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トピックス M&A📰

トピックス M&A

⚫️2022.1.5日本経済新聞🗞

【サマリー】
経済産業省
不適切なM&A仲介是正

【思ったこと】
事業承継にM&Aは有効な選択肢
後継者いなく廃業するなら
一度は検討してみてもらいたい

【記事全文】
経済産業省は中小企業のM&A(合併・買収)の不適切な仲介を是正する。不当な手数料や買い取り価格など、中小の不利益になる取引を勧める悪質業者を補助金の対象から外す。仲介業に資格は要らず、業者の質の低下が指摘される。経営者の高齢化と担い手不足でM&Aによる事業承継が有効な手段になっていることから、市場の健全化を急ぐ。



経産省は中小のM&Aを支援する事業者の登録制度を始め、2021年10月に公表した。仲介業者や税理士、ファイナンシャルアドバイザー(FA)など2278件を登録した。
この制度は中小向けの「事業承継・引き継ぎ補助金」と連動している。登録業者を介するM&Aで手数料などの費用の半分(最大250万円)を補助する。21年度中に第1弾が出る見通しだ。あらかじめ時期を決めるのが難しいM&Aの性質を踏まえ、近く補助金の申し込みを通年で受け付ける本格的な運用を始める。
2278件の登録数は経産省の当初の予想の2倍を超える。実績の乏しい業者も多い。M&Aの支援には資格や免許は必要ないため参入障壁が低く、質が担保できているとは言いがたい。
仲介業者が売り手側の簿外債務を買い手側に隠したり、適正水準を上回る価格を提示したりするトラブルがある。高く売れる可能性をちらつかせて後継者難の企業から着手金だけ受け取って放置する業者もいる。
経産省は21年11月、悪質なケースの通報窓口を設置した。報告のあった業者は実情を調べたうえで、登録の解除を検討する。補助金を受けとれなくなる仕組みとすることで、不正抑止の効果を高める。悪質な事例がなくならなければ、登録制度を法制化するなど規制強化も視野に入れる。
国内のM&Aは右肩上がりで増えている。21年は過去最多の4280件が成立した。中小企業で経営者の高齢化が進み、事業承継のニーズが高まっていることが背景にある

⚫️2021.11.26日本経済新聞🗞

中小企業による連続M&A(合併・買収)は、新たな規制などに直面し後継者難に悩む小規模事業者が多い業界で、事業承継を後押ししている。国の事業承継支援の仕組みなども活用し、地域を越えたM&Aに取り組む動きも広がっている。

Withmalは事業承継に悩む動物病院を次々と傘下に収めた(東京都羽村市にあるグループの動物病院)
動物病院運営のWithmal(ウィズマル、東京都武蔵野市)は2020年から沖縄県の病院を皮切りに、わずか2年間で全国8都府県11カ所の動物病院を傘下に収めた。大半が後継者難に直面した、売上高3000万~1億円の病院だ。
山崎智輝最高経営責任者は農林水産省の統計から動物病院の約6割が個人経営と推計している。「治療に追われる獣医師の院長が経営や採用も1人で行うため心身の負担が大きい」。承継には獣医師の資格が必要だが、合格者は毎年1千人前後の狭き門だ。第三者の後継者も見つけにくく、事業継続を諦める病院も多い。
同社は傘下に収めた後継者難の病院に若い獣医師を店舗管理者として送り込み、経営や採用はグループで一括管理して現場の負担を減らす。日本政策金融公庫や多摩信用金庫、きらぼし銀行の協調融資で必要な資金も引き出した。

長野テクトロンは病院用デジタルサイネージなど医療分野に進出するためM&Aを重ねた
「後継者に悩む同業の承継を助けたい」。運送業のコントラクト(千葉県船橋市)は20年にインターネットによるM&A仲介システムのトランビを使い、東京都内の同業を買収。21年中にもう1社の同業の買収に向けて交渉を進めている。いずれも後継者がいないという。
国土交通省の統計(20年3月末)によると、貨物自動車運送事業者の49%は従業員が10人以下だ。23年度から月60時間を超える残業の割増賃金率が50%に上がり、24年度から残業が年間960時間以下に制限される。林宏賢社長は「運転者の少ない小規模事業者は人手や経営をどう回すのかという問題に直面する」と指摘する。
ネットM&A仲介システムでは、利用者が全国の売り手、買い手の情報を相互に見られる。国の事業承継支援事業で、各都道府県にある事業承継・引継ぎ支援センターでは、各センターが持つ売り手、買い手の情報を共通データベース化し、地域間での承継も後押しする。地域の壁がなくなり、地方の中小企業に連続買収への参入を促す。
入力装置、表示パネルを手掛ける長野テクトロン(長野市)は20年から東京都、愛知県に本社がある医療機器や病院用デジタルサイネージ、POSレジなど売上高5000万~1億円の企業を5社傘下に収めた。うち4社はネットM&Aシステムのビズリーチ・サクシードを活用した。
買収を続けるのは、部品メーカーから医療関連機器など、入力装置を手掛ける自社の製品と技術が類似する部品を使っている最終製品メーカーへ変えるためだ。「ネットM&Aシステム普及で地域の垣根が取り払われた」(柳沢由英社長)
建物清掃業の三洋環境(岡山市)は20年以降、岡山、広島両県と東京都の事業承継・引継ぎ支援センターから紹介を受け3社を買収した。2社は東京都内の同業と愛知県のマンション管理会社だ。小林寛嗣社長は公的機関が運営する安心感と、少額の売り手案件が多いことから同センターを利用。「県外の案件も紹介してもらえるのはありがたい」と話す。
中小企業の活発なM&Aの動きについて、日本M&Aセンターの常務も務めたバトンズの大山敬義社長は「M&Aが一昔前なら考えられないほど普通のことになった」と話す。中小企業にとってM&Aは成長戦略を描く身近な選択肢になりつつある。
一丸忠靖が担当しました。

⚫️2021.11.25日本経済新聞📰

小規模企業を次々と買収し、攻めの経営に挑む中小企業の動きが活発だ。インターネットによるM&A仲介システムの普及などで売り手案件の情報が急増し、取得・仲介費用も大幅に低下。中小でも企業買収をしやすくなった。1年間に複数の買収を実現するほどのスピード感で事業拡大につなげている。

SDアドバイザーズの高木社長は2年間で2社の買収を決めた(東京都中央区)
金融システム開発のSDアドバイザーズ(東京・中央)は2020年以降、売上高2千万~1億円の同業を相次いで2社買収した。非金融分野への進出などが目的で、2社買収後の年間売上高は買収前の4割増の10億円を見込む。M&Aサクシード(東京・渋谷)が運営するネットM&A仲介システム、ビズリーチ・サクシードを利用した。
16年にも仲介会社を通じて同業を買収しているが、ペースが一気に早まった。高木栄児社長は「ネット仲介システムを使うと案件数も多いし、手数料も安い」と説明する。IT(情報技術)業界は人手不足に悩まされている。「人材派遣会社におカネを払って従業員を獲得する費用と時間を考えると、買収費用は高くない」
M&Aサクシードやバトンズ(東京・千代田)、トランビ(東京・港)などのネットM&A仲介システムは中小企業の事業承継の担い手として急成長している。億円単位になることの多かった従来のM&Aに比べ、売却金額は1000万~2000万円台が多い。2千~4千件の情報をネット上で提供、M&A市場に出なかった少額の案件を可視化した。
バトンズは20年の1年間で140件だった成約数が、21年は10月までで約270件に達した。大山敬義社長は「投資ファンドのような複数企業の連続M&Aが、中小企業でもできるようになった。3カ月で3社買収した企業もある」と、複数の買収を手掛ける中小企業の存在も成約数を増やす要因になったとみる。
広告制作のレバーン(東京・港)はバトンズを利用し、21年5月に衣料輸入オンライン販売会社を、同7月に不動産広告会社を買収した。いずれも交渉開始後3カ月以内で合意。うち1社の取得金額は1000万円以下だ。
同社の強みは3次元CGなどを駆使した広告デザインだ。買収で同技術を電子商取引(EC)向けに活用したり、ドローンなども駆使した別手法の広告デザインを手掛けたりする相乗効果を狙う。匹田絵人社長は「お互いにノウハウや顧客を紹介し合うなどの効果が出ている」と話す。

カーレントサービスはM&Aで重量物など取り扱い荷物の種類を急速に増やした
運送業のカーレントサービス(東京・大田)はバトンズやビズリーチなどを活用し、18年以降同業4社を相次いで買収した。3社は20年の1年で傘下に収めた。保坂高広社長は「ネット仲介システムを使い始めて売り手案件を週1回は確認するようになった」と話す。
通信インフラ資材の輸出品の梱包、運送を手掛けていたが、顧客の製造拠点の海外移転で受注が減少。荷物の種類、重量の多様化を図るため「M&Aの方が時間が早いと判断した」。18年にバトンズに登録後、従来型のM&A仲介会社を通じた金額の大きな案件も含めて買収のペースを早め、自動車部品から橋梁などの重量物まで取り扱うようになった。21年度のグループの売上高は50億円と、M&A本格化前の17年度の3倍を見込む。
案件の多いネット仲介システムでは、買い手の経営者が複数の売り手と交渉をする機会も多くなっている。トランビの高橋聡社長は「様々な企業を見比べながら1社の買収を決め、経営改善に取り組んで経験値が上がって経営者として磨かれ、次のM&Aにも取り組むという好循環が起きている」とみている。

⚫️2021.10.27日本経済新聞📰

M&A(合併・買収)の買い手と売り手を仲介するM&Aクラウド(東京・新宿)はストライブなどを引受先とする第三者割当増資で約10億円を調達した。事業承継案件の獲得を狙い、調達資金で広告宣伝や営業活動を充実させる。M&Aのコンサルティングを手掛ける人材も12月までに30人と10月時点の約3倍に拡充する。事業承継案件の情報を豊富に持つ会計事務所とも連携する。

⚫️2021.10.18NewsPicks


 新型コロナウイルス禍で小規模事業者が売り手となる合併・買収(M&A)が増加し、21年度上半期(4~9月)の買収件数が半期ベースで最多となったことが16日、分かった。国が運営する支援機関が関わった案件を中小企業庁が集計。売り手は飲食など苦境に立つ業種が目立ち、承継に活路を求める姿が浮かぶ。中小支援は衆院選でも焦点となる。
 中企庁によると、小規模事業者のM&Aを中心に支援する「事業承継・引継ぎ支援センター」を利用して21年度上半期に成立したM&Aは726件。センターを全都道府県に配置し全国の動向を把握し始めた16年度上半期の196件から3.7倍に伸びた。

⚫️2021.9.6日本経済新聞📰
【サマリー】
コロナ禍を背景に、廃業等をした企業は50,000社
高齢化に伴い、事業を承継したい企業は57万社!
地域金融機関のM&A仲介に係る役割も期待される

【思ったこと】
M&A仲介屋さんもたくさんいて、良質なとこもあると思うけど、中々判断できない
地域金融機関の役割は大きいのでは?


