南オーストラリア州トップの進学校で教えられた授業を成立させる方法。
私は現在、南オーストラリア州トップの公立のハイスクールにて、アートを用いて76人の生徒に日本語を教える立場にある。
中高一貫校がオーストラリアでは当たり前で、こちらの学校の生徒数は約1900人、男女共学、インターナショナルスクールなので学校全体で76ヶ国のルーツが入り混じっている。先生の数も100人を超える。
しかし、1番の進学校であっても、日本の進学校の印象とはワケが違う。授業中はうるさいし、スマホは使うし、パソコンでyoutubeやゲームをしている生徒はしょっちゅういる。
そんな感じで、アシスタント期間は終わり、早速授業を担当するのだが、彼らの日本語のレベルは平仮名をまだ書けないといった感じで、ほとんど日本語は通じない。
だいぶ不安を覚えながらも、私のメンターである日本語教師のジョンから、授業を成立させるためのルールを教わった。
まずは授業を始める際の注意点からシェアしたい。
1.休み時間と授業のメリハリをつける挨拶は必ず行う。
2.PCのスクリーンを閉じるよう指示する。
3.スマホはポケットにしまうよう指示する。
4.音楽を聴いている生徒にはイヤホンを外すよう指示する。
5.食べ物を食べている生徒には、食べ物をバッグにしまうよう指示する。
6.これらのことを指示して、生徒全員と目が会うまで待つこと。
こんな感じだ。授業の終わりのチャイムはあるが、開始のチャイムは鳴らない。だから、ちゃんと授業を始めるまでに最低10分は毎回かかる。多分、日本ではまずあり得ない。笑
そして、授業中に先生が注意すべきことについてシェアしたい。
1.考えれば分かるものについては答えを言わない。
2.生徒がうるさくなった時や、別のことをしている時、自分の話を聞いてほしいときは、一度注意をして、ひたすら待つ。
3.音楽を聴くときは先生の許可を取るよう促す。
4.集中力が途切れないように、質問やアクティビティを必ず入れる。
5.作業して欲しくないときは、ペンを机の上に置かせる。pcやイヤホンをやめさせる。
6.教科書を開かせるときは、全員が同じページを開くまで待つ。忘れた生徒には、となりの生徒の教科書を見せてもらうよう指示する。
とにかく、答えを簡単に教えずにその場で考えさせることはとても重要と言われたが、これが実は1番難しいと感じている。親切に答えを教えたくなるが、それは生徒にとってなんのメリットもない。グッと堪えて、とにかく思い出させるヒントを与えたり、質問を繰り返しながら生徒自身で答えにたどり着かせる。基本的に彼らは分からないことがあれば、すぐに自分のPCでGoogle先生に聞く。彼らのPCスキルやググる能力はとても高いが、それでも言語の問題は解決しないことが多いので、そういう問題は容赦なく質問が飛んでくる。
授業内で、音楽やスマホ、PCは使用可なのだが、これがとても厄介で、目を離すとすぐにyoutubeやゲーム、別の課題をしたり、友達とスマホでチャットしたりし始める。
だから、先生が話をするときと作業のメリハリは必ずつけなければならないし、作業中の生徒のコントロールには常に気を配らなければならない。
そして、オーストラリアでは、年齢も経験も関係ない。先生だからといって尊敬はされることもない。数学がものすごく天才的でも、20年、30年の経験があっても、生徒はなんの興味も尊敬も示さない。
その上で大切なことを2つ教わった。1つ目は、
絶えず先生自身の努力を生徒に示すこと。
これがとても大事で、生徒が授業の中で見る先生の姿勢や授業のやり方、内容、ポリシーで、生徒はその授業内の態度を決める。そして、2つ目は、
生徒一人一人との関係を大切にすること。
だから、担当する生徒の名前は全員覚えるのは非常に重要になる。質問する生徒には、きちんと名前で呼んであげることの積み重ねや、授業についていけなくなりそうな生徒のフォロー、先に進みすぎてつまらなくなっている生徒のフォローも怠ってはいけない。
こんな感じで、授業で日本語を教える以前に、授業を授業として成り立たせ、きちんと生徒に学んでもらう環境を整えることが1番大切だということを知った。
これから、40回分の授業が待っているというのに、やりたいこと全部は絶対に出来ないと思う。でも、この学校では、私が教える範囲を決められた期間までに終わらせることは決して求められない。とにかく今の生徒やクラスの状況に合わせた授業づくりが大切になる。オーストラリアの先生の大変さが、どんどん身に染みてきて、スマートに12時に帰ったり15時に帰れるのも、長年の積み重ねなんだと思っている今日この頃。
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