマートフォンひとつで必要な情報にアクセスできるような新サービスの普及を後押しする。

海外では米国の一部の州で事業者が共通IDを活用した不動産データ基盤を整備している。英国は公的機関がデータを共有する仕組みがある。各国で取引制度や商慣行が異なるがデータ活用の充実は課題だ。
住宅販売に占める中古の割合は米欧が7~8割なのに対し、日本は1割台にとどまる。政府は中古の利活用を促してきたものの近年はほぼ横ばいだ。今後の人口減少の加速をにらめば、空き家対策の観点からも良質な中古住宅が流通しやすい環境の整備が一段と重要になる。
210622NewsPicks
ピクシブが銀行サービス。みんなの銀行がBaaS提供
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freeeが「限度額3000万円」の法人向けクレカを提供する狙い(要約)
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「分散型金融・DeFi」は金融の世界を一変させるか…?(野口 悠紀雄) @gendai_biz
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「銀行のビジネスモデル」 世界の“潮流”のウラで、日本は深刻な「問題」を抱えていた…!(野口 悠紀雄) @gendai_biz
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イマドキ企業が選ぶ銀行のポイント。次世代を担う企業は銀行を味方につけろ | AMP[アンプ] - ビジネスインスピレーションメディア
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メガバンクを介し1億超 資金洗浄か 男ら5人を逮捕 | FNNプライムオンライン
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米シティが新たな試み、中小企業と地域銀行をネットで結び付け

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