【記事全文】

【図解】M&A件数推移(レコフ調べ)
*

 新型コロナウイルスの流行で中小事業者が選択を迫られている。東京商工リサーチによると、2020年に休廃業・解散した企業は過去最多の約5万件。以前からの後継者難にコロナ禍が追い打ちをかけた。現状のまま事業を続けても将来展望は描きにくく、第三者への承継を望む事業者は少なくない。これまで地域経済や雇用を支えてきた「資源」を新たな受け皿にどう橋渡しするかが課題だ

 「こんなにいい店をつぶしてはいけない」。東京・新宿を中心に飲食店を展開する「絶好調」(東京)の吉田将紀社長(45)は昨年8月、炉端焼き発祥の店として知られる仙台市の老舗「郷土酒亭元祖炉ばた」の経営を引き継いだ
 経営権を譲渡した2代目店主の加藤潔さん(78)は跡取り不在で廃業を決意したが、閉店を聞きつけて店を訪れた常連客の吉田社長に「引き継いでもらえないか」と持ちかけた。承継後、若者向け新メニューなどの効果で客層も広がり、「炉端焼きの文化を残しつつ、盛り上げてくれている」と胸をなで下ろす。
 ただ、こうして事業承継先に恵まれるのは少数派だ。企業の合併・買収(M&A)助言のレコフによると、事業承継を目的としたM&Aは今年1~7月に348件と、過去最高だった昨年の622件に迫る勢い。一方、高齢化などで第三者に事業を引き継いでもらいたいと考える中小事業者数は約57万7000に上るとみられ、引受先が見つからなければ、いずれ廃業を迫られる。
 事業の買い手と売り手を結ぶ新たな仕組みが、企業譲渡案件を掲載するM&A仲介サイトだ。昨年10月、業務用食品卸の西原商会(鹿児島市)は「ビズリーチ・サクシード」を介し、赤字経営だった栄養士向け会員制サイトの運営会社を買収した。取引先飲食店の営業自粛で売り上げが大きく減る中、栄養士の知見を生かして病院や介護施設に給食のレシピを提案。食材納入につなげ、本業の強化を図る。人材紹介業の免許も取得し、栄養士と食品メーカーを結ぶ人材仲介ビジネスにも参入した。
 地元の実情に精通した地域金融機関も橋渡しの役割を期待される。中小企業向けのM&Aを手掛ける日本協創投資(東京)の桜田浩一会長は、「地域金融機関が地元企業の存続に貢献し、手数料収入などで収益を上げる機会だ」と指摘する。

⚫️2021.8.28日本経済新聞📰

【サマリー】
日本企業におけるM&Aが加速している
大手企業が取り上げられている

【思ったこと】
団塊世代の社長が70代に
後継者が決まっていない企業は70%
コロナ影響によるインバウンド減
少子高齢化等による国内マーケットの縮小
2028年には中小企業360万社のうち、127万社が休廃業、大廃業時代へ
650万の雇用(労働力人口6000万)が消失し、GDP22兆円が消失する
3019.8時点で、ストライクにおける買い希望7千、売り希望200
仲介業者増加中ではあるが、中小企業庁としてはまだ足りないとの認識

これが、M&Aを取り巻く環境
新聞では、大手企業が取り上げられやすいけど
中小企業も、本気でM&Aを検討するところが増えてくるしその必要性もある

【記事全文】
日本企業のM&A(合併・買収)が加速している。1~6月は件数ベースでは過去最高となり、7月も高水準だ。新型コロナウイルス後をにらんだ選択と集中を急いでいる。さらに2022年4月の東京証券取引所の市場再編を控え、新たな上場基準に対応するために事業再編を模索する動きが強まっている。
M&A助言のレコフによると、1~6月の件数は前年同期比17%増の2128件と、1985年の統計開始以来、同期間では最多だった。金額も2.8倍の8兆4000億円と過去2番目の高水準だった。金額面では日立製作所が3月に発表した米IT(情報技術)大手のグローバルロジックの買収が、約1兆500億円と最大だった。
1~7月の件数も2473件と最多だった。件数を押し上げている新たな要因が、東証の再編だ。再編後の各市場には流通株式の比率や時価総額などの上場基準がある。
7月にはセコムが傘下のセコム上信越へのTOB(株式公開買い付け)を完了した。同社の最上位市場への上場はハードルが高く、非上場化の道を選んだ。ミサワホームも上場子会社のミサワホーム中国の完全子会社化に乗り出した。
最上位市場の上場基準の一つが、流通株式の時価総額100億円以上。条件を満たすために買収で企業価値を高めようとする動きも続きそうだ。

⚫️210727日経

「事業承継」と聞くと、創業社長の子供や親戚など一族の誰かが経営を引き継ぐイメージが強いと思います。東京商工会議所の中小企業相談部ビジネスサポートデスクにも、年間800社ほどから事業承継に関する相談が寄せられますが、そのうち6割ほどが親族承継です。ただ、実は従業員が事業を承継するケースも少なくありません。相談の2~3割を占めています。M&A(合併・買収)による第三者承継は1~2割です。
以前、社員20人ほどの都内の化学系メーカーで、80代の創業社長が50代の従業員に会社を引き継ぎました。創業者は3年ほど前から会長職に退き、この従業員を社長にして経営の経験を積ませていました。その後、新社長は銀行の協力を得て創業者から株式を買い取り経営権も取得しました。現在、同社は新しい取引先を開拓するなど事業を広げています。
従業員による事業承継のメリットは、社内の状況をよく分かっている人が事業を継ぐことです。しかし、難しさもあります。創業家の誰かが継ぐ場合は、「一族である」という分かりやすい理由があります。他社に買収される場合は資本の論理が優先されます。一方、従業員による承継では、周囲をどう納得させるかが課題になります。
それにはまず、会社の全体像を理解できている人を選ぶ必要があります。創業社長は製品やサービス、営業など会社の隅々まで精通している場合が多いですが、従業員にはそこまでの人がいないケースがほとんどです。適任がいない場合は、意識的に時間をかけて育てていくしかありません。
複数のスポーツ施設を展開する企業で、将来の社長候補に1店舗の経営を丸ごと任せたケースがありました。数年がかりで実績を上げてもらった後に経営を引き継ぎました。時間をかけて実績を示したことで、「この人なら」と他の従業員も納得しやすくなったそうです。
もう一つの課題が、お金の問題です。経営者になると、会社で銀行から融資を受ける際に、連帯保証や私財を担保に入れるように求められることがあります。従業員としては愛着を持っていた会社でも、経営者になると全く違う責任を背負うことになります。創業社長が突然、意中の従業員を後継者に指名しても、責任の重さから承継を断られ、従業員本人も居づらくなって辞めてしまったという話も耳にします。
早めに動き出せばこうしたリスクは減らせます。後継者の育成や金融機関との調整には、5~6年越しの時間がかかることも珍しくありません。事業承継を考えている社長には「60歳から準備して」と呼びかけています。

210716日経

トラック整備工場、FLP(現関東トラック整備、埼玉県三芳町)の斉藤清一郎前社長は2月、奈良市の運送会社、富士運輸に会社を売却した。ビジョナル・インキュベーション(東京・渋谷)が運営するインターネットM&A(合併・買収)仲介システム、ビズリーチ・サクシードを利用した。2020年12月末に接触してからわずか2カ月での成約だった。

FLPの斉藤前社長(左)は松岡社長ら富士運輸側と接触後2カ月で会社売却を実現した(奈良市)
越境の交渉容易
売り手の手数料が無料だったのが魅力だった。以前M&A仲介会社を使い、別の運送会社を売却したときは成約まで1年弱、手数料も約2000万円だった。「富士運輸の松岡弘晃社長との初顔合わせまでネットでのやりとりだったが、違和感はなかった。トントン拍子で進み驚いた」
ネットのM&A仲介システムを利用した事業承継が急増している。ビジョナルやバトンズ(東京・千代田)、トランビ(東京・港)の3社が主要な担い手だ。
売り手の手数料は無料で、事業や財務などの情報を入力し登録すると、サイトに匿名で概要を掲載する。売り手情報は各社とも2千~4千件に上る。売り手と買い手はメールやチャットで連絡を取り、交渉のための秘密保持契約の締結や財務書類などの閲覧もシステム上で完結する。成約までの期間は平均3~6カ月だ。
トランビ、バトンズ両社では売却金額が1000万~2000万円が中心で、バトンズの大山敬義社長は「買い手が支払う仲介手数料が100万円未満となることも多い」と話す。地域を越えた交渉もしやすく、各社とも都道府県をまたぐ成約が6割前後に及ぶ。

