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【プチ移住】1ヶ月の滞在で発見した南串山の魅力

「南串山ってどんなところ?」

こんな質問をされたら、みなさんは何と答えますか?
その多くは「そこどこ?」とまず思うでしょう。

数ヶ月前まで私もその一人でした。しかし、今なら答えられます。
それは「豊かな食に恵まれ、生き生きと暮らす人が多い地域」です。

なぜこのように思ったのか。地域おこし協力隊インターンとして1ヶ月雲仙市南串山地区で暮らし、様々な人への取材を通して発見したこの地域の魅力を深掘りします。

地域おこし協力隊インターンについてと、自己紹介

地域おこし協力隊インターンとは、実際の協力隊と同じような活動に従事しながら、地域おこし協力隊への具体的な参加イメージを持ってもらうことを目的としています。

今回のミッションは、南串山のいいところを発見・発信することです。南串山はもちろん、雲仙市のことを全く知らない私だからこそ、その良さを見つけて欲しいとのことでした。

私は、新卒で広告代理店に入社後、独立。国内外を旅しながらフリーランスとして、ライティングやSNS運用をお仕事にしています。とにかく好奇心旺盛で、最近は地方移住の魅力に気づき、地域おこし協力隊インターンに興味を持ちました。

埼玉県で生まれ育ち、海が身近な生活は初めて。祖父が農家だったため、農業は身近な存在でしたが、漁師さんには今まで出会ったことすらありませんでした。「海が近い生活ってどんな感じなんだろう」とワクワクしながら、長崎空港に降り立ちました。

南串山とは?

長崎県雲仙市最南端に位置する南串山町は、農業と水産業などの一次産業が盛んです。斜面地にはずらりと棚畑が広がり、キラキラと輝く橘湾には多くの漁船の姿が見られます。じゃがいもやレタス、いりこ(煮干し)の名産地で知られています。

最寄駅までは車で片道30分、バスはおよそ1時間に1本。「ここが南串山の最寄のコンビニだよ」と紹介されてから、車で港まで約10分かかった時は驚きましたが、慣れてしまえば、それほど不自由さは感じませんでした。

南串山に到着して、まずその景色に感動しました。急な斜面にぎっしりと敷き詰められたような棚畑、そして海の方に目を向ければ、海面が夕日で淡くピンク色に。

今まで全国各地・世界中を旅してきましたが、この棚畑の景色は初めてです。京泊港から内陸を見上げれば、かなりの斜面を走るトラックや車をずっと見ていられそうなほど。港、棚畑、細い坂道、マイペースな猫、空を飛ぶ鳥たち、すべてが新鮮な風景でした。

歴史の側面では、島原半島南部で起こった一揆「島原の乱」が背景にあります。寛永十四年(1637年)から翌年にかけて起こり、多数の農民が討死、南串山を含む島原半島南部は荒廃してしまいました。
そこで、当時幕府直轄地であった小豆島から移住を要請し、多くの移民が集められました。そのため、「南串山の風景は小豆島とよく似ている」という声もあります。

プチ移住で発見した南串山の魅力

地元の人は「何もないところ」というかもしれませんが、南串山はとっても魅力に溢れていました。日本各地を旅してみてきた私が、特に魅力的だと感じた部分をご紹介します。

おいしいの連続と出会える豊かな食

農業と水産業が盛んな南串山は、豊かな食と出会えます。
何を食べても天下一品!本当においしいので、食べる時に思わず口元が緩んでしまい、「なんでもおいしそうに食べるね〜」と言われるほどでした。

実は南串山がある雲仙市は、2024年3月に発表された「美食都市アワード」を受賞した実績も。

斜面地に広がる美しい棚畑では、レタスやじゃがいもを中心に、ブロッコリーやたまねぎ、キャベツなど多種多様な野菜が栽培されています。「野菜ってこんなにおいしいんだ。」と思わせてくれるほど、新鮮で濃い味わいの野菜たちです。

