悲しくないのにどうしてだろう

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某名探偵/コ哀がそのまま成長し中学生の設定


組織との追いかけっこは結末を迎えずにそのまま時だけが過ぎた
彼との関係は出会った当時よりも複雑怪奇になっていて、今さらただの他人になんかなれなくなっていた

「灰原」
「何かご用かしら?」
ソファに横になって埋もれつつ本を読んでいると正面に江戸川くんが立っていた
博士の家に来ることが珍しくない彼は学校から直接訪れることもあるのでこんな光景も日常茶飯時
「博士は?」
「あら、今日は居ないって昨日言ったと思うけど」
視線を上げるとこちらを見ていたのか彼と目線がピタリと合う、すぐに逸らされてしまったけれど
「あー…そうだっけか。わりぃ」
少しの間が空いたあとに向かい側のソファに江戸川くんが腰かけた
「帰らなくていいの?愛しの彼女の居る家に」
「何いってんだよ」
5年以上の月日が流れたのだ、帰ってこない彼をいつまでも待ち続ける彼女に申し訳なさがあるのか、工藤くんとして連絡を取ることが減った
薬も未完成のために大人に戻ることすら許されない現実、足りないものも多く再開発までにはまだまだ時間がかかるだろう
「冗談よ」
冗談だった、本当に
いつもみたく返ってくると思っていたけれど、一瞬だけ彼の表情は…。
「おまっ、なんで泣いてるんだよ」
「っなんでもないわ」
頬に流れる一筋の涙

悲しくなんかないのにどうしてだろう
涙だけ溢れてくるのは罪悪感から来るものなのか、それとも蓋をした感情が揺さぶられていたからなのか…

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