バトンズは地方の士業事務所と連携し、事業承継の相談窓口とした(石川県小松市)
従来のM&A仲介ではアドバイザーが売り手、買い手双方に足を運び交渉する。成約まで最短でも6カ月、仲介手数料は大手で3000万円前後という。ネット仲介によって「個人事業主にも事業を売却して承継する機会を与えられるようになった」(トランビの高橋聡社長)。
3社が本格的に事業を始めたのは16~17年。新規利用者数はトランビが20年度約3万人と18年度比1.7倍に、バトンズは同約6万2千人と3.5倍になった。成約実績はトランビが同2.1倍の231件、バトンズは同3.2倍の128件だ。バトンズの大山社長は「21年度は成約件数が前年度の2.5倍ぐらいのペースだ」と話す。
国も連携に動く
国も事業承継の担い手として注目する。中小企業庁は20年10月、後継者に悩む中小企業の窓口として各都道府県に設置している事業承継・引継ぎ支援センターと3社との連携を決めた。3社に登録した買い手がセンターに相談に来た売り手の情報を匿名で見られるようにする。「相互につながる情報量を多くし、承継仲介の可能性を高める」(財務課)狙いがある。
3社は地方との関係も強化している。バトンズは21年6月、同社のシステムを活用して地方在住の税理士などの事務所100カ所を後継者に悩む地方企業の相談に応じる拠点にした。7月には全国商工会連合会などと包括連携協定を締結、全国各地の商工会の経営相談員の承継相談を支援する。
トランビは各地の信用金庫が取引先企業の代わりにM&Aの対象となる企業を探せるようにする専用システムを提供している。ビジョナルは三重県、横浜市、静岡商工会議所と事業承継支援に関する協定を結んでいる。
手数料収入が1~2ケタ異なり、年間100~400件の成約があるM&A仲介の上場各社と比べると、収益面では遠く及ばない。各社とも地方案件の発掘を進めることなどで成約を大幅に増やし「M&Aでの主役交代を狙いたい」(バトンズの大山社長)考えだ。

210701日経
東京マリン M&A後の損失に保険

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73439780Q1A630C2EE9000

190208日経
財務省は株式を対価とするM&A(合併・買収)について、税制優遇措置を拡大する。買収先を残し買収を実行した会社自体は消滅させる「逆さ合併」やMBO(経営陣による買収)なども対象に加える。経営環境の変化にあわせ、機動的な非上場化やグループ内再編をしやすくする。同措置を盛り込んだ税制改正関連法案の今国会成立をめざし、2019年度から実施したい考えだ。
M&Aでは買収された企業の資産について、簿価と時価の差額分に税負担が生じる。ただ、グループ内の再編なら同一組織内で資産が動くのと同じなので、同税制では課税を繰り延べる優遇措置を設けている。
ただ、逆さ合併などは優遇措置の対象外となっている。だが、買収対象の会社が事業に必要な許認可を持っている場合などは、税負担が生じても逆さ合併が使われることが多かった。そこで改正案では逆さ合併も課税繰り延べの対象に加える。
改正により、逆さ合併に似た取引になることが多いMBOもしやすくなる。MBOでは、特別目的会社(SPC)を使って対象会社を買収して非上場化することが多く、実施後はSPCは不要になる。これまでの組織再編税制では税負担が生じていたが、改正後は税負担なしでMBOができるようになる。
同税制の見直しでは、株式を対価に使ったM&Aの促進策も盛り込んだ。巨大な企業グループ内で孫会社の再編を進める際に、直接的に支配関係にない「祖父会社」の株を対価として使う場合も税制優遇の対象にする。

190325日経
MBO(経営陣が参加する買収)のルール整備を求める声が増えている。企業の内情を知る経営者が買い手となる企業買収に対し、買収価格が低く抑えられていると株主が不満を訴える例が目立つからで、経済産業省はMBO手続きの指針の改定議論に入った。日本は米欧と比べて情報開示などが足りないとの指摘も多く、少数株主の保護を強化できるかが焦点だ。(四方雅之、松本桃香)

広済堂のMBOを巡り、社外監査役が反対を表明した
「必要な資料や時間を与えられていない」。

広済堂の社外監査役の1人が2月、同社のMBO計画に反対する意見を公表した。同社の経営陣と米投資ファンドが1月に発表したMBOについて、経営陣の自己保身や低価格での買収が目的ではないかなどと主張した。
3月20日には別の株主が「MBOのあるべき姿を問う」としてTOB(株式公開買い付け)を発表。広済堂は22日、MBOに賛同する意見は維持した一方、株主に応募を推奨する意見は撤回。先行きは混沌としている。
この事例が注目されるのは、MBOに構造的に存在する利益相反の問題に関係するからだ。一般的な企業買収では買い手が登場した場合に経営者は株主のために高い価格で売却を目指す。だがMBOでは経営者が買い手になるだけに株価を抑えるインセンティブが働きかねない。
価格巡り裁判も

買い取り価格を巡って裁判になったケースもある。焼肉店「牛角」を展開するレックス・ホールディングス(当時)が2006年に実施したMBOでは、東京高裁は08年、価格が安すぎるとする株主の訴えを認め、会社提示より47%高い価格が妥当と判断した。
MBOは金融商品取引法などのルールの適用を受ける。3分の1を超える株式を取得する場合、TOBを実施しなければならない。だが利益相反のリスクがあるだけに、一般的なM&A(合併・買収)より厳格な手続きが求められるという指摘も聞かれる。
経産省が07年にまとめたMBOの指針でも、経営陣と一般株主には情報の非対称性があるなどと指摘。株主に対する説明の充実や、手続きのチェックに第三者委員会の活用を促した。法的な拘束力はないが、実質的なルールとして産業界で重視されている。
同省は18年11月から、12年ぶりの指針改定に向けた議論を進めている。上場企業のMBOが相次ぐ一方、16年のジュピターテレコムへのTOBを巡る最高裁決定を踏まえて、「一般に公正と認められる手続き」を整備する必要性が出てきた。
指針改定を議論する「公正なM&Aの在り方に関する研究会」はこれまでに5回開催。19年4月からはとりまとめに向けた議論に入る予定だ。
第三者委の監督機能強化の手立てや、情報開示の充実などを議論する。
監督機能では社外取締役に対して、第三者委で積極的に役割を果たすよう提起する。独立性の高い社外取締役にMBO価格などの決定議論に関与させ、透明性を高める。第三者委が一般株主の利益を守る立場として、買い手や対象企業から情報を聴取することも検討テーマだ。
米国では第三者委が単なる価格算定だけでなく、経営者と株主の間に入り価格交渉も担う。ディビッド・スナイダー外国法事務弁護士は「取締役会に出席する社外取締役は、弁護士や公認会計士などに比べて第三者委の実行力を高める」と指摘する。
情報開示求む声

買い取り価格の透明性を高めるための情報開示の強化も焦点となりそうだ。専門家には買収価格を算定する際の重要な要素となる割引率をどのように決めたかや、企業価値を算定する際に使った類似企業の選定法の公表を求める声もある。
またマーケットチェックも議論の対象になりそうだ。これはMBO計画公表後の一定期間、高値の価格を提示する買収者が他にいないかを調査することで、一般株主の機会損失を避けるのが狙いだ。米国では一般的に実施されている制度だ。
玉井裕子弁護士は「公正さを高めつつ自由度を損なわないルール整備が求められる」と話す。
MBOには上場企業が一度株式市場から退出することで意思決定を迅速にし、中長期的な成長につなげる利点もある。海外投資家を呼び込むためにも「世界からみて透明性の高い制度作りが欠かせない」(宇佐神順弁護士)という。

190621日経
年商1億円未満の企業を対象とする「ミニM&A(合併・買収)」が広がっている。後継者難に悩む中小企業が増えていることに加えて、買い手と売り手をつなぐマッチングサイトが台頭してきたのが背景だ。副業の解禁などを背景に会社員なども相次ぎ参入する。キラリと光る技術を持つ会社を次世代に引き継ぐ意義は大きいが、安易に挑戦し失敗する事例も増加。対策が急務だ。


ソフトウエア開発企業のもばらぶ(千葉県茂原市)は2018年10月、教育関連企業から英会話教室を約200万円で買収した。フィリピンなどアジア企業との仕事が増えるにつれ、英会話のスキルが求められるようになった。福利厚生として教育サービスを探していたところ、ウェブ上で「出物」を発見した。人手不足で事業の縮小を検討していた企業が、教室ごと買い取ってくれる相手を求めていたのだ。

トランビはM&Aセミナーを全国各地で開催している

この取引を仲介したのが、M&A情報サイトを運営するトランビ(東京・港)だ。地方の金融機関など230社超と提携し、会社や事業の「売り手」と「買い手」のマッチングを手がける。
注力するのが、年商1億円に満たない中小企業のM&Aだ。日本の法人の8割はこうした中小企業が占めるが、書類作成などの手間がかかる割に、コストに見合う手数料が得られない。大手仲介会社が半ば見捨てていた領域である。


