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Q&A『エフェクトが濁ってしまう』

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エフェクトは本当に難しいですね。
MMDでは殆どの工程を配布物に頼ることができますが、エフェクトの仕様に関しては都度、状況が異なり、調整をする必要があるので、個人的には初心者がぶつかる最初の壁だと思っています。

いまだに私も、思い描いた仕上がりにできなくて、そのままお蔵入りしてしまうことも少なくはないですが、一度リセットしてゼロからなるべくシンプルに組みなおすことで、立て直すこともままあります。

エフェクトを重ねていくうちに迷走してしまうなら、一旦「どうしてもMMD上で行わなければならない処理」を残して、少し数を減らしてみるといいかもしれません。

私はMMD制作における工程を以下の3段階に分けて考えています。
リセットする際はこの工程の中で、一旦必要最低限のエフェクトのみを使用するようにしています。

  1. プリプロダクション:制作を始める前の工程

  2. プロダクション:実際のMMD上で制作の工程

  3. ポストプロダクション:MMDから出力した後の工程

詳しい用語の説明はGoogle先生にお任せしますが、今回はこちらの静画を元に、私の実際の制作工程について、ご紹介したいと思います。



プリプロダクション

プリプロダクションというのは、一言でいえば「撮影前の作業」のことです。
映画でなら、脚本・絵コンテ・キャスティング・スタッフの招集など、カメラが回る前に必要な撮影準備の工程のことを言います。

私のMMD制作におけるプリプロダクションでは

  • どのモデルを採用するか

  • どんな舞台設定にするか

  • シチュエーションはどんな状況か

  • レイアウトはどうするか

などの構想を元に、ラフを描きます。いわゆる、コンセプトデザインというものですね。

この工程によって、ここに光が欲しい、ここには影を落としたい、そのためにはこの位置からこの角度で照明を入れるだとか、焦点はここにあてて、他はぼかして被写体を目立たせたいだとか、こんなに色味にしようだとか、ある程度必要なエフェクトの目安が決まります。

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ラフを描きます、といっておいてなんですが、実際のところは脳内完結なので、下のラフは今回の解説用に描きました。

コンセプトはこちら

  • なにやら人目につかぬ屋上で、荒事があった模様の安室さん

  • ケガをしている

  • そこに打ち上げ花火が上がって、花火の光に照らされながら夜に咲く光を眺める

  • 安室さんが人知れず守った夜があるから、あがる打ち上げ花火

ざっくりした脳内イメージのラフ

これで青ないしは濃紺の夜、花火からの照明が黄色やオレンジなどの暖色、左上部画面外から差し込む光、など完成図の全体的なイメージが決まりました。
それでは、実際のMMDの作業に移りましょう。



プロダクション

プロダクションは実際の撮影の工程です。
MMDでいえば、MMDというソフトを起動してその中で行う作業ですね。エフェクトを重ねる工程もプロダクションのうちということになります。
そして今回のメインの工程でもあります。

さて、始めに言ったことを覚えていますでしょうか?
エフェクトを重ねていくうちに、迷走してしまうのなら一旦、「どうしてもMMD上で行わなければならない処理」だけを残してみましょう。

では、「MMD上で行わなければならない処理」とは何でしょうか。
MMDをスタジオ撮影に置き換えて考えてみましょう。

  1. スタジオまたはロケーション(ステージ)

  2. 小道具(アクセサリ)

  3. 俳優(モデル)

  4. 照明(MMD標準ライトまたはライトエフェクト)

  5. 紙吹雪や雨風などの舞台装置(エフェクト)

  6. 被写界深度などのカメラ設定(MMD標準カメラおよびエフェクト)

このあたりが、実際の撮影時にも物理的に準備されるものかと思います。
作ろうとする作品にもよりけりですが、私はMMDでも概ねこのあたりが必要最小限と考えています。

逆にこの中に含まれていない物が何かというと、カラーグレーディングなど色調補正が含まれていません。
MMDでいえば、ToonMapやScreenTex、Clut系のエフェクトがこれに当たります。
いわゆるポストエフェクト全般ですね。
これらは、MMD上で行うこともできますが、後編集として編集ソフト上でも行うことができる作業です。

