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パールが少しずつ値上がりしていることを知っていますか?あまり知られることのない美しい真珠の裏話

こんにちは(^^)
東京・浅草蔵前のアトリエでジュエリーを制作しているmmm jewelryデザイナーの茉莉華です。

タイトルからちょっと衝撃的なお話かもしれません。

ここ最近になって日用品、食料品、光熱費といった物価が上昇して、世間を騒がせています。

茉莉華が飼っている3匹の黒猫様にお供えする“ちゅーる”も値上げฅ•ω•ฅ

もちろんこの値上げはジュエリー業界にも押し寄せてきています。

「金(ゴールド)」が高騰しているのを知っている方は多いと思いますが、実はパールも年々高騰しているんです。

なぜパールも値上がりをしているの?と早く真相を知りたいと思いますが、まず最初にパールにはどんな種類があるのか?

なかなか種類が混同してしまう方もいると思います。

パールを楽しむ上で、これだけは知っておいてほしいことを、最初に大まかにお話していきます(^^


パールは大きく分けて3種類

淡水パール|湖

生産地|湖
国|主に中国(日本)
母貝|イケチョウ貝
パールの大きさ|2mm~20mmと小粒から大粒まで幅広い
色|クリーム、ピンク、パープル、オレンジ

湖で育ったパールは淡水パールと呼ばれます。

その名の通り、塩分を含まない水の中で養殖された貝から取れたパールのこと。

日本でも養殖されていますが、生産の多くは中国で養殖されています。

昭和の初期時代は、淡水パールというと質の低い安いパール(海水パールが質の高いパール)というイメージが強かったのですが、最近の淡水パールはクオリティが上がっており、アコヤパール並みにテリ・ツヤが美しいものも増えています。


淡水パールが他のパールと比べて
リーズナブルなのは1つの母貝から
複数のパールが取れるのも理由の1つ。
キャンディのようにかわいらしいピンク色は
貝から取り出したままの天然色。
ここ数年の研究や技術の進歩で
濃いピンク色が出せるようになりました。


アコヤパール(アコヤ真珠)|海

生産地|海
国|主に日本(中国)
母貝|アコヤ貝
パールの大きさ|2mm~10mm 小粒
色|ホワイト、クリーム、イエロー

日本を代表するパールは知っている人もたくさんいるのではないでしょうか。

パールの中でも最も有名なアコヤパールは、アコヤ貝から生まれ、アコヤパールやアコヤ真珠と呼ばれます。

アコヤパールの主な国内生産地は三重・愛媛・熊本・長崎。

なんとこの4つの県だけで、世界の9割以上のアコヤパールを生産しているんです。

日本の四季に恵まれて育つアコヤパール。

色やテリが美しく品質が高いことが特徴で、海外からも、日本ブランドのパール=アコヤパールとして非常に高い評価を得ています。

アコヤパールは6mm~8mmが主流で、その小さな華憐さが小柄な日本人女性を美しく見せるのだと私は思います。

肌の色に合わせやすく、手軽に上品感が出て、日本人なら似合わない人がかなり少なく、大人になればなるほどそれが良く似合ってくるのです。


アコヤ貝に価値がある理由の1つ

淡水パールと比べると、アコヤパールの方がぐっとお値段が上がります。

その理由は、パールが育つ元となる“母貝の大きさ”にあるのです。

下の写真は“アコヤ貝”と淡水パールの母貝となる”イケチョウ貝”を並べた写真。

同じ貝でもこんなに大きさが違うんです!