特徴は手数料の安さ。買い手側が成約金額の3%の手数料を支払い、売り手側は無料だ。これが事業承継に悩む中小企業オーナーや業態転換を図る経営者を呼び寄せる。「相手先探しにかかる時間やコストを減らせれば、埋もれていたニーズが表に出てくるはず」とみた、高橋聡社長の読みが的中した格好だ。
16年の設立以降、M&Aのマッチング数は累計で1万2000件に達する。ユーザー数は2万7000人を超え、サイト上には常時1000件以上の案件が掲示されている。会社を売りに出した場合、10日間で平均11社からアクセスがあるという。
地方自治体の商工会なども売り手として台頭している。長野県安曇野市と同市商工会は、事業承継の相談にきた経営者から思いや譲渡希望額を聞き取り、トランビのサイトに代理登録する。
買い手も増えている。副業解禁などを背景に一般の会社員も参入し、30~50代の個人が買い手となるケースが増えている。日本M&Aセンターもここに商機をみいだした。18年4月にオンラインの事業承継サービス「バトンズ」を分社化し、ミニM&Aの案件開拓を加速している。
バトンズに登録する買い手の6~7割は個人事業主や会社員だ。M&Aの初心者が多いため、同社と提携するアドバイザーが交渉を支援する。アドバイザーは仲人役のような存在で、条件交渉や必要な書類作成など成約までの業務を一括で担う。成約実績は既に200件を超え、売買金額の平均は2000万~3000万円だという。
仲介会社のCBアドバイザリー(東京・港)で目立つのが、個人による薬局の買収だ。「診療報酬改定の影響で、大手の薬局チェーンが地方の不採算店舗の売却に動いている」(同社)ことが背景にある。
滋賀県に住む薬剤師の男性(41)は5月、2店舗目となる薬局を5600万円で買収した。全額を借り入れで賄ったが「販管費負担が重い薬局チェーンでは採算が合わなくても、個人経営だったら利益が出せる」という。地域に薬局を残すことにもつながるため、CBアドバイザリーは積極的に仲介する考えだ。
個人の事業承継を支援するファンドも出てきた。フューチャーベンチャーキャピタルと第一勧業信用組合などは、中小企業の事業承継支援に特化したファンドを5月末に設立した。ファンドの総額は3億円で、株式を買い取る資金不足などに悩む後継者を支援する。
中小企業庁によると、25年には70歳を超える中小企業の経営者が約245万人となる。そのうち約半数の後継者が未定で、現状を放置すれば廃業が急増しかねない。ミニM&A市場が広がれば、廃業で失われようとしている技術やサービスを救えるかもしれない。

190710日経
A(合併・買収)仲介のストライクは11日から、同業の仲介会社約30社と案件を融通し合うオンライン市場を開く。ストライクが抱える買い手企業と、協力先の仲介会社の売却案件をつなぐ狙い。国内の中小企業のM&A市場は拡大しているが、仲介会社の案件獲得競争も激しい。ストライクは地方の仲介会社などと協力して成約件数の増加を狙う。

ストライクが新設する仲介サイト「M&Aオンラインマーケット」に他の仲介会社に参加してもらう。仲介会社は売却希望企業の業種や所在地、売上高などの基礎的な情報を無料で掲載する。買収希望企業はサイト上で条件が合う相手を探す。詳しい情報をやり取りしたうえで、売買が成立すれば、仲介会社とストライクに手数料が入る。
ストライクは年間約120件のM&Aを仲介、2019年8月期の単独売上高は前期比21%増の45億4500万円になる見通し。買収を希望する顧客企業を約7千社抱えるのに対し、売却希望企業は200社前後にとどまる。自前で売却案件を増やすには限界があると見て、同業と連携する。
連携先の仲介会社にはまずオンライン市場に100件程度の売却案件を掲載してもらい、5年後には1千件まで拡充したい考え。ストライクは日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズと並び、株式上場しているM&A仲介大手の一角。連携先にとっても、豊富な買い手候補企業と接する機会が広がる。
中小企業庁によると、今後10年の間に平均的な引退年齢とされる70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人いる。そのうち半数強の127万人は後継者を決めていないとされる。案件の増加を見越し、ストライクは連携先を拡大する。

190719日経
M&A(合併・買収)に絡む損失が急拡大している。2018年度は世界で約1550億ドル(16兆円強)と前年度比で66%増加し、08年の金融危機後で最大となった。世界的なカネ余りでM&A価格が高騰していたところに、米中貿易摩擦などを受けた景気減速が重なり、買収した企業の業績が想定より低迷しやすくなっているためだ。M&Aの割増代金を示し、損失のもととなる「のれん」は7兆ドル超に積み上がり、損失がさらに膨らむ恐れが否定しきれない。

QUICK・ファクトセットのデータベースで世界約3万6600社(金融除く)を対象にのれんの減損損失(総合2面きょうのことば)を調べた。のれんは買収代金のうち相手企業の純資産を超えた部分。買い手企業の資産となり、買収先企業の業績が悪化すると、資産価値を引き下げる減損損失の計上が必要になる。
のれんの減損は会計上の損失なので現金流出は伴わないが、自己資本は目減りする。格付けの低下や資金調達コストの上昇を招き、企業の設備投資を妨げるといった悪影響も出かねない。
個別企業でのれんの減損が最大だったのは米ゼネラル・エレクトリック(GE)で約220億ドル。過去に買収した仏エネルギー事業の収益性が低下したためで、18年12月期は約230億ドルの最終赤字となった。
医薬品業界も減損が目立ち、アイルランドの製薬大手アラガンやスイスのロシュ・ホールディング、ドイツのバイエルなども20億ドル前後を計上。医薬品業界は大型のM&Aが多いうえ、新薬開発などで当たり外れが出てしまうためだ。
中国では産業機械メーカーや半導体装置メーカー、ゲームソフト会社などによる中小規模の減損が多発した。18年度に1億~10億ドルの減損を計上した企業は約170社で、そのうち4割を中国企業が占めた。
08年度にはのれんの減損が全体で2300億ドル強にのぼった。金融危機の影響で世界経済が極端に冷え込み、企業業績も純利益が約4割も減るほど悪化したためだ。足元で世界景気の減速が懸念されるものの、状況はそこまで悪くはない。それでも減損が急増するのは、割高なM&Aが増えたことが一因だ。
18年度は世界全体で約3.8兆ドル相当のM&Aが実施され、買収代金は買収先企業の利益(EBITDA=利払い・税引き・償却前利益)の14.7倍に達した。買収先の稼ぎで買収資金を回収するには約15年かかる計算だ。M&Aの過熱が指摘された07年度水準(14.1倍)を上回る。
割高なM&Aだとのれんが膨らみ、損失が出た際の規模も大きくなりやすい。のれんは18年度末で約7.2兆ドルと5年前より5割近く増えた。財務への影響は重くなっており、03年度末に約22%だった自己資本に対するのれんの比率は18年度末で26%強に上昇した。
一方、のれんに対する減損の比率は歴史的にみてさほど高まってはいない。18年度は2.3%弱にとどまる。08年度は6.6%強、IT(情報技術)バブル崩壊後の01年度は5.2%弱に達した経緯がある。金融市場が荒れたり、企業業績が大幅に悪化したりすれば、M&Aに絡む損失はさらに膨らむ可能性がある。

190930日経
党税制調査会(総合・経済面きょうのことば)の甘利明会長は日本経済新聞のインタビューに応じ、M&A(合併・買収)への減税措置を検討する方針を示した。企業に利益の蓄積である内部留保の活用を促す。投資額の一定割合を税額控除する案を検討対象に挙げた。2020年度税制改正大綱に盛り込む。10月1日に消費税率が10%に上がることに関して「予算も税制も生産性を上げる方に持っていかないといけない」と語った。(関連記事総合・政治面に)
甘利氏は「日本企業が自社でできない事業について、社外の力を取り込んだり連携したりすることに資する環境をつくる」と述べた。自社にない技術やビジネスモデルを有する企業や大学発スタートアップに投資をするよう、企業を税制で後押しする考えを示した。
念頭にあるのは内部留保を使った新規事業への投資だ。対象になる投資の範囲や控除割合など詳細は今後、自民党税調で議論して詰める。利用できる企業を資本金や出資金の規模で絞らず、幅広く活用できる制度にする方向だ。甘利氏は「イノベーションの気概が薄い大企業を第2創業のような勢いで伸ばしていく」と語った。


日本企業は社内に研究者を囲い込む自前主義が強い。欧米では社外のベンチャー企業や大学などが持つ技術とアイデアを活用する「オープン・イノベーション」が盛んだ。甘利氏はこうした手法を税制で支援する考えを示し「世界中の大企業は思い切ったことをやっている。日本の大企業もできるはずだ」と語った。
新事業への投資のうち、甘利氏が減税措置の有力候補に挙げたのはM&Aだ。これまで投資に関する減税は生産性向上につながる設備やソフトウエアなど償却可能な資産ばかりが対象だった。スタートアップ企業への投資に優遇措置を設けた例はあるがいまはない。M&Aの活性化は20年度改正の目玉になりそうだ。


甘利氏は日本企業の内部留保が18年度で463兆円と7年連続で過去最高を更新したと指摘した。「内部留保がたまっていく企業はイノベーションが起きていない」と述べ、米国企業に比べて日本の企業の自己資本利益率(ROE)が低い一因だと訴えた。
政府・与党はこれまでも企業に内部留保を使わせるための政策を実施してきた。18年度には給与を前年度から3%増やせばその15%を法人税から差し引く制度を導入した。大企業が研究開発や共同研究に投じた費用を法人税から差し引ける税制も拡充したが、内部留保は増加を続けてきた。

191213日経

民間の研究開発の活性化に向け、大企業とスタートアップ企業の協業を促す税制優遇を打ち出す。大企業が設立10年未満の非上場企業に1億円以上を出資したら、出資額の25%相当を所得金額から差し引いて税負担を軽くする。自社にない革新的な技術やビジネスモデルを持つスタートアップと協業し、新たな利益の源泉となるイノベーションを起こしやすくする。

