▽ 知らない世界3(ずっと傍にいられると思った)

それでも、彼女は言葉を紡ぐ

「あのね」

「…はい」

「あたし、君が入学したときから好きだったの

ハンカチ落としたのを届けてくれたの覚えてる?あのときちょっとした一目ぼれしたわ。それから図書館に行くと、何時も見かけたからついつい入り浸ってしまって」
彼女は俯いてそのまま話し続ける
同時に足が少し、少しだけ透けてきていた

「…思い出しましたっ」

「えっ?」

「黒い髪の人にハンカチ、渡したこと。綺麗な黒髪で入学当時の俺からしたら目を奪われて、たまたまハンカチ落としたからあわてて拾って…

でも、その後どれだけ探しても見つからなくって
友達もでき初めてだんだんそのこと忘れちゃって」

あえたときにはもう幽霊ですか

「嬉しいなぁ…」

返事、そんなの…

「俺も、多分好きなんです。だから、だからっ」

「うん、ごめんね」

彼女の想いが1つ、1つ伝えられることに足から徐々にその存在を失っていった
止めるすべはもう無い、そんなことをお互いに気づいていた

「消えないでくださいよっ、俺の学生生活まだ始まったばっかなんですよ!」

「…そうだね」

「彼女出来たって言えないじゃないですか」

「うん…」

「デートもまだしてませんよ」

「うん」

「言いたいこといっぱいあるんですよ?」

なのに、どうして居なくなるんですか!

手を伸ばした、しかしその手はもう彼女に触れることは叶わなかった
本当に通り抜けてしまった
今までなら触れたはずのモノに

「もし、君と次に会うときまであたしを待っていて覚えてくれるなら…」

「なんですか…聞こえませんよっ…うっ、うぁぁぁああああ!!!」

彼女が大事にもっていた白いハンカチだけが地面に落ちていた
それを拾い上げ、泣きながらぽつりと

待っています、といった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?