アコヤ貝から育つパールはたったの1粒だけ。

その反対にイケチョウ貝から生まれるパールは、複数のパールが育つので、アコヤパールよりも比較的リーズナブルにみなさまのお手元にお届けすることができるのです。

アコヤパールのお母さんは
貝の内側まで美しい光を放ちます

手のひらサイズの小さなアコヤ貝は、約1~3年の時を海の中で静かに過ごし、美しいパールを生み出す準備をしているのです。


あまり知られていないアコヤの魅力

白くてまんまるい真珠だけが、アコヤパールだと思っている人もいるのではないでしょうか。

一見グレイッシュに見えるけど、よく見るとブルー・ピンク・グリーンなどの色がまじり、まるで虹が映り込んだ海のようなパール。

1つのパールにたくさんの天然色を持ったパールも、正真正銘、誰がなんといってもアコヤ貝から生まれたアコヤパール。

私たちの目を光の加減によって、日々楽しませてくれる不思議な魅力が、アコヤパールにはあるんです。

よく見ると鳥に見えてくる
上品なのにかわいらしいアコヤパール
mmm jewelryではあまり見かけることのない
珍しい色や形のアコヤパールを
お客様に楽しんでいただきたいため
厳選してパールを仕入れています


南洋パール(白蝶パール・黒蝶パール)|海

温暖で美しい南半球の海で育つ、南洋パール。

南洋パールには

白蝶パール(しろちょう)
黒蝶パール(くろちょう)

この2種類のパールがあります。

白蝶(しろちょう)パール

手前の大きいパールが白蝶パール

生産地|海
国|インドネシア・オーストラリア
母貝|白蝶貝
パールの大きさ|8mm~20mm 大粒
色|イエロー・クリーム・ゴールド・ホワイト・シルバー

母貝となる白蝶貝が大きいため、大きめのサイズのパールが育つ白蝶パール。

どれも華やかでゴージャスな色の白蝶パールは、“真珠の女王”と呼ばれています。

貝殻の美しさからジュエリーだけではなく、洋服のボタンや時計の文字盤などにも使われているんです。

黒蝶(くろちょう)パール(タヒチパール・黒真珠)

生産地|海
国|主にタヒチ(石垣島では市の貝に制定)
母貝|黒蝶貝
パールの大きさ|8mm~13mm やや大粒
色|ブラック・グリーン・グレー

タヒチで育つ黒蝶パールは、タヒチ海に生息している生物学的優位性から、世界でもっとも美しい黒蝶パールとされています。

箱根名物の“黒たまご”のような黒蝶パール


サンゴや海の生物が多く暮らす、豊かで美しい海だからこそ育つ南洋パール。

南洋パールはアコヤパールと比べても極めて生産量が少ないため、希少性がとても高いパールなんです。



パールが値上がりしている背景


ここまで読んでもらえただけでも、読む前と比べたら真珠をおおまかに知ってもらえたのではないかなと思います。

noteの本題にも書いている「なぜパールが値上がりしているのか?」をお話をしていきますね!