エフェクトの重ね掛けで失敗してしまうときは、一旦これらの「後からでもできるものは抜いて」極力シンプルな構成にしてみましょう。
当然、仕上がりが物足りなく感じると思うので、可能ならMMDで足りないものを追加してもいいですし、どうしてもMMD上でうまくいかないときは、編集ソフトでの作業に切り替えることもできます。

サンプル

では実際にこの過程でできたMMDの出力結果と使用したエフェクトを見ていきましょう。

MMD出力結果

陰影としてのエフェクト

  • AdultShader_v014…キャラクターモデルの瞳にのみ適用

  • AutoMetallic_2.2.2…屋上の柵

  • G_Shader_Ver3.01…その他すべてのシェーダー

  • HgSAO_v002

照明としてのエフェクト

  • ikOverray_v003…画面外からの差し込む光

  • PostGammaLight_v01…照り返し

舞台装置としてのエフェクト

  • ikPostFog…空気遠近

  • 簡易破片パーティクル改…塵

  • AutoLuminous4…ビル明かり

カメラ設定としてのエフェクト

  • LiteDOF_v2…被写界深度

基本的にはエフェクトの主要な使い方をそのままにしているんですが、ちょっと特殊かなと思われるのはikPostFogと、わかりにくいのはPostGammaLightあたりでしょうか。

ikPostFogは空気遠近として使用しています。
これに関しては、今日からMMDer!でお話した内容なので、詳しいことはそちらをご覧ください。

PostGammaLightは光の照り返しなどでよく使用します。
リアル系のシェーダーと相性がよく、SAOと合わせてより立体の情報量が多くなるエフェクトです。

PostGammaLightの使用例

さて、この段階ではまだ完成ではありません。
最初の完成作品と比べても、まだ足りない要素がありますね。
そう、花火です。

MMDで打ち上げ花火の演出が、どうにも思った感じに仕上がらなかったので、今回花火に関する部分は、後編集に回しました。
ということで、次の工程に移りましょう。



ポストプロダクション

ポストプロダクションは、撮影終了後に発生する作業全般を指します。
映画でいえば編集やプロモーション活動などが含まれます。
これはMMDでも同じですね。

編集に関して言えば、プロダクション、つまりMMD上での制作過程で抜いた色調補正や残りの視覚エフェクトなどをこの工程で行います。

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こちらが、後編集のPhotoshopのスクショになります。

Photoshopの編集画面

基本的なことはMMD上でしているので、あとは物理的な小道具(ケガや、ダスト)の追加と花火に関する演出なのでグラデーションばっかりですね。
一部、露光量とグラデーションマップで色調補正を多少しています。



私のMMDの制作工程としてはこんなところですね。
気を付けている、という程でもありませんが、MMDで行うものと編集で行うものを仕分けているので、使うエフェクトは平均して10前後、多くても15くらいかと思います。

しいて言えば、迷走したら一度リセットする。
リセットしたら、必要最小限でとどめて、あとは編集でどうにかする。
この2点は、頻繁に行います。

もちろん、MMDの制作工程は十人十色なので、全てMMDで行うのが正しい!とか、編集をできる方がすごい!とか、そんなことは一切ありません。
ようは、どこでどの作業をするのがやりやすいか、なので、すべての工程をMMDで行えるのなら、MMDで行えばいいし、MMDだけだと苦戦するなら、編集をするのも一つの手であるというだけのことです。

ただ、基本的には物事なんでも「足し算引き算」だと思っているので、迷子になったら全部引いて、必要最低限の後に、足りないものを考えて足していく、シンプルに考えてみると少しすっきりするかもしれません。

参考になるかはわかりませんが、せっかくなので過去に作ったメイキングもご紹介しておきますね。
ちなみに、このメイキング集の中には、プロダクションがシンプルもシンプル、完全ノーエフェクトで、全ての編集で行った際の録画も入っていますw
これはこれで楽しかったので、また気が向いたらやりたい遊びの1つです。


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