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憧憬の地 ブルターニュ

私のゴールデンウィーク、ようやく始まりました。ということで朝一で国立西洋美術館の『憧憬の地 ブルターニュ』展へ。

前回ここを訪れたときにチラシを見て、ロケーションがテーマの展覧会って珍しいな、と思っていたのです。しかもフランスの中でも、メジャーとは言い難いブルターニュ。気になります。

西洋美術館の所蔵品の核『松方コレクション』をブルターニュという土地で切り取って、他館の同テーマ・同時期のフランス絵画、それにその時期にブルターニュを訪れ作品を残した日本人洋画家の作品を紹介する展覧会でした。

全部で160点もあったようですが、驚きなのは、海外所蔵の作品、たった2点しかないこと。

ほとんど自館と国内の美術館・個人蔵の作品だということです。日本人洋画家の作品はともかく、これだけ近代フランス絵画が日本にあるって…日本人、どれだけ近代フランス絵画を買い込んだんだか。それに、多分いつもやっている同規模の海外コレクションの特別展よりもお安くできたんだろうなーと推察します。

…コスト考えるなんて職業病。連休なのだから、仕事は忘れよう。

展示は四章構成になっていて、最初が19世紀にフランス国内で起きたブルターニュ人気とそれに影響を受けた印象派作品、二章がその少し後、ポール・ゴーガン(Paul Gauguin)らがブルターニュのポン=タヴェンで興した芸術運動に関係する作品、その次がブルターニュに縁の深いアンリ・リヴィエール(Henri RIvière)、モーリス・ドニ(Maurice Denis)、シャルル・コッテ(Charles Cottet)といった画家の作品、そして最後がフランス滞在中にブルターニュを訪れ作品を残した日本人画家の作品の紹介です。

ブルターニュがフランス国内で人気になっていたことを示す当時のガイドブックの展示も興味深かったのですが、一番最初にさらっとターナー(Williman Turner)が出てきたのは面白かったです。いわゆる印象派の先駆的な作品ではなかったけれど、ナントを描いたキャンバスには、頭飾りを付けた女性など、展示で説明されているようにいかにもブルターニュな風景が絵が描かれていて。

この展覧会、大半の作品のモチーフが海・海岸なので、それだけで嬉しかった。自分のお気に入りがことごとく撮影禁止だったので、とりあえず海岸の作品、一つ載せておきます。

クロード・モネ(Claude Monet) 『ポール=ドモワの洞窟 (Cave at Port-Demoi) 』

来場者の好みを想定して、各章にミュシャ、モネ、ゴーガン、黒田清輝とか、ビッグネームを擁しているんですけれど、主催者が注目して見て欲しかったの、所々に散りばめられた版画作品とポン=タヴェン派、三章で紹介している作家なんじゃないかなーと思います。

ナビ派は個人的にはそんな興味が持てない作品が多いんですが、今回紹介されたドニの作品の中には、『ハリエニシダ (Gorse)』のように私が見慣れた彼の作品とは少々違うスタイルの作品もあって新鮮だったし、コッテを筆頭に紹介されたバンド・ノワール(The Bande Noire) の作品は、この展覧会で紹介されている絵画にある全体的にちょっと明るめ・平和に描かれている景色とは対照的な、おそらくは本来の姿であろう北東の海辺の姿を垣間見ることができる作品群でした。今まで国立西洋美術館で見ていたとしても全然記憶に残っていないんですが、コッテの『夕べのミサ(Low Mass)』なんか、しみじみしちゃいますね。

とはいえ、今回個人的にどれが琴線に掛かったかといえば、断然アンリ・リヴィエールです。

リヴィエールは1861年、パリ生まれのフランス人画家・デザイナー。ウィキペディア情報によると、影絵芝居の演出で成功した方のようです。その頃ジャポニズム人気でパリに出回った日本の浮世絵に感銘を受け、独学で木版画を学び始め、その結果生まれたのが『ブルターニュ風景 (Paysages Bretons)』の連作だそうで、このうちの数点は展覧会でも見ることができます。パリ生まれの彼がブルターニュに赴いたのは、友人であるポール・シニャック(Paul Signac)の勧めだとか。

シニャックの作品も松方コレクションにあって、この特別展にも普段はあまり見れない水彩画(『グロワ (Groix)』という作品です)が展示されてました。こういう風に描けたら、スケッチとかするの楽しいだろうなぁ、って思いながら見てましたよ。

話を元に戻すと、紹介された作品の中に、『サンブリアックの三つの標識、夕暮れ(The Beacons at Saint-Briac)』という木版画があって、色調とか大胆に単純化された景色とか、本当に浮世絵版画みたいで、リヴィエールの探究心に感嘆します。木版の柔らかさや、標識を松の木に見立てたら日本でもこんな版画が作られたかも、という感じで日本人としては非常に親近感が湧く作品でした。

前にも書いたと思うんですが、西洋美術館の版画コレクションも本当に良くて。このブログ書くためにウェブサイトを見ていたら、リヴィエールが『富嶽三十六景』にインスパイアされて制作したという『エッフェル塔三十六景 (Les Trente-Six Vues de la Tour Eiffel)』も所蔵してるんですね。今度公開されることがあったら見てみたいです。

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