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クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ

ずっと前に行った展覧会のレビューなんですけど、下書き途中で放置していたので…の第1弾、ちょうど1年前くらいに始まって春までやっていた『クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ』展です。

この展覧会を見に行こう!と思ったの、庭園美術館の企画展がきっかけだったりします。

元々、ディオールに対するイメージって、私の中ではあまり繋がりがなかったので、前述の東京都立庭園美術館での展覧会を見て以来、私はディオールについてあまり良くわかっていないな、とは思ったのです。

なにしろ私自身のディオールのイメージは、大正生まれの祖母の"お下がりトレンチコート"と、(個人的な好みは別として)私の世代に好まれるミス・ディオールの香り、そんなイメージとは異なるジョン・ガリアーノのデザイン(『ファッション通信』影響)とが、自分の中で繋がっていない感じがありまして。

前置きが長くなりました。

この展覧会は、20世紀から現在に至るファッション業界でのクリスチャン・ディオールとそのメゾンの功績を綴る、世界巡回展の東京開催フェーズでした。それだけに内容は濃く、しかも基本的には事前予約制の展覧会で見応え十分でした。

ただ、明らかにインスタ映えは意識、かつそれを目当てに来ている来場者も多いので、それほど来場者が多いわけでもないのに、”映えスポット”に人が固まって、その周辺展示が見えない、というのが残念。

最初からちょっとネガティブモードな感想ですが、「ニュー・ルック」と言われるファッション業界では最も大事な局面の、((Christian Dior) の初期のデザイン画がよく見えなかったんですよね。ゴージャスなイントロのドレス展示の端にあったせいで。

展覧会のイントロって大事じゃありません?

とはいえ、気を取り直して。ディオールを継承する歴代の著名デザイナーによるドレスの展示のほか、そのドレスを纏ったモデルを撮影した日本人写真家、高木由利子の作品、ブランドイメージを示す映像、歴代デザイナーのデザインを再現したトルソー、そのブランド展開されたバッグやアクセサリーといった小物展示など、展覧会中、"Christian Dior"とは何か、という主張を否が応でも受け止めざるを得ない、濃い展覧会であったのは間違いないです。

歴代のクリエイティブ・ディレクターのデザインによるドレスの展示は圧巻で、ただ見ているだけでも美しかった。

イヴ・サン・ローランのデザインに見られる女性の服装に対しての開放感、ジャンフランコ・フェレ(ディオールのディレクターをやっていたの、知りませんでした)のシャープさ、とか色々あるんですけれど、前任者との差別化と「クリスチャン・ディオール」というメゾンの継承を意識せざるを得ないデザイナーの苦労を感じさせます。『ディオールと私』というラフ・シモンズが受け入れられた時のドキュメンタリーを見た後だったので、特にそう感じました。

フェレなんて、彼のデッサンを見たら、それだけでアートになりそうなくらい麗しくて。私、彼が大学で建築の勉強をしていたなんて知りませんでしたよ。

最近あまりファッション・トレンドを追えていないので、今のクリエイティブ・ディレクターであるマリア・グラツィア・キウリ (Maria Grazia Chiuri)のことも全然知らなかったんですが、彼女のデザインは、女性の社会的解放と女性らしさの両立といった、ディオールのマインドを受け継いでいる感じがして、とても私好みでした。

ただ、展示されたドレスの点数に匹敵するほどのトルソーや、ショーのための緻密なアクセサリなどの展示を見て理解したことがあります。

トルソーの展示

それは、現在のクリスチャン・ディオールというファッション・ブランドは、デザイナーが誰であれ、蓄積された技術で高品質なものを作り上げ、世界中に流行を発信するという「メゾン」という職業集団なんだな、ということです。

裏方が主役というプライド、しかと受け止めました。

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