新たに「オープンイノベーション促進税制」を創設する。2020年4月から22年3月末までの出資に適用される。
海外のスタートアップに対して出資する場合は5億円以上の出資額が条件だ。中小企業が出資する場合も1千万円以上なら対象となる。国内の事業会社とコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)による出資が対象で、投資会社などによる出資は認めない。
大企業が自社の人材や取引網とスタートアップが持つ技術やノウハウを組み合わせ、新分野に進出するなど事業構造を転換できる見通しがついていることが条件になる。日本企業が自社でできない事業を、社外の力を使って取り込んだり連携したりすることが狙いだ。開かれた協業を刺激するため、大企業のグループ会社への出資は対象外となる。
出資した大企業が出資から5年以内に株を手放したら、新税制の適用によって受けた税優遇分を国に返す措置も盛り込む。大企業が税優遇を得ること自体を目的に出資し、事業面では異業種への進出に結びつかないといった事例を防ぐ。
異例の支援策を税制から実施するのは、日本企業は社内に研究者を囲い込む自前主義が強い現状を変えるためだ。
欧米では社外のベンチャー企業や大学などが持つ技術とアイデアを活用するオープンイノベーションが盛んで、特に米国では設立から間もない企業が経済成長をけん引している。
トヨタ自動車が米国のCVCを通じてロボット技術開発会社などに積極的に出資するなど、日本でも大企業がベンチャーに投資する動きはある。ただ欧米に比べると、大企業によるベンチャー買収件数は圧倒的に少なく、中国よりも低調に推移している。
政府は非上場のいわゆる「ユニコーン企業」など、新しいビジネスモデルを生み出す企業の育成を急いでいる。ユニコーンまたは同等のベンチャー企業を、23年までに20社創出するという目標を掲げており、税制優遇でも後押ししたい考えだ。
大企業がため込んだお金を活用するよう促す狙いもある。財務省の法人企業統計によると、18年度の内部留保(利益剰余金)は金融業・保険業を除く全産業ベースで463兆円と、7年連続で過去最大だった。
これまで投資に関する減税は、生産性向上につながる設備やソフトウエアなど償却可能な資産が中心だった。M&A(合併・買収)にも資金を回しやすい環境を整備する。
新税制の財源は大企業の交際費支出に適用している減税措置を大幅に縮小して捻出する。研究開発税制など既存の優遇税制については、十分な投資をしなければ優遇を受けられないよう基準を厳格化する。

200702日経

経営コンサルティングを手掛けるドリームインキュベータの混乱には驚いた。5月、創業者と最高経営責任者(CEO)の取締役続投を株主総会で決めるといったん発表したが、わずか3週間後に撤回。総会も日延べした。
6月29日の総会で退いたのは同社を2000年に創業し、日本の経営コンサルの草分けでもある堀紘一氏(75)と、創業メンバーでCEOの山川隆義氏(54)だ。
クーデター説も流れたが、そうではない。総会で山川氏は説明した。コロナ禍は人間の行動を根底から変える。それなのに創業メンバーが居座っていては社員の頭の中が変わらない――と。
「コロナだから経験を積んだ経営陣で乗り切ろう」から「コロナだから新体制でないと危うい」へと考えを逆転した。顧客企業にも世代交代を訴え始めた。同社は、変わらないと生き残れない「日本株式会社」の縮図でもある。
企業はどんな戦略が求められるのか。堀氏は「必要な事業を買い、そうでない事業を売る投資家のような発想が要る」と読んでいる。経済が変われば投資家はポートフォリオの中身を入れ替えないとリターンが低下する。企業も経営環境が変われば事業を入れ替えないと収益は落ちる。


「PX(ポートフォリオ・トランスフォーメーション)」。こんな言葉を国内外の経営者が使い始めた。コロナは、従来のM&A(合併・買収)を超えた「買い」や「売り」を経営者に迫っている。
「買い」は、より技術に焦点を当てざるをえない。人の動きを制限するコロナ時代は技術を使ったイノベーションが欠かせない。米アマゾン・ドット・コムは技術者1000人を擁する米自動運転技術開発のズークスを買収する。消費者宅への無人配送を視野に入れているからだ。
日本企業のイノベーション力は衰退が続く。米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は6月、世界の企業幹部が選ぶ「イノベーション企業50傑」を発表した。ランク入りした日本企業はソニー以下3社で、13年の6社から半減した。アリババ集団などの中国企業や、09年に創業した米ウーバーテクノロジーズなど若い企業に先を越され、このままだと取り返しがつかない差がつく。
「売り」は、蓄積した経営のゆがみを解消する形で出るだろう。LIXILグループは6月、ホームセンターを運営する上場子会社LIXILビバの売却を決めた。
この一件は、日本企業にありがちな3つのゆがみを解消した。
まず、バブル期から続く「非中核事業の多さ」。住宅設備の製造に集中する同社にとり、ホームセンターは中核ではない。次に「先人への忖度(そんたく)」。LIXILビバは創業家肝煎りの事業といわれてきた。このような事業は売却しにくいが、創業家と対立した経緯もある瀬戸欣哉CEOは決断した。そして利益相反の芽を持つ「親子上場」。コロナの逆風は投資家から批判されてきた日本企業の矛盾を取り除く力になる。
再び「イノベーション企業50傑」を見てほしい。ソニーはフィンテックの潜在力を秘める金融事業を完全子会社化してパソコン事業を売った。日立製作所は日立ハイテクを完全子会社化して日立化成を売った。PXはイノベーションの種を買い、売られる緊張感を内部につくる。PX巧者がランキングに残ったのには理由がある。
マクロ経済の動向を追うエコノミストも注目すべきだ。PXによる企業の新陳代謝が労働生産性を高め、国内総生産(GDP)を増やすからだ。企業が不採算事業を売却すれば、売り手企業の生産性は高まる。事業再生で鳴らす日本電産のような企業が買い手なら、買った事業の生産性も高まる。
昨年のデータで検証しよう。PXの頻度を測るために、その国の上場企業を対象とした買収の金額を株式時価総額で割る。株式売買の頻度を測るために株の売買代金を時価総額で割ってはじくのが売買代金回転率だが、その発想にならう「M&A回転率」だ。
この値を米国、ドイツ、日本の先進3カ国で見ると、それぞれ3%弱、1%台半ば、1%強だった。「1回転」、つまり計算上すべての株が買収の対象になるまでにかかる年数は米国の34年、ドイツの69年に対し、日本は99年に及ぶ。一方で労働生産性は日本が最も低く、ドイツ、米国へと高まっていく。M&Aを使った新陳代謝のスピードが速い国ほど生産性も高いという仮説が浮上する。
株安は、新陳代謝への圧力になる。ドリームインキュベータのトップ退陣を促したのは、同社の株価低迷でもあった。QUICK・ファクトセットによると、配当を含むトータルリターンは、02年の上場以来でマイナス46%に沈む。コンサルとして欠かせないブランド力の確立が遅れたのが原因だ。
「皆様の命の次に大事なお金をすり減らしてしまった。武士の社会なら切腹に値する」。総会では、株安の責任を問われた堀氏が声を震わせて頭を下げた。「株価は厳粛だ。コロナを機に大きく変わるしかない」。堀氏は身をもって、日本株式会社に最後のアドバイスを残したかのようだ。
株式相場はコロナの最悪期を脱しつつある。それでもPBR(株価純資産倍率)が1倍を割り、「解散したほうがまし」と市場が警告する銘柄は、上場企業の50%に及ぶ。経営者は堀氏のメッセージをどう受け止めるだろう。

200706日経

中小企業などのM&A(合併・買収)仲介のストライクは2年後をめどに従業員を現在の約1.5倍の200人弱に増やす。コンサルタントを中心に増員し、買い手の探索や企業を評価する体制を強化する。少子高齢化などで中小企業の事業承継需要が高まっていることに応える。新型コロナウイルスの影響で採用を控える動きもあるが、優秀な人材を集める機会と捉える。

200803日経

M&A(合併・買収)仲介のストライクは公認会計士や金融出身者などM&Aに精通した人材を多く抱える。これまで中小企業の事業承継を中心に手掛けてきたが、規模拡大を求める買収案件が増加。2020年8月期は増収増益を確保する見通し。株価も4000円超で推移し堅調だ。

荒井邦彦社長は「今後も潜在的な事業譲渡のニーズは拡大する」と話す。新型コロナウイルス禍で景気の先行きが不透明となり、事業譲渡を考える中小経営者は少なくない。上昇気流に乗る同社だが、これまでの道のりは平たんではなかった。
「違うフィールドで自分の力を試してみたい」。16年の東証マザーズ市場の上場後、上場前からいた社員数名が相次ぎ社を去った。少数精鋭で一致団結して事業拡大を目指してきただけに、社内の驚きは大きかった。荒井社長は「会社の環境が変われば起きる必然の出来事だ」と頭を切り替え、積極採用に動いた。
財務や経営の知識が豊富なコンサルタントは希少であり、採用は難しい。ストライクは従業員に対して外部人材の紹介を呼びかけた。M&A仲介業でまだ少なかった女性の積極採用も進め、従業員数は49人と1年間で4割増えた。
だが今度は急激な組織の拡大に成長痛が起き始める。経験の浅い社員が顧客と目線が合わないのだ。売りに出ている有望な企業を見つけても最終的に判断するのは顧客の経営者。目の前の成約に焦らず、顧客のM&A後の将来像を描いて説明できなければ、納得感は得られない。
17年夏から1年ほどかけ、「M&Aは無機質な取引でなく、人の想いでできている」という企業理念を荒井社長自ら社員に伝えるなど、社員の目指す方向を統一した。定期的な勉強会を開き、若手社員の専門知識の底上げに注力。若手がベテラン社員に取引や契約に必要な知識を相談できる体制も構築した。
19年8月期のM&A成約件数は104件と上場時の倍に増えた。近年はオンラインの仲介サービスなど新規参入組との競争が激しくなりつつあり、エース経済研究所の岸和夫アナリストは「潜在顧客にいちはやく接触するためにはデジタルマーケティングも重要になる」と指摘する。
19年、買収意欲のある企業がストライクの情報サイト上で広告を出せるサービスを始めた。従来は売り手を見つけたあとに買い手を探していたが、ネット上で売り手に呼びかけることで潜在需要を開拓する。IT(情報技術)の活用で顧客基盤を広げつつ、一人ひとりの経営者にはコンサルタントが伴走する。ITと人の両輪をスムーズにまわすことで、他社との差異化につなげる。

