一生絶対許せない自分とうまくやっていきたい

隣のカウンター席の男性から「君は色々と悩みを抱え込みすぎだね。」と言われた。(皆におなじこと言ってるのかもしれないが本題ではないのでこれ以上掘り下げない。)
男性は大学教授をやってるらしい。彼は体をこちらに向けて座り直し、「それらをパッと手放す方法を教えてあげるよ。」と言った。手順はこうだ。「はいこれ、この紙ナプキンでいいや。これ手に握ってみてね。それで、悩みや抱えこんでるものを思い浮かべる…そして思い切り…ギューっっと握ってね…そうそう、それを、パッと開く!いっしょに抱え込んだものも一緒にパッと放すイメージで!パッと!ほらもうなくなった!」(みんなもやってみてね。)

うさんくさすぎワロタと思いつつも、思い切り握った紙ナプキンをパッと放した瞬間なぜか私は咄嗟に笑いだしてしまった。よくわからんが手をパッと放した瞬間、脳がギャーッッと痒くなって、じっとしていられなくなったからだ。私はこのとき具体的な悩みはとくに何も思い浮かべていなかったんだけど、そのせいでかえって「抱えこんでいるものを〜…」という言葉をトリガーになっていろんな記憶が紐づいてしまい、それで脳が耐えられなかったのかも。

多かれ少なかれ誰しもそういうのあるとは思うんだけど、私には一生絶対に許せないモノが百個くらいあって、私は私の頭の中の博物館にそういう記憶を整然と並べており、時折それを一個ずつ手にとってきちんと眺めるという作業を行っている。許せないモノ、許せないコト、されたコト、言われたコト、そのときの声、オエーーー!!声色、感情、目線、感情、あー!あーあー!!その場の人間!人間!人間!人間人間人間!!ああああ!!絶 対 に 許 せ な い ! ! !多分このあたりの記憶が呼び起こされちゃったんだと思う。結局、自称教授にこれらの話はしなかったけど。

自称教授は「過去は変えられない以上、抱え込むのは無駄なんだよ。いちいち思い返しても摩耗するだけ。意味ないでしょう。」という大変有り難いお話を私に聞かせてくれた。まったくもってそのとおり。一生許せないものを丁寧に点検するとかいう無駄&めちゃくちゃ脳のメモリを食う作業なんてマジでやめるべきでございます。
でも止めることができない。止めると脳がギャーッッッて痒くなり、なんだか無性に耐えられない!!脳にストッパーがかかってるんだな。こんなんなっちゃうってことは、むしろ一生許せないものを丁寧に点検しつづけてるほうがごく自然であり、正常ということでは??あなたの正常を押し付けないでいただきたい。(逆ギレ)

帰宅して自称教授のことをググってみたら本当にちゃんとした教授だった。顔写真も載ってたので間違いないと思います。というかウィキペディアまであった。
ウィキペディアを見ると、なんか…由緒ある新聞の解説記事かいてたり、由緒あるテレビ番組の解説をしてたりしてて、……実はすごい人なのかな?そういえばボトルキープの山崎、ラベルが黒かった。あれって多分高いやつだ。ホンモノだ。疑ってしまい申し訳ございませんでした。

教授は自分のグラスに黒い山崎を注ぎながら「過去を後悔するなんて、無駄だよ!」と言っていた。「過去は変えられない以上、いちいち思い返しても摩耗するだけ。意味ないでしょう。」だから悩んでもどうしようもない、さっさと放り捨てるべきである、僕はそうして生きてきた、だから いまだって なにも 一切 悩みなんて ない!!
なるほどね、やっぱウィキペディア人(ウィキペディアに載ってる人のこと)ってそういう行動指針なんだな。脳の痒みさえウィキペディアムーブの原動力にしてしまうのだろう。
なお後日店主が教えてくれたのだけだど、「あの人ってあんなこと言ってたけど、ときどきひとりで来店したかと思ったらカウンターでとつぜん号泣しだすような日もあるのよ」(そういうの他の客に話すなよ!)
僕は悩みなどない!と豪語するウィキペディア人も、やはり何かを抱えてるんだろうか?

私だって過去のどうしようもないことを考え続けるのは嫌いだ。無駄だからだ。一生許せないものを考え続けるのも嫌いだ。涙が出てくるからだ。
限りある人生、笑顔の時間が1秒でも多くなればいいと思う。これは本心だ。
だから自称教授みたいに「過去の悩みはすぐ手放すべき!」はいおしまい!って、できたらそうすべきなんだ。しかしそれができないのだけど。
許せない!許せない!許せない許せない!!!が止まらない。
周りの人間が意義のある生活を重ねて意味のある人生を作り上げていっている一方、過去の点検ばっかりしてる自分ってほんとなに?私の人生も意味のある人生にしたい。意味のある人生を送ってる側の人間になりたい。

でも意味のある人生を送ってる側の人間だって、大なり小なりこういう感情は抱えてるのかな。許せない感情なんてごくありふれた感情だもんな。それでもみんなちゃんと折り合いつけて、うまくやってるんだよね。うまくやれるもんなんだ。そう考えると少し安心する。
許せないモノって私の記憶に存在してるから、無にはできない、と思う。だから私もうまくやっていきたい。時間を沢山かければ段々うまくやれるかな?また脳がギャーッッって痒くなる。でも今後の人生、怒ってる時間が1秒でも少なくなるといいと思う。それでいいと思う。そう考えると少し安心する。

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