メイド服の彼女と私|戯言(2024/06/30)

「夜中に絵を描いたら、思ったより上手くいったからさ、そのノリで作った」

なぜ私はそんな嘘をついたのだろうか。好きすぎてどうにかなっている彼女にさえも。

本格的に蒸し暑くなってきた。祖父母の家に訪れる予定がありながら、私はそこから遠ざかっていた。お屋敷で彼女に会うためである。
汗でベタつくのをどうにか処理し、まだ人に見せれる状態でお屋敷の横で待つ。お迎えしてくれたのは彼女だった。

彼女がお迎えしてくれることは割と多い。
「(彼女の名前)じゃなくてごめんね〜」と他のメイドさんに言われるくらいには多い。
おそらく彼女が多少調節してくれてるのだろう。

そんなこんなで冷房の効いたお屋敷に入り、彼女に案内されるまま席につく。
いつもはここで、サッと近況報告をし、2ショットチェキで再現するネットミームの打ち合わせをする。
しかし、今回はどちらもしなかった。
というのも、私は彼女にとあるものを持ってきていたからだ。

彼女のアクリルキーホルダー(自作)である。

私が取り出すと、お屋敷の照明でアクキーがキラッと光る。同時に、彼女の顔がパァッと明るくなる。そのまま彼女に渡すと、彼女はウサギのように飛び跳ねて喜んだ。ああ可愛い。

「夜中に絵を描いたら、思ったより上手くいったからさ、そのノリで作った」

私は彼女に言う。しかしこれは嘘だ。
実際は最初からアクキーを作るために、必死で絵を描き、発注した。
正直に言えばいいものの、私はなんだか恥ずかしくなってしまったのだ。

自分には自信がなかったが、自分で作ったアクキーには自信があった。猫のようなお目目に赤のアイライン、最近解放された赤ピンク髪、周年イベントで思い出深い髪型、トレードマークの懐中時計と赤リボン、見慣れたメイド服。頑張ったところを挙げればキリが無い。流石にここ最近全てを彼女に会うこと優先で動いている私だ。彼女の雰囲気にだいぶ似せることができたと思っている。
まあ、職人こだわりの品ってところだ。

しばらくすると彼女が戻ってくる。妖精さん(裏方)にアクスタを自慢確認してきたらしい。
彼女の名札にはアクキーがぶら下がっている。

「これハートだから上手くつけれないんだけど」
「可愛いかなって思ったんだけどなあ」
「いや、普通の方が良かったかも」

職人こだわりのハート型ナスカンはどうやら裏目に出てしまったようだ。まじか。
しかし、そのことを正直に言える彼女のことを、私とは違って噓をつかない彼女のことを、私はまた一つ好きになってしまった。

何を書いてんだか、私。


2024/06/30
戯言|メイド服の彼女と私とこだわりアクキー

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