200812日経

6月、全国25万社に買収や事業承継を促す案内書を送りました。コンサルティングを手がける当社が不定期で送付しているのですが、今回は通常の10倍の割合で問い合わせがあり、反響の大きさに驚いています。
新型コロナウイルスの影響からか、特に飲食や観光業界が増えており、不安が広がっている様子が分かります。後継者がいる経営者も、子どもに苦労をかけたくないと第三者への承継を考えているようです。
事業承継の課題は、経営者が希望的観測で解決をじりじりと先延ばしすることです。「あと数年は自分ができる」や「子どもが後を継がないと言っているが、もしかしたら考えを変えるかもしれない」として、問題に真剣に取り組もうとしない経営者も多く見られます。しかし、新型コロナのように、災害や経済危機は突然に起きるものです。いざというときに備え、事前の準備が重要です。
2018年11月、九州で樹脂成形業を営む中小企業の経営者が相談に訪れました。後継者が不在で廃業するにも取引先に迷惑がかかるため、適切な事業譲渡先を探してくれないかというのです。
当社の強みは専門家による支援です。約30年にわたって蓄積した企業データを活用して、売り手と買い手を紹介し、どのような組み合わせなら成長できるかも審査します。成約後に事業を成長させるための戦略も策定し、企業の財務・法的な安全性は社内の弁護士、会計士などが確認します。
近年はインターネットを通じたマッチングなどのサービスが増えていますが、手厚い支援が当社の強みです。一定の着手金を頂き、事業承継が無事に完了したタイミングで成功報酬を頂いています。
この九州の樹脂成形業者には、自動車部品の管理などを手掛ける企業を複数抱えるグループを紹介しました。傘下に入った直後の19年8月、九州で豪雨被害があり唯一の拠点工場が使えなくなりました。そこで、グループ企業の別の敷地で操業を再開しました。社長は「譲渡前に被災していたら再開できたか分からない」と話しています。
新型コロナという災害は既に起きてしまいましたが、今からでも第2波、第3波に備えることはできます。当社は地方の相談に対応するため、全国各地でサテライト事務所の開設を3月から進めています。7月末で19拠点を開設し、9月末までに30拠点を目指しています。
日本には有望な技術を持つ中小企業が数多くあり、後継者難や災害で廃業すると地域経済に悪影響を及ぼします。経営が悪化してからでは、買い手が見つかりにくくなるのも事実です。M&A(合併・買収)の相手を探すなら、経営体力があるうちに相談することが大切です。

200819日経

2019年に東京都内の地盤調査会社のM&A(合併・買収)を仲介しました。大手ゼネコンから超高層ビルなどの仕事を受けていましたが、創業者が高齢となり事業承継を検討していたのです。五輪需要が一段落した後に建設工事のペースが落ちることも見据え、今後は地方の学校や官公庁工事の案件も取りにいかなければならないという課題も抱えていました。当社が100人以上の株主から合意を得て、大手企業とM&Aの成約に至りました。
中小企業の127万社が後継者不足といわれる中、M&Aは事業承継の有力な方法として注目が集まっています。株式を売却でき、個人保証を解除できるので創業者が大きな利益を得られるからです。ただ、実際の件数はまだ多くありません。国内では20年1~6月に1808件のM&Aがありましたが、経営者が一定規模の株式を売却する事業承継系の案件は293件にとどまりました。
事業承継系のM&Aが普及しないのはなぜでしょうか。結婚と同じように、良い相手と良い条件がまとまらないと成約に至りません。M&Aの検討・準備を始める時には通常、仲介会社との間に着手金が発生します。結婚相談所で言えば入会金にあたりますが、これが中小の経営者の負担となり、M&Aのハードルになっているのです。
当社では上場しているM&A仲介企業で唯一、着手金を無料にしています。面談に赴く際の交通費や相手先との交渉にかかる費用も無料で、基本合意が成立して初めて、中間報酬として10%を頂きます。その後デューデリジェンス(資産査定)を経て、M&Aが成立すると残りの90%を成功報酬として頂く流れです。
着手金は一般的に、仲介会社にとって大きな売り上げになります。当社はM&Aを検討される方が増えれば、着手金の分以上に成功報酬を受け取れるという考え方をしています。19年9月末までに累計596件のM&Aを仲介しました。専門チームを置く調剤薬局を筆頭に、卸売業や建設・工事など幅広い業種で成約実績があります。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、飲食店や宿泊施設をはじめとした幅広い業種から相談が増えています。コロナ禍をきっかけに「自分に何かあったら」と考える経営者が増えたのだと思います。業績悪化の影響で買い手となる企業が多額の投資に慎重になっている傾向もみられますが、これまで買収を考えていなかった異業種の企業にとってはチャンスでもあります。多くの経営者にM&Aを事業承継の選択肢として考えてもらえればと思っています。

0821日経

新型コロナウイルスをきっかけに世界規模での再編が始まっている。市場混乱で一時停滞したM&A(合併・買収)は感染拡大前の水準を回復、今月も1000億円を超える大型案件が相次ぐ。経営環境の激変で、生き残りをかけた事業売却だけでなく、急成長が見込める分野の囲い込みも激しくなっている。金融緩和で資金を調達しやすいことも後押しする。


米ジョンソン・エンド・ジョンソンは19日、米バイオ医薬品大手のモメンタ・ファーマシューティカルズを65億ドル(約7000億円)で買収すると発表した。同日には、武田薬品工業が一般用医薬品(大衆薬)事業を米投資ファンドのブラックストーン・グループに約2500億円で売却する方針を固め、大型案件が連日決まっている。
コロナ前上回る

M&A市場は急回復している。金融情報会社リフィニティブによると、世界のM&Aの金額は金融市場の混乱や外出規制による作業の停滞で4月に1000億ドルを下回り、3月の6割減まで落ち込んだ。しかし6月以降は2500億~3500億ドルと、新型コロナ前の1~3月の平均を上回る。8月も14日までで1400億ドルを超えた。
新型コロナで企業を取り巻く環境は大きく変わった。生き残りに向け、大胆な経営判断をとる必要に迫られている。
コンビニ併設型ガソリンスタンド(GS)をセブン&アイ・ホールディングスに2兆円超で売却する米石油精製会社マラソン・ペトロリアム。新型コロナでガソリン需要が急減、4~6月の純利益が99%減となった。資金を確保し、石油製品の輸送と精製に専念する。
7月はエネルギー電力セクターが金額ベースで全体の4割を占めた。米シェブロンが米シェール大手ノーブル・エナジーを買収するなど、業界再編でコロナ後に備える。
逆にコロナ後に見込む成長を先取りする動きも出る。多くのシェアを押さえれば、将来の利益を総取りできるためだ。


外出自粛と接触抑制で市場が急拡大する料理宅配では、米大手グラブハブを巡り争奪戦となった。米ウーバーテクノロジーズが買収に乗り出したが、米議会から寡占化を懸念され断念。オランダ拠点のジャスト・イート・テイクアウェー・ドットコムが勝ち取った。
家の中で楽しむ娯楽の市場も広がる。米オンラインゲーム大手ジンガはトルコのピーク・ゲームスを買収。スウェーデンに拠点を置くオンラインカジノ大手エボリューション・ゲーミングは同業のネットエントを2000億円で買収する。
M&A活性化の背景には緩和マネーがある。主要中銀の金融緩和で、買収に必要な借入金の金利負担が小さく、大型案件でも手がけやすい。
10億ドルを超える案件は7月に40件と、4月の10件から急増した。米国の株価は新型コロナ前をほぼ回復した。相場下落時に安値で買う局面は終わり、価格が高くても成長に向けて必要な手を打つようになっている。
ただバブルにもみえる状況も見え隠れする。米国では有望な未公開企業を探し買収することだけを投資家に約束して上場した「ハコ企業」が投資家の資金を集め、1兆円を超えるM&Aをする例も出ている。
高値づかみも

企業業績の先行きも不透明で、費用対効果の見極めも難しい。セブン&アイが米コンビニ買収に使う金額は本業の稼ぐ力を示すEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の約14倍だ。高値買収が活発化していた2019年の世界平均の14.6倍(リフィニティブ調べ)に近づいている。
コロナ禍からの経済の回復は鈍く、資金繰りに窮した企業による身売りや事業売却は続く公算が大きい。成長に向けたM&Aは経済の活性化につながるが、高値づかみにはリスクも伴うことになる。

200828日経
新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、M&Aマーケットに異変が起きている。
今年の3~5月にコロナ禍でM&Aの需要が一時的に減退していたが、6月以降は引き合いや成約件数が、増加に転じている。
そもそもここ数年、後継者不在の企業を中心に、M&Aの成約件数は増加傾向にあった。売り手市場で、企業評価額を上回る金額で買収されるケースも多かった。
しかし、コロナ禍でM&Aの需要が一時的に減退。「昨年から事業売却の交渉を続けてきたが、新型コロナを機に企業価値が毀損し、交渉が決裂した」(自動車部品メーカー)
また別の飲食業者は「一部店舗の閉鎖や人員削減を行う予定だったが、買い主の同意を得られず、交渉が難航した」という。
ただ、6月に入って経済活動が戻り始め、コロナで経営状況が悪化した企業が増えたことで、再びM&Aが活発化している。

東証1部上場クラスの大手企業は、財務の改善を図ることを目的に子会社を売却。一方、準大手やジャスダック・マザーズ上場などの新興企業は人材やサプライチェーンの確保を目的に、戦略的な買収に打って出ている。
中小企業では、事業承継や廃業を視野に入れていた企業が、前倒しで買い手企業を探すようになった。また40代後半から50代の中小企業経営者が自社株を売却して雇われ社長となることを希望するケースも増えている。
ある40代のオーナー経営者は「就職超氷河期の経験から、先行きが不透明な経済状況に不安を覚える。事業継続を踏まえたM&Aを視野に入れている」と話す。

200831

新型コロナウイルス感染症の拡大により、インバウンド需要の消失や外出自粛などの影響を大きく受けた宿泊業や飲食業を中心に倒産件数が増えている。コロナ以前から後継者問題を抱える企業が、コロナによって事業も先行き不透明となり、やむを得ず倒産に踏み切るケースも多いようだ。
同時に注目されているのが事業承継、M&Aだ。元から廃業や事業承継・譲渡を検討していた中堅・中小企業が、そのタイミングを早めるケースが増えている。
需要の高さを示すように、日本M&Aセンターの第1四半期(4〜6月)連結決算は、営業利益48億8,700万円と、前年同期比25.4%増。コロナ禍の影響で4~5月にかけて営業活動が制限されたものの、成約件数は232件と前年同期並みを達成している。