【淡水パール】の値上がり理由

①生産元の現地に仕入れに行くことができない期間があった

淡水パールの生産地は主に中国。

淡水パールは基本的に日本の真珠の問屋さんが、実際に中国に渡航して仕入れをしています。

しかし、2020年から約2年に渡って、中国への入国が大きく制限された影響で、そもそも仕入れに行くことが難しかった期間がありました。

現地で現物を見ることなく、仕方なくオンライン上でのパールの取引が行われました。

中国から送られてきたパールは、運が悪いとほとんど使えないパールだったりと、ハズレのパールを仕入れてしまうことも。。

ハズレのパールとは?
・変色している部分がある
・テリが弱い
・真珠の層が薄く中の核が見えてしまっている
・穴をあけると強烈な匂いの水が出てくる

とてもジュエリーには仕立てることのできないパールたち。

こういったパールばかりを仕入れてしまうと、1回の仕入れで使えるパールが僅かのため、仕入れにかかる費用がかさんでしまうんです。


②パールの養殖作業が中止に

2020年~2022年の中国のロックダウンによる影響で、現地の中国人でも中国内の移動が閉鎖されてしまい、パールの養殖作業がストップしてしまいました。

「日本人が中国に仕入れに行けなかった」
「中国での養殖作業が止まってしまった」

この2つの背景が理由で、現在市場に流通している淡水パールの数が減って、値上がりに繋がっています。

星型のパールは加工で削っているのではなく
母貝に星型の核を入れて作られます


【アコヤパール】の値上がり理由

①赤ちゃんアコヤ貝に新種の病気が流行っているから

アコヤパールが出来るには、育ててくれる貝=母貝(ぼがい)が必要。

そして、約7cmの母貝にすくすくと育てるためには、まず始めに赤ちゃんとなる貝が必要です。

その赤ちゃんは稚貝(ちがい)と呼ばれます。

約2mmの小さな稚貝を、約2年かけて母貝に育て上げます。

パールが育つ前にも、母貝を育てる工程があるのですが、稚貝が成長せずに死んでしまう病気が流行ってしまったのです。

2019年以降に宇和海などで発生するアコヤガイの大量死について、国と愛媛県の研究機関は1日、原因となる新種のウイルスを特定した。
真珠養殖のアコヤガイ大量死、原因は新種ウイルス : 読売新聞

読売新聞

真珠の養殖業者さんは、りんご農園などと同じく、最終収穫後に収入を得られます。

稚貝が死んでしまうということは、りんごが育つ基盤となる木が枯れてしまうのと同じこと。

稚貝の病気でアコヤパールの生産数が少なくなっていることがまず1つ。


②真珠養殖業者さんの人件費・燃料費の高騰

mmmのアコヤパールが育つ実際の海

海でお仕事をされている、真珠養殖業者さんにかかる費用はおもに

・基本の人件費
・船の維持費
・高騰しているガソリン費
・核入れ(3月~7月頃)
・本養殖(8月~12月頃)
・浜揚げ(12月~1月頃)
 →母貝から真珠を取り出す作業のこと
・パール選別作業

上記が挙げられますが、昨今の人件費や燃料費の高騰で、実は養殖業者さんの廃業が続いています。

しっかりと生計を立てられている養殖業者さんでも、アコヤ貝の病気の影響でパールの浜揚げは例年の半分に減ってしまっています。

養殖業者さんとしての生計を成り立たせるためには、パールの価格を例年よりも上げるしかない状況に。

「アコヤ貝の病気」
「人件費や燃料費の高騰」

この2つがアコヤパールが値上がりしている背景です。



【南洋パール】の値上がり理由

①母貝に核入れができない期間があった

パールを作るのに一番大事なことは、パール養殖業者さんが貝で作られた、小さな丸い「核」を母貝に入れること。

パールはその「核」のまわりに「真珠層」が何重にも巻かれることで、美しく厚みのあるパールが出来上がります。


1893年、今から約100年前に養殖真珠を育てる技術がアコヤ貝で始めて確立されました。

その第一人者はなんと日本人。

母貝に核入れをする技術はとても難しく、一人前の“核入れ施術者”になるには今でも約10年の経験が必要です。

中国で作られていた養殖真珠の核入れも昔は、中国に日本の”核入れ施術者”が呼ばれて施術を施していました。

近年では現地の中国の方も核入れが上手にできるようになったのです。


現在南洋パールの核入れは、南洋の現地の人が核入れ技術を習得できておらず、中国人の“核入れ施術者”が施しています。

しかし、淡水パールとおなじく世界各国の入国規制により、中国から南洋へ渡航することができず、そもそもの核入れができないために、養殖作業がストップしてしまいました。


今までと比較してどのくらい値上がりしているの?

それぞれのパールによって価格が高騰している原因は様々ですが、共通していることは、この1年間ほとんど新しいパールが作られていない状況なんです。

そのため、今街中のお店やオンラインで目にするパールは、2021年~2022年に浜揚げされたもので、2023年の仕入れの値段も2年前と比べて2〜2.5倍の金額になっています。


