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問いの形式の読書ノート

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人文学とソフトウェア工学の専門書/啓蒙書を中心とした読書ノートです。本文内容に基づく「問い」を主なコンテンツとします。週2-3回更新。
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記事一覧

斎藤哲也編『哲学史入門II』(2024)

先日読んだ第I巻の続き。私のバックグラウンドからは、上野修と戸田剛文の二人が、哲学者の議論を紹介するのに「プログラム」や「アプリケーション」といったIT用語を使っているのが興味深かった。それらの言葉の使い方は、エンジニアである私が見ても別に不自然なところはない。トピックが機械論あるいは機械論的な考え方なので連想が働きやすい、ということはあるだろうが、もし仮に同じような本が50年前に企画されていたとしたら、決してこういった言葉は使われなかっただろう。30年前でも難しかったかもし

斎藤哲也編『哲学史入門I』(2024)

(西洋)哲学を半端にかじっただけの門外漢にとって、(西洋)哲学史をきちんと見通したいという渇望は馴染みのものである。本屋でこちらの新書を見かけて衝動買いしてしまった。 インタビュー形式というコンセプトは面白い。少なくとも読みやすい。「学術的な水準を落とすことなく、ワクワクするような入門書」という編者の意気込みは、結果として網羅性やバランスとのトレードオフを生んだが、私はこちらの方が好きだ。 問いの形式の読書ノート 投稿概要 書誌情報 千葉雅也・納富信留・山内志朗・伊藤博

駒木明義『ロシアから見える世界』(2024)

昨今はフェイクニュースが飛び交い、伝統的なメディアの質も必ずしも信じられなくなっている。その中で、本書の内容はプロフェッショナリズムに裏打ちされた、確かな報道だと思えた。著者が無謬だと言いたいわけではない。表情や言葉遣いなどの些細なサインからも情報を読み取り、確かな事実と合わせて論理的に全体像を組み立て、簡明に説明する文体に、仕事に対する最大限の誠意を感じる。 ウクライナに平和が訪れることを心より願う。 問いの形式の読書ノート 投稿概要 書誌情報 駒木明義『ロシアから見

Jeffery D. Smith『システム運用アンチパターン』

私はとあるシステムの運用チームの長に就任して間もないが、短い経験から言ってもここに書かれていることは「あるある」ばかりだ。平均的な、真面目なエンジニアが集まって仕事しているのに何故かまずい形に入り込んでしまう、組織の微細なダイナミクスを捉えた分析もあまり類書がないように思う。 問いの形式の読書ノート 投稿概要 書誌情報 Jeffery D. Smith『システム運用アンチパターン エンジニアがDevOpsで解決する組織・自動化・コミュニケーション』田中裕一訳、オライリー

カレン・アームストロング『イスラームの歴史』

イスラームを理解するのは現代世界を理解するのに不可欠だと思う。良さそうな本だったので手に取った。 以下の問いのリストはほぼ表面的な知識を問うだけであるが、本書の真髄とも言える、著者がイスラームと向き合う姿勢については、池田美佐子氏の解題がうまく言葉にしてくれている。 問いの形式の読書ノート 投稿概要 書誌情報 カレン・アームストロング『イスラームの歴史』小林朋則訳、中公新書、2017年 問い(理解の確認) イスラームについて考える上で、「ムスリムたちの外面史を探るこ

深津貴之・岩元直久『ChatGPTを使い尽くす! 深津式プロンプト』(問いの形式の読書ノート)

私のこの読書ノートも、私の脳に対して、知識の復元を命じるためのプロンプトのようなものだ。それは私の知性の振る舞いを前提にフォーマットされている。生成AIもその振る舞いに傾向がある以上、振る舞いに即した適切なプロンプトの書式が存在することに何の不思議もない。実践的でタメになる本だ。 問いの形式の読書ノート 投稿概要 書誌情報 深津貴之・岩元直久『ChatGPTを使い尽くす! 深津式プロンプト』日経BP、2024年 Questions ChatGPTの開発元はどこか。

読書ノート: 國分功一郎『暇と退屈の倫理学』

問いの形式の読書ノート 投稿概要 書誌情報 國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(Kindle版)新潮社、2022年 Questions ウサギ狩りの<欲望の対象>と<欲望の原因>はそれぞれ何か。(※パスカルの気晴らしdivertissementについての分析) ラッセルとスヴェンセンの退屈論について、著者はそれぞれどのような点を批判しているか。 著者は、「本書が取り組んでいる<暇と退屈の倫理学>は、一万年来の人類の課題に答えようとする大それた試みなのだ」と書いている。

読書ノート: ジェイムス・スーズマン『働き方全史』渡会圭子訳、東洋経済新報社、2024年

投稿趣旨にも書いたように、以下はこの本についてのメモではあるが、全く網羅的な内容ではない(し、本書の核心的な部分にも必ずしも触れていない)。予めご了承願いたい。 チェックリスト 仕事がpurposefulであることと、仕事がpurposiveであることは、どう違うのか。 農耕は狩猟よりリスクが高い(と著者はいう)、それはなぜか。 人間と家畜が現在、地球上の哺乳類生物量に占める割合は何%ほどか。 ジェームズ・ウッドバーンは、ハッザ族の狩猟採集社会と、工業社会や農業社会