※公表されているM&Aベースであり、未上場企業は反映されていない
出典:レコフM&Aデータを基に再編
日本M&Aセンター入社以来、15年間プレイヤーとして活躍してきた中村健太氏は、そんなM&Aの現状を最前線で見つめるM&Aプレイヤーについて、「ビジネス界のエッセンシャルワーカー」と説明する。「M&A」と「エッセンシャルワーカー」とは水と油のような印象だが、どういう意味なのか。
「M&Aとは、事業をより良い形で存続させるため、さらに拡大発展させるため、オーナー経営者から次の経営者へバトンをパスすることです。会社にとって最適な譲受先を探すのがM&Aプレイヤーの仕事。
長期間にわたり利益を出して成功企業が、未来に向けた成長と存続のために譲渡を希望するケースが全体の95%以上を占めます。
しかし、緊急時のM&Aもあります。コロナ禍で会社の状況が大きく悪化してしまったケースもありますし、オーナー個人の状況変化もあります。私も過去に入院中の余命僅かな経営者から、『会社のことを頼む』と断腸の思いで依頼されたことも。
いずれにしても、会社は経営者が人生を懸けて作り上げてきたもので、M&Aはその集大成です。

たとえば、緊急病棟で働く外科医は、家族の行事や自分の体調を理由に『手術は明日にしてくれ』とは言えないですよね。M&Aプレイヤーも同じで、経営者と同じ覚悟で事に当たらなくてはいけないし、手抜きは一切許されないハードな真剣勝負です。でも、それが面白いんですよ」
日本M&Aセンターに対して「年収が高い」というイメージを持つ人は多いが、それ相応のハードな仕事ぶりが求められるということだ。
M&Aで扱うのは、会社という経営者にとって子どものような存在だ。だからこそ、手を抜けば必ずわかるし、逆に本気になって取り組めば経営者と喜びを分かち合える。実際に働いている「中の人」たちは、仕事としての「やりがい」を一番の価値だと感じているようだ。
今年、30代にして最年少取締役になった渡部恒郎氏も中村氏と同意見だ。M&A成約の最終フェーズ=株式譲渡契約を締結する「調印式」で、幾度も涙したという。

「M&Aプレイヤーの仕事を端的に説明すると、『経営者と対峙する仕事』です。中堅・中小企業のオーナーを心からリスペクトできるということが、M&Aプレイヤーとしてのスタートライン。
会社という実態のないものの価値を、どんな商品を作っているのか、どんな人が働いているのか、経営者と真剣に対峙することによって、自分なりの視点で表現し、一番価値をわかってくれる相手に譲渡する。
この仕事の面白さや、やりがいはずっと感じていましたが、調印式って経営者の奥さんが手紙を読んだりするんですよね。そこで経営者の家庭人としての顔を知って、M&Aはこの人の社員だけでなく家族や人生にも大きな影響を与えることなのだと思ったら、自然と泣いていました。
先輩たちが『調印式で泣く』と言っていたことの意味がわかったと同時に、M&Aプレイヤーの仕事の醍醐味を再確認した瞬間でもありましたね」(渡部氏)
意外にも経験者ゼロ。M&Aプレイヤーの真実
ハードだが、やりがいもある。真剣勝負だからこそ、泣ける。そんなM&Aプレイヤーの仕事には、「専門性が高い」という印象もある。しかし、これについても「中の人」の意見は違う。
先出の中村氏は4月より、人材ファースト統括部という社員の採用・育成を担う新設部署で人材戦略部長を務めている。そこでのミッションのひとつが、「未経験からでも短期間で活躍できる環境」、「全社員が活躍できるフィールド」を整えることなのだ。

「日本M&Aセンターの社員は約600人で、その9割が中途採用です。金融や総合商社出身者もいれば、コンサル、メーカー、人材系と、ほぼ全員が異業種からの入社なので、もちろんM&Aは未経験。経験者はほぼゼロなんです。
ですから、新卒採用の社員も中途採用の社員も、入社したら一緒にM&Aコンサルタントとしての基礎知識を学びます。
中途採用では珍しく、最初の1ヶ月間は研修(※コロナ禍はオンライン)。役員やベテラン社員、そして社内の弁護士、公認会計士や税理士から、みっちりM&Aプレイヤーとしての実践知識及び法務・会計・財務・税務といった基礎知識を叩き込まれるので、知識がないせいで困ることはありません。数ヶ月後には実戦の場に立ち、1年後には一人前に育っていきます」(中村氏)

専門性の高い仕事であるのは間違いないが、学び、育つ環境が整えられているのだ。
人材戦略部は今、未経験者を一人前のM&Aプレイヤーに育てるだけでなく、一人前になった先にどんなステップがあるのか、さらにキャリアアップを目指すためにどういった能力や経験が必要なのか。成長のステップを明確化し、どのレイヤーにいても常に「その次」を目指せる環境を整備している。
なかでも人気なのが「1つ上のレイヤーの社員が、1つ下のレイヤーの社員に成功体験を共有する」取り組みだ。
新人層の中でも選抜されたメンバーに向けた「令和塾」、新人層向けの「打倒令和塾」という2つの(任意参加の)共有会があり、先日WEBで行われた際には、対象者であるM&Aプレイヤーの実に9割が視聴したという。

コロナ以前に開催された「令和塾」の様子。参加者は全員、真剣に聞き入っている。
このエピソードからは、貪欲にステップアップを目指す人物像が浮かぶ。
中村氏は、「異業種、未経験からの転職組にもうひとつ共通しているのが、前職でトップクラスの実績を残しているということ。その環境に満足せず、『さらにやりがいのある仕事を』と転職してきた人たちがほとんどです」と話してくれた。
どんな業界でも、トップをとるために激しい競争を勝ち抜くには、並々ならぬ努力を必要とされる。成長のために努力を惜しまないマインドセットができている人材が、新たな挑戦の場として選ぶのが日本M&Aセンターであり、M&Aプレイヤーという仕事なのだろう。
M&Aはビジネスの総合芸術である
では、なぜ日本M&Aセンターなのか。渡部氏は「M&Aはビジネスの総合芸術である」という三宅卓社長の言葉を引用して説明する。
「M&Aによって顧客の問題解決をするためには、ビジネスパーソンとしてのさまざまな能力や心構え、つまり経営者と同等かそれ以上のスキルが必要です。『ビジネスの総合芸術』とは、M&Aのそういった面を端的に表した言葉。
だから、M&Aプレイヤーの仕事をキャリアアップの手段にしようと軽い気持ちで入ってくると火傷する。私は、どんな人にとってもキャリアの終着点だと思っています」(渡部氏)

せっかくなので、不満も聞いてみた。すると、「顧客が中堅中小企業オーナーということもあり、当社自体にも古風な体質が残っているんですよね」と渡部氏。どういうことなのか。
「『昭和の日本』的な古い部分もあり、ちょっと時代に合っていないなと感じることも。でも、それを変えていくのが中村や私などの30代のメンバーや、これから新しく入ってくる方たちだと思っています。
日本M&Aセンターは今、人員も毎年120%増と、会社の成長に合わせて加速度的に増員しています。つまり、4〜5年で『入社数年以内の人』が大半を占めることになる。
そうなったときに新しい文化を自ら作れるよう実力をつけ、結果を出していく。そういう感覚で働ける人に来てほしいですね」(渡部氏)

日本M&Aセンターが2006年にマザーズ上場した際の時価総額は200億円。14年後の今、それは9000億円にまで成長している。今後、1兆、2兆と成長していくためには、間違いなく新しい文化を持った優秀な人材が必要だ。
一方、中村氏は人材戦略部として社内の文化を変える取り組みをしている。
「完全に実力主義で、年齢も社歴も記号でしかない。結果を残せばどんな年次でも意見が通る。これが日本M&Aセンターの美点ですが、残念ながら優秀な社員が辞めていくケースもあります。
もっと意見ややりたことを吸い上げて、全社員がのびのびと実力を発揮し、活躍できる会社にすることが私のもうひとつのミッション。

グループ会社を立ち上げたメンバーや、シンガポールやタイなどの海外拠点で責任者を担っているメンバーは、いずれも自ら手を挙げてくれた社員です。また、M&Aプレイヤーをしながら、グループ会社であるファンドの投資先企業の役員を兼務している社員など、すでに『やりたいこと』を実現した事例がどんどん生まれています。
そういう意味では、渡部は『業界再編」という新たなテーマでM&Aのフィールドを構築してきた第一人者でもあります。皆が自由な発想で、事業拡大し、社会貢献できる会社でありたい。
日本M&AセンターはM&Aによって顧客を幸せにする会社ですが、その次に幸せになるのは社員です。ぜひ『挑戦の場』として選んでほしいですね」(中村氏)

201001日経

りそなホールディングスは中小や小規模企業のM&A(合併・買収)仲介を強化する。傘下のりそな総合研究所が10月1日付で「コーポレートアドバイザリー部」を立ち上げ、東京と大阪で10人の担当者を置く。親族外に事業譲渡するM&Aの流れが小規模企業まで広がっており、グループとして仲介の機会を捉えられるようにする。
株式の譲渡額をはじく基準となる純資産額が2億円程度までの企業を対象にする。りそな銀行や埼玉りそな銀行も事業承継に伴うM&Aに力を入れているが、純資産額が2億円以上の案件が大半を占め、中小や小規模企業のM&Aに対応しきれてこなかったという。

201022日経
⚫️M&A 税優遇、活性化へ
政府・与党は株式を使ったM&A(合併・買収)について、買収される企業の株主の税負担を大幅に軽減する。現在は国が計画認定した再編案件にのみ税優遇を認めているが、使い勝手が悪く、利用が進んでいなかった。この現行制度を改善し、認定がなくても税優遇を受けられるようにする案を検討する。税制面からM&Aの活性化を後押しする。