ジュエリーがお客様の元に届くまで

mmmのパールは九州で家族経営をしている
小さな養殖業者さんから
生産者の顔が見える仕入れを行っています


ロックダウンや渡航が解除され、今年から生産することができても、パールが出来上がるのは約1年~2年後。

それに加えてアジアで真珠の人気が上がったこともあり、需要と供給のバランスが崩れて高騰しています。

生産が安定するのが難しく、今後もパールの価格が高値で取引される見込みとされています。

また、小さな小さな1つのパールがお客様のお手元にジュエリーとして届くまでには

・真珠の「養殖業者さん」
・真珠専門の「問屋さん」
・「mmm jewelry」デザイン&制作&販売

と想像できないくらいの過程を通り、ジュエリーが出来上がっています。

養殖業者のおじいちゃんが選別したパール


さらに約1500個の真珠をお預かりして、mmmデザイナー本人が約6時間かけて選別します。

この日に選んだパールはわずか137個。

選ばなかった1363個の真珠も十分に美しいのですが、mmm jewelryとして、私自身が「ときめき」を感じられる真珠は、ほんの一握り。

この選別作業はなかなか大変ですが、mmmのパールのクオリティを見極め、決めていくのは私だけにしか出来ないお仕事。

お客様に喜んでもらえるように、ブランドとしても品質の高いパールだけをジュエリーにお仕立てしています。

形が似ているパールを2つずつ選び
さらに真珠の個性が活きるように
ペアのピアスやイヤカフにします。


選んだパールをさらにアトリエで穴あけ

穴あけ作業はとても簡単そうに見えますが、少しでもよそ見をすると、かなりの大事故に繋がってしまう慎重な作業。


今回のこのnoteは、華やかなパールジュエリーの裏でいろんなことが起きていることをまとめてみました。

ちょっとびっくりした方も多いかもしれませんが、生産者さんの背景をきちんと知ってもらえることで、今よりももっとジュエリーを楽しんで愛おしく身につけてもらえることもあると思うんです。

金が昔よりも高くなったように、人件費もパールも、今後お安くなることは多分きっとないかもしれない。

だからこそ、パールに限らず、
今手元にある大事なものを大切にして
しっかり愛し続けてほしい
のです。



mmm jewelryは小さなブランドですが、3年前と比べて支持していただけるお客様が少しずつ少しずつ増えてきました。


mmmを愛してくださるお客様と、ジュエリーを身につける楽しさを分かち合うことが、デザイナー茉莉華の幸せです。

なので!

もちろんできるだけ頑張りますが、mmmのアイテムも今後値上げをせざるを得ない場合があります。

(特にパール( ノД`))

私がお金を稼ぎたいとかではないので、きちんとパールの価値を皆様へお伝えしながら、パール養殖業者さんを応援していきたいと思います!


このnote、結構頑張って書いたので、
「へー!知らなかった!」
「こんなことが起きているんだ!」
「このnoteを読んでパールの種類が明確になった!」

などなど、noteの感想をインスタグラムやTwitterでシェア・リツイートしていただけると、とっっっても励みになります!

なにより日本の養殖業者さんへの応援に、少しでもなるのではと思っています。

最後まで読んだよのハート♡も押していただけると、ここまで書いて良かったなと思えます(*'ω'*)

とても長いnoteですが、最後まで読んでいただきありがとうございました!

最後に(まだあるのって?)、長い時間をかけてお手元にたどりついたパールを長く楽しんでもらうために、必読してもらいたいことだけ書いておきます!


パールの輝きを末長く楽しんでいただくためのお手入れ方法

①身につけるときはパールの傷つきを防ぐために、おでかけ準備の「一番最後」に。

②おでかけを楽しんでいただいた後は必ず、からぶきをしてあげて下さい。

③保管は直射日光にあてないように

水や汗、日焼け止めなどが付着したままだと、パールの変色の原因になってしまいます。

乾いた柔らかい布でさっと拭いたり、真夏にネックレスをするときは直接肌に触れないよう服の上に来るように着用がオススメです(^^

ちょっとしたコツを知って身につけていただくことでパールを長く楽しむことができますので、今お手元にあるパールも、これからお迎えいただくパールも、末長く愛して身につけていただけると嬉しいです!


このnoteが、お客様のお役に少しでも立つことができますように。


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