知らない世界2(叶わないのは承知の上、せめて少しだけ期待させて)

屋上、とある一角だけ死角となってる場所がある
それ以前に相当な物好き以外屋上に人が来ないという珍しい学校だった

「ところで、なんで沙夜さんは幽霊に?」

「えっ……そうね、言ってなかったわね」
座っている優の目の前で彼女は立ち上がってくるっと背中をこちらに向けた
ワンピースがふわりと舞う

「あたし、実は階段から突き落とされて死んじゃったの。向こうはあたしが気に入らなかったらしく、ちょっとした冗談ぐらいの気持ちだったんだって」

「打ち所が悪かったんですか」

「そう、割と上まであがってたからさ…後頭部を勢いよく打ち付けておしまい」
背を向けたまま両手を広げて淡々と語る
まるで自分ではない他の誰かについて喋っているようだった

「…死因は分かっているなら、どうしてこの世に?」

「やり残した事、あったの」

「やり残したこと?」

「うん、でももうそれももうちょっとで叶うよ」
再びくるっと向きを変えてこちらを見る

…ちょっと寂しそうに見えたのは俺だけだろうか?

「あたしの年齢、優の1つ上だったの」

「えっ…じゃあ、校内の事件は…」

手を口元に押さえた、予想しなかったわけではないがまさかそれが彼女の事件だとは思いたくなかったのだ
別の人だと、そう思いたかった
だからといって彼女が死んだことには変わりはないのだけれども

「さっきもいったじゃない。あたしよ」

「……」

「でね?こんなこと言われても困ると思うけど、一応きいてほしいな」

なんとなく、聞きたくなかった
それを聞いてしまったらなんだか彼女は何処かにいってしまいそうな
そんな雰囲気がしたから

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