レタスは、今までに食べたことがないみずみずしさと肉厚感。青臭さなどは一切なく、レタスでありながらも、食べ応えがあります。
そして、じゃがいもはずっしりとしていて、ただホクホクしているだけではなく、じゃがいも本来の甘みやコクが感じられます。農家さんがじゃがいもは、レンチンするだけで食べるのがおすすめというのにも納得です。

もちろん、ブロッコリーもたまねぎも。南串山に滞在している間に出会った野菜はどれも「今まで食べた中で1番!」と思えるものばかりでした。

水産業も主力産業のひとつ。国内屈指のいりこ(煮干し)の産地として知られ、港には多くの漁業関係者の姿が見られます。他にもハマチやトラフグなどの養殖などが有名です。

漁は集魚灯を使うため、夜間に行われ、暗くなってから出航していく船も。
日中は養殖や漁に出るための準備などをし、夜になると沖に出て行きます。漁は天候次第の部分もあり、毎日やっているわけではありませんが、漁師さんたちからはガッツとパワーを感じます。

早朝、沖から戻ると水揚げが行われ、すぐにいりこ(煮干し)加工へ。私たちの食卓はこのようにして支えられているのかと感じられる瞬間です。

私は今までいりこ(煮干し)がどのようにしてできているのかと考えたことすらありませんでした。しかし、南串山で生活してみると、生産者さんが身近にいて、毎日食卓においしいご飯が並ぶ当たり前の幸せを改めて考えさせられました。

自分の仕事に対して誇りを持っている

南串山で仕事をしている人の姿をみると、それぞれ自分の仕事に対して誇りを持っているように感じました。農家や漁師など自然相手の仕事をしている人が多く、その働き方は天気次第で不規則。
普通に考えれば「面倒、やりたくない」と思ってしまいそうですが、実直に向き合っていました。

仕事をするシニアの姿が目立つのも南串山の特徴です。誰よりも目をキラキラとさせ、楽しそうに仕事をしていました。そしてとにかく元気。
楽しそうに仕事をするシニアがいるからこそ、若者は自然と家業を継ぐことを考えるのだろうと思いました。

特に我が子のように野菜を育てる農家さんの姿は印象的。大切に大切に育て、その過程を楽しそうにお話いただいた時のキラキラとした目は忘れられません。

こんなにも大切に育てられてきた野菜が私たちの食卓に並んでいるのかと思うと、大事にいただかなくてはという想いになります。

地域全体で子育て・若者を応援する空気感

南串山に滞在して数日、驚くほど地域で働く若者が多いことに気づきました。地方では、地域の若者は外に出ていってしまい、なかなか地元に残る人が少ないのが現実。

なぜこれほど若者が残るのかと考えた時、家業があることが大きいと感じました。しかし、それだけでは十分な理由になりません。取材を通して感じたのは、若者を地域全体で応援する文化です。実際に地域に残る20代は「何かやりたいというと周りがすごく応援してくれる感じがある」と話していました。

また、とにかく地域全体で子どもを大切にしている様子が垣間見えました。学校の中だけで教育を完結させず、地域の人々を巻き込んで教育に取り組もうとする教師の姿や、頑張るお母さんたちを少しでもリフレッシュしてもらい、子どもたちの笑顔に繋げたいとサロンを経営されている方、通りすがりに挨拶をし、話しかけてくれる近所の方々。

もちろん、家族が中心になって子育てをしていますが、そのサポートをするかのように地域全体が見守っている感じがありました。

来てみたらきっとわかる南串山の魅力

地元の人に聞いたら「何もないところだよ」というかもしれません。しかし、実際に来てみると、忘れていた大切なことを思い出させてくれるような場所だと思いました。私はこの1ヶ月で当たり前のようにおいしい食材が手に入るありがたみを改めて実感するとともに、長く守っていきたいと当事者意識を持つようになりました。

まずは、小浜温泉や雲仙温泉に来た際に少し足を伸ばして、美しい棚畑を一望できる南串山棚畑展望台や、プライベートビーチのような空間が広がる国崎半島に行ってみませんか?
もし、そこで地域の人で出会ったら、ぜひお話してみてください。きっと南串山の魅力がわかるはずです。

(取材・撮影・文 =栗原 香菜子)


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