2021年度の税制改正に向けて検討する。手元資金の薄い新興企業でも自社株を対価にM&Aができれば、新分野への進出余地が広がる。企業の資本政策の選択肢を増やし、日本企業の事業再編の活性化につなげる狙いがある。
例えば買収企業が自社株を対価として買われる側の企業にTOB(株式公開買い付け)を実施し、被買収企業の株主が応じると「株式売却」とみなされて売却益相当額が課税対象になる。ただしこの株主が受け取るのは買収企業の株式なので、納税のために資金を別に用意する必要がある。資金確保のために受け取った株を売却すると株価下落につながるのもデメリットだ。
そこで、政府は産業競争力強化法に基づき、「特別事業再編計画」と認定した企業の再編案件については税優遇措置を既に導入している。具体的には被買収企業の株主が受け取った株式を売却するまでは課税を繰り延べることができる。
もっとも、この認定を受けるには財務の健全性や雇用への配慮、新需要の開拓など9項目の必要要件があり、細かい審査が必要になる。時間がかかることから「迅速な事業再編の妨げになる」(経済団体幹部)との指摘が産業界や金融業界から多く出ていた。実際に認定された事例はこれまでほとんどないとみられ、経済産業省も見直しを求めていた。
現在の税優遇の仕組みは21年3月末に期限を迎える。政府・与党は21年度の税制改正に向け、期限を延長し、使いやすさを高めるために国の計画認定がなくても課税繰り延べが活用できる案を検討している。
経産省と財務省が詳細を詰めた上で与党税制調査会で議論し、12月にまとめる与党税制改正大綱に反映させる方針だ。同制度の恒久化もめざす。与党税調幹部は実現に前向きな考えを示す。


東京市場の活性化のためにもM&Aを加速させる必要があるとの声は多い。東京市場は時価総額が相対的に小さく、似た事業を手掛ける企業が乱立していることが市場の効率性や投資先としての魅力の面で海外市場に比べて劣るとされてきた。
ここ数年は資本効率の改善を目的とした自社株買いが膨らみ、東証1部上場企業(3月期決算ベース)による自己株取得額は20年3月期に約6.5兆円と、リーマン・ショック後の最高を更新した。20年3月末時点で、東証1部上場企業が保有する自己株式の規模は18兆円に達する。こうした株式を対価としたM&Aがやりやすくなれば東京市場の活性化にもつながる可能性がある。

210428日経

経済産業省は中小企業のM&A(合併・買収)を手掛ける仲介事業者について登録制度を2021年度にも始める。M&A事業者の中には顧客に対して不利益になる契約を勧める悪質な事例もある。優良な事業者を中小企業が選びやすくして、円滑な事業承継を後押しする。
28日の有識者会議で示す。登録を受けた仲介事業者や証券会社などのファイナンシャル・アドバイザーを中小企業が利用する場合、中小企業は手数料や資産査定の費用を250万円まで補助してもらえる。
登録業者には仲介手数料の根拠や支払時期の明示、不利益が生じないように仲介業務を行っているかの説明を求める。中小企業は経営者の高齢化による後継者不足が課題になっており、M&Aにより親族以外の後継者に事業承継する事例が増え、年間3000~4000件程度にのぼるとされる。

210604日経

約30年間、銀行と証券会社の業務を分けてきた規制が撤廃に向けて動き出す。金融庁はグループ内の銀行と証券で顧客企業の情報共有を事実上解禁する案をまとめ、金融機関に示した。銀行グループが融資に加えM&A(合併・買収)の助言、新株や社債の発行など証券業務を担いやすくする。企業は一つの金融機関から総合的な金融サービスが受けやすくなる。
金融庁は6月中に有識者を交えた審議会を開いて改正案を示す。2021年度にも制度の詳細を詰め、内閣府令を改正して適用する意向だ。
1993年に銀行子会社での証券業務が認められて以降、政府は規制を徐々に緩和。99年に銀行と証券会社のそれぞれの担当者による共同訪問、2002年には共同店舗の運営を解禁した。現在は3メガバンクが証券子会社を抱えて銀行と証券の連携は深まっているが顧客情報の受け渡しを禁止する「ファイアウオール規制」が最後の壁の一つとして残っていた。
米国では銀行業と証券業を分離するグラス・スティーガル法がある一方、情報共有に制限はほぼない。欧州では「ユニバーサルバンク」と呼ぶ制度がとられており、銀行と証券の兼業が可能だ。
金融庁は規制を撤廃して金融機関の国際競争力を高める。新型コロナウイルス禍で苦境にある銀行の融資先企業に対し、M&Aや様々な資金調達の提案を通じ、産業再編を後押しする狙いもある。企業にとっては銀行が持つ国内外の情報を得やすくなり、提携や買収、売却先が見つけやすくなるなどの利点がある。
金融庁は、銀行のホームページなどであらかじめ証券会社との間で顧客に関する情報を共有する意向を記載しておけば、顧客に別途通知しなくても銀行と証券の間で情報交換できるようにする案をまとめた。情報共有を望まない企業はあらかじめ銀行側に伝えれば、情報は共有されない。
融資の可否を判断する銀行は、企業に対し優越的な地位にある。顧客企業が望まない金融サービスの押しつけの防止などが課題となる。金融庁は企業に不利益が及ばないようにする方針だ。
新たな仕組みは大企業向けで始める。中小企業や個人についても情報共有を議論するが銀行が優越的な立場になりやすい。銀行系以外の証券会社が顧客情報共有に反発する可能性もあり、金融庁は様々な意見を踏まえて制度の詳細を詰める。

210604日経

新型コロナウイルス禍で停滞していた日本企業によるM&A(合併・買収)の再開が鮮明になっている。1~3月の件数は前年同期比7%増の1058件となり、過去最多になった。渡航制限で手控えていた海外企業の買収も3月は16カ月ぶりに増加した。脱炭素などで収益構造の見直しを迫られる企業が多く、事業再編が活発化しつつある。
M&Aの助言会社であるレコフが調査した。1~3月のM&A(出資も含む)の件数はデータの収集を始めた1985年以降、同期間として最多となった。20年4~6月にはコロナ禍で22%減の831件まで減少したが、同7~9月から増加に転じ3四半期連続で増えた。
金額ベースでみると、1~3月は3兆9287億円と前年同期比2倍になった。3月に発表した日立製作所による米IT(情報技術)企業のグローバルロジックの買収額が1兆円を超え、全体を押し上げた。
国内企業同士のM&Aは1割増の843件だった。特に3月は372件と3割弱増えた。脱炭素を受けた次世代の環境技術への対応が業界再編の背中を押している。東京証券取引所が22年4月に予定する株式市場の再編なども見据え、親子上場を解消する動きも出ている。
トヨタ自動車といすゞ自動車は3月下旬、2度目となる資本提携に踏み切った。トヨタの豊田章男社長は「(電動化などの)CASE革命で状況は一気に変わった」と指摘。子会社の日野自動車を含めた3社で提携した。前田建設工業は2月下旬、前田道路や前田製作所と経営統合し、持ち株会社を設立すると発表。親子上場を解消する。
日本企業による海外企業へのM&A件数は3月に増加に転じた。ワクチン接種の広がりなどで今後も増えるとみられる。
年間ベースのM&Aは19年の4088件が過去最高だ。1~3月はこれを上回るペースでM&Aが実施されている。4月も4割増の422件と増加が続く。企業の事業再編への意欲は高く、21年は年間としても過去最高になる可能性がある。

210621日経

世界のM&A(合併・買収)が再始動している。2021年のM&Aの実行額は6月中旬時点で2兆ドルを超え、20年1~6月の2.3倍に達した。企業は新型コロナウイルス禍からの経済再開を見据え、さらに加速するデジタル化や世界的な投資テーマである脱炭素分野を中心に事業を組み替えている。これまでの金融緩和であふれたマネーが流入している。
金融情報会社のリフィニティブが6月17日までのデータを集計した。世界のM&A件数は2万5069件となり、3年ぶりに増加に転じた。実行額は2.6兆ドル(約290兆円)と、過去最速のペースで2兆ドルを突破した。特に米国が前年同期の3.8倍でけん引し、実行額は1兆2929億ドルに達した。
米国ではメディアの再編が活発だ。コロナ禍で動画や音楽などのネット配信のニーズが高まり、コロナ収束後もサービスの多様化と市場拡大が続くとみられている。米メディア大手のディスカバリーは、米通信大手AT&T傘下のメディア事業「ワーナーメディア」と経営統合する。買収規模は21年で最大となる。アマゾン・ドット・コムも映画製作大手のメトロ・ゴールドウィン・メイヤーを84億5000万ドルで買収する。
特別買収目的会社(SPAC)を通じたM&Aも件数や金額の増加に寄与した。5月末までに公表されたSPACによる企業買収は3480億ドルとなり、前年同期比で約40倍まで急拡大した。米欧などでのこれまでの金融緩和によってあふれたマネーがM&A市場に流れ込んでいる。
米国に比べると経済再開で出遅れる欧州は前年比25%増、日本は19%増にとどまった。それでも脱炭素関連など有望事業をにらんだM&Aは広がりをみせる。英国では送電大手のナショナル・グリッドが配電大手のウェスタン・パワー・ディストリビューションを78億ポンド(約1兆1900億円)で買収する。日本では日立製作所が米IT(情報技術)のグローバルロジックを96億ドルで買収する。
PwCアドバイザリーの福谷尚久パートナーは「新型コロナは足元のモメンタム(勢い)に影響を及ぼしているものの、感染の拡大が落ち着けば、脱炭素などコロナ後を見据えたM&Aが相次ぐ可能性がある」と指摘する。

210623日経

セカンドサイトが、M&Aの成功確率をだすAIを開発

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73138960S1A620